共謀罪であるということ

 
 飲食店経営者である中国人女性を殴ったとして暴行罪で起訴された元従業員が、暴行事件をでっち上げられた被害者だったことが分かった。アプリ「LINE」で、この元従業員を逮捕させるために客を巻き込んで事件を作っていたやりとりも明らかになった。法廷に証人出廷した客は、詳しい状況については「記憶がない」などと繰り返していた。元従業員は東京地裁で無罪が確定した。
 
 この”事件”で恐ろしく感じるのは、「被害者」と「目撃者」が共謀することで、架空の事件がでっち上げられて犯人も作られてしまうということだ。弁護士も「証言が主要証拠の場合、検察には慎重な検討が求められる」とコメントしている。
 
 これまでも、直接的な証拠がない事件が法廷で裁かれる事案は多いが、一歩間違えると人の人生を狂わせる結果になる。
 
 多くの人間が共謀して犯罪に手を染めることは珍しいことではない。共謀罪の成立に賛否があるが、この”LINE事件”も共謀していた時点で捜査機関が把握していれば検挙の対象になっていた可能性もある。
 
 一般にテロ事件などが発生すると、事後捜査という形がとられる。爆破事件では周辺の防犯カメラなどで不審者の洗い出しが行われる。それもいいが、テロ事件は防げない状態である。かつてのオウム事件のように、無差別殺戮を計画していた段階で取り締まることが出来れば、5千人超の被害者を生み出した地下鉄サリン事件(1995年)は防げたことだろう。
 
 一方で、「共謀罪」の成立には懸念がある。言論思想表現の自由が制限される可能性があるということだ。「危険思想」と判断された時点で「犯罪組織」と認定され監視対象になることに危惧する声がある。「LINE事件」では犯人がでっち上げられたが、共謀罪が暴走することで、犯人にならなくてもよい人が犯人にさせられる懸念があるのだ。
 
 日本における刑法犯の数は減っている。一番治安の悪かった昭和30年代から40年代に比べると、3分の1に減少しているのである。諸外国と比べても、銃火器の流入は少ないし暴力も少ない。治安のよい国において、共謀罪を成立させる必要があるのか、現行法の予備罪で対処できないのか、慎重な議論が求められる。
 
 
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★ 暴行無罪 目撃証言でっちあげ、LINEで浮上(毎日新聞・2017/3/25)