あきらめの美学
若者が草食系なのはお金がないからだという。確かに右肩下がりで収入が減っている若者たちが多いようだ。不況の影響で仕送りが減らされ、かつては出席に関してゆるかった大学も厳しくなり、時間をやりくりする中でアルバイトをしなければ生活が苦しいのだ。
そんな状況下なのであまりバイトを選んでいられない。牛丼チェーン店が「ブラック」であろうと仕方なく働くしかないのである。このチェーン店を調べていた市民団体によると、7都道府県の83店舗のうち2店舗で深夜の1人勤務である「ワンオペレーション」をしていたという。しかし運営会社は否定している。
こうした過酷な労働を、中京大学の大内裕和教授(教育社会学)は「ブラックバイト」と呼ぶ。「いまの若者たちは、厳しい経済状況の中で育ってきた。ワンオペのような働き方も当然のことのように受け入れてしまう。一種の洗脳だ」と指摘する。
有効求人倍率は上がってきているが、中心はパートなど非正規雇用の求人。正社員の需要は依然、低迷している。大内教授は「すき家の問題は氷山の一角。こんな厳しい労働環境で、若い人たちが結婚して子どもを産もうという考えになるわけがない。抜本的な対策が必要だ」と話す。
こうした意見の中、「戦後の貧困時代を思い出せ」という考え方もあるようだ。しかし時代背景が違うことに加え、全く何も無い状態で作り上げていくのと、いま周りが「ある」状況の中から物事を作り出していくのは違う。全てがそろっている世間の中で、草食系だけが「ない」状況に置かれているのである。
そして草食系は若者だけとは限らない。制約されている中で、手を出せずにいる生活を強いられている人は少なくないだろう。景気が上向きと言われているが、体感的な好景気を感じることができていない声というのは世論調査などからでも明らかだ。
では、人がこの状況を打破するにはどうすればよいのか。何はともあれ、それでも人は動き続けることである。自分が動けば周りの環境が変わる、周りの環境が変われば世の中が変わる、世の中が変われば、その変化は海を越えて世界に広がるに違いないからである。じっとしていて変わる変化は変化ではない。
創意工夫も大切である。今の子供が鉛筆をナイフで削れるかどうかに興味はないが、時にはナイフで鉛筆を削るのもいい。いつもと違った視点を持ったら、その方向に体を動かす。体を動かした方向には、人や場所という新たな出会いがある。
大切なことは、自分にとって大事な過去を捨てずに新しい空間に飛び込んでいくことである。それは、大切な自分を変えずに世の中の変化にのる有効な手段である。
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★ すき家「2店でまだワンオペ」市民団体が調査 会社側は否定(withnews・14/10/15)