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自転車には免許よりもまず自賠責保険を 自転車と歩行者の事故急増

 記憶に間違いがなければ、交差点に「自転車通行帯(横断帯)」がついたのは、昭和53年の東京・八王子が最初だった。この自転車通行帯に自転車が走行するのは、歩道を走っている自転車がいることが前提となっている。しかし自転車は基本的に車道走行であり、この通行帯を厳格に通るためには直進している自転車が左折してすぐに右折するという動きを取らなくてはならず、左折しようとする自動車と接触事故の原因となっていた。そのため、この通行帯を撤去することが決まった。
 
 最近摘発が進んでいるのがブレーキをつけない「ピスト」と呼ばれる競技用自転車である。道路交通法違反(制動装置不良)で検挙され、同法違反の場合5万円以下の罰金刑となり、罰金刑は裁判所が科す刑罰であるから「前科」が付くことになる。
 
 警察は近年の自転車と歩行者との事故の急増を受けて、違法走行をする自転車の取り締まりに力を入れている。しかしただちに「前科」となる同法違反を積極的に運用することに検察が躊躇しているのが実情であるという。ただし取り締まり側としては「何度も切符を切られる悪質なケースは略式起訴すべきだ」と指摘する。
 
 昨年に東京都内で起きた歩行者と自転車の事故は1039件で全国の約4割を占める。東日本大震災後から自転車の通勤・通学が増えている事情もあり、「さらに事故が増える可能性がある」と警視庁ではみている。
 
 死亡事故まで起きている以上、この状態を放置していくわけにはいかない。警察庁は先月「自転車は原則、歩道ではなく車道を走る」ということを全国警察に通達を出した。ただ、自転車が直ちに車道で走行できる環境かというとそうでもない。車道を走行するその脇で自動車が猛スピードで走り、速度の遅い自転車を速度の速い自転車が追い抜く。ここで新たな事故は誘発される危険がある。
 
 都内では自転車レーンが13カ所9キロ、カラー舗装歩道が40カ所39キロにとどまっている。都内の道路を自転車が安全に走行できるように区分するのは時間もお金もかかる。1番お金のかからない方法は、自転車を運転する側の意識変化が手っ取り早い。
 
 摘発や免許もさることながら、自賠責の強制加入を導入してはどうであろうか。自動車には自賠責制度があるため事故が発生しても最低限の補償をすることができるが、自転車には民間で用意されている任意の保険しかない。そのため自転車事故の加害者側に賠償能力がない場合、民事訴訟で被害者が勝訴してもその結果何も得られない場合がある。被害者は泣き寝入りだ。
 
 自賠責を導入することで、交通規範の啓発も期待できる。保険加入時に基本である、「歩行者優先」「ベルは危険回避の時のみ鳴らす」「自転車は車道走行する」「止まれや赤信号では一時停止」「音楽プレーヤーを聴きながらの運転禁止」「携帯電話の走行中の操作禁止」「道路では左側通行」「夜間ライトの点灯」など特に重要な項目にチェックを入れて署名も入れてもらう。そして事業仕分けで無駄と言われた「交通教則本」を渡せばよい。
 
 自転車に対して厳格に道路交通法が適用されれば、多くの人が違反行為による行政処分をうけることになる。制度や法律が増えることは世の中が悪くなっている証拠である。願わくは自転車運転者の意識の改革、そして道路にこれから自転車が増えることを車の運転手も認識することである。
 
 
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