昭和55年の映画「震える舌」レビュー
破傷風の恐ろしさがよく分かる映画である。昭和55年(1980年)に公開された映画「震える舌」のDVDを見ることができた。この頃の映画はビデオ化されているが、それが再びDVDになるものとならないものもある。
自宅近くで泥遊びをしていた少女・昌子が手にケガをした。小さく指に乗っている血の塊。これだけではただのケガだと思い、三好邦江(十朱幸代)は簡単な消毒で済ます。
そのうち昌子の歩き方がおかしくなり、話し方もおっくうな感じになる。昭(渡瀬恒彦)と一緒に昌子を病院に連れて行くが、特に異状を認められずに帰宅させる。
ところが別室で昌子の奇声が聞こえ両親が駆けつけると、昌子が舌をかみ切りけいれんを起こしていた。救急搬送されて大学病院の治療を受けることになる。
そこで昌子が診断されたのは「破傷風」であった。昭も邦江も破傷風をよく理解しておらず、昌子がこれから大変な治療と向き合わなくてはならないことは知る由もなかった。
破傷風菌に感染すると、光や音に反応して体が弓なりに反ってけいれんする。昌子は「ぎいー!!」と叫んで発作を起こす。口をかみ切ってしまうことから、口の周辺は血まみれだ。看病に当たる両親は見守るしかなく、疲れといらだちがだんだん増してくることになる。
「震える舌」は、原作・三木卓氏の娘が破傷風に罹患したことをモデルに作られている。この映画は何故かホラー映画という位置づけのようである。破傷風の患者が暗い部屋で発作を起こす描写がそう表現されるところだが、破傷風という病態を知るうえで非常に有益な映画である。
弓なり発作などの一連の難しい演技をこなした「昌子」役の女の子は、若命真裕子(わかもりまゆこ)さん。出演作はこの映画と、「典子は、今」という映画の2本のみであるようだ。本作を見た当時、自分自身も子供であったので、破傷風の予防接種の重要さを知ることになった作品である。
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