失踪宣告なければ永遠に年金支給?所在不明者と生存者(2010.8.5)

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 100歳以上の高齢者の所在が確認されない事案が発覚している問題で、死亡届や失踪宣告で本人の”死亡”が確認されなければ、年金などは永遠に支給される。東京・足立区の事件では、遺族年金などを死亡した男性(戸籍上111歳)の家族が受け取っていたことが判明している。
 
 08年10月、行方不明の父親に支給された年金を引き出した長男(当時61)とその妻(同67)が詐欺容疑で埼玉県警に逮捕された。調べによると、父親は75年ごろに家を出たまま行方不明となった。父親の失踪後も当時受給していた老齢年金を長男夫婦が銀行から引き出していた。
 
 県警は当時の社会保険庁(現:日本年金機構)をだまして年金を振り込ませた詐欺容疑での立件を検討していた。しかし年金支給制度に問題はなかったため、銀行員をだまして金をおろした詐欺容疑とした。
 
 受給者が行方不明者だった場合、家族などが家庭裁判所に失踪宣告を請求することで、行方不明から7年の原則で法的に死亡したと見なされる。これにより年金支給が停止する。
 
 足立区のケースなどのように、家族が行方不明であることを隠したりすれば、年金はいつまでも支給されることとなる。埼玉のケースでは「警察からの連絡で、不正に引き出された事件の疑いが強い」として、社保庁は支給を一時差し止めとした。しかしこれは例外的な扱いであるという。(*)
 
 死亡届などが出されていない以上、日本年金機構が人海戦術で確認をするというのは物理的に不可能であり、行方不明者に対する年金や住民登録などに関する行政の考え方を変える時が来ている。
 

失踪宣告をされていたが”生きていた”男

 
 一方、失踪宣告を受けて、法律上”死亡”していた男(63)が窃盗容疑で警視庁立川署に逮捕された。男の家族が鹿児島家裁に失踪宣告を請求しており、95年10月17日に死亡したとされていた。男は「家族には迷惑をかけた」と話している。
 
 同様の事件が昨年も都内で起きている。60代の男が警視庁板橋署に窃盗容疑で逮捕された。逮捕容疑は自転車を盗んだ窃盗の疑い。男は取り調べた警部補に「おまえさん、死んだことになってるぞ」と言われて驚いた。その後、自身のことを語り始めた。
 
 山口県出身の男は、自分より弟が先に結婚したことから「甲斐性なし」と親戚から言われていると思い込んで家を出た。その後は身の上が分からないように、履歴書の要らない仕事で生活をつないだ。
 
 警部補は「きっと心配しているはず。家族に連絡させてもらうぞ」というと、男は静かにうなずいた。弟が大阪に住んでいるとわかり、再会の場所を区内の交番をセッティング。そわそわしていた男も弟が現れた時には泣いて喜んだという。口べたな男は家族に会わせてくれた警部補にお礼を言うことができず、交番の別の署員にお礼を伝えたという。
 
 人の生死が書類という紙だけで決まってしまうのは、ある意味において仕方のないことである。たとえばそれが身寄りのない”無縁仏”となる場合もある。自分の家族の安否を気にせずに生活していたらさみしい。家族の心配を知らずに自分の生き方を優先させるのもさみしい。
 
 人のつながりというものが紙一枚の薄さになっているのが寂しい。生死という最大のプライバシーがおざなりになっている現実である。警察庁によると、毎年「家出人捜索願」が出ているのはおよそ10万人にのぼるという。

 厚労省は12日、各市区町村に対し、所在が確認できない高齢者の情報を各地の年金事務所に提供するよう通達した。年金の不正受給を防ぐための措置で、情報を基に日本年金機構の職員が本人の生存を直接確認できなければ、年金の支給を停止するとしている。(追記=日テレNEWS24・10/8/12)

 
  
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★ 逮捕の男「15年前死亡」? 失踪宣告で、事務所荒らし容疑 警視庁(時事通信・10/8/5) 
(*)=参考・2008/10/18・読売新聞東京朝刊)
 

 
 

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