流行りの番組”ぶらり旅系”のぶれない撮影技術
昨年「なでしこジャパン」が優勝を決める直前のPK戦。円陣を囲んでいた時に気になるところがあった。佐々木監督を中心になでしこメンバーを映していたカメラがまったくぶれずに揺れていないことに気付いた。通常の肩に載せているカメラではあそこまできれいに残すのはプロでも大変だ。しかし小型のクレーンカメラを使うには位置が低すぎる。一体どうやって撮影しているのだろう。
近年の音楽のプロモーション・ビデオクリップを見ていると、アーティストらが一列に並び、カメラに向かって歩いてくるものがある。そこでもカメラはぶれずに被写体を撮影している。調べてみると、「ステディカメラ」という撮影機材を使用している。通常のカメラに重りやサスペンションを付けてぶれにくくしているのである。カメラマンがゆっくり後退しながら撮影してもぶれを防ぐことができる。おそば屋さんが出前をする時にバイクの後ろに載せている器材がサスペンションを利用して商品が揺れないようにしている原理と同じであろう。
NHKの「世界ふれあい街歩き」では狭い街中もこうした手法で撮影されている。場所によってはカメラマンを乗せたリヤカーのような小さな車両で撮影をしており、世界を気軽に散歩しているかのような風情を演出している。
ステディカメラはステディカムとも呼ばれている。後者は73年にギャレット・ブラウンという人によって開発された。もともと”Steadicam”は米国Tiffen社の登録商標であったが、広く認知されたことで一般名詞となった。
”リップタブ”というプロジェクトがある。先に述べたアーティストのPVのように、人がカメラに向かって歩いてくるもので、周りにいる人たちと次々と入れ替わったり、どんどん増えていったりして、既存の音楽に合わせて口パクで歌うなどというものだ。YouTubeに一般人の作品が投稿されているので興味のあるかたはご覧になってはいかがであろう。こうしたビデオも”ステディカム”が使われていることがよく分かる。
最近ではビデオも性能も良くなり価格も安くなったことから扱う人が増えている。特に携帯電話での撮影画像が一昔の物に比べると劣らなくなってきた。”ぶれ”をあえてすることで撮影効果を演出する方法もあるが、そうした演出以外はぶれないほうがよい。
ビデオ作品はあくまでも中味が勝負である。映像加工ソフトはあくまでも”切り貼り”という編集に利用するだけのほうがよい。YouTubeなどを見ていても、楽しい作品というのは登場する人や動物が面白いだけで十分見る価値がある。ソフトで利用するとしたら、せいぜいタイトルや日付の挿入程度がよい。過度な演出効果は見づらいだけである。
過去の記録として映像を残すのは楽しい。そしてもっと楽しいのは、未来の人の記憶として残るような作品が撮れた時であろう。
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※ steady=固定された、安定した、堅実な
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