紙一重の紙メディア

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 広告収入の減少によりアメリカの出版各社がリストラを強化している。経済誌「フォーブス」では50人の人員削減、1週間の無給休暇などを通告した。新聞社もロサンゼルス・タイムズなどを傘下に持つトリビューン社が破綻、ニューヨーク・タイムズも報酬カットや社屋売却、AP通信は人員の約1割削減に追い込まれた。
 
 不況による広告減収だけが原因ではない。数年前からアメリカのみならず日本でも新聞や出版社が苦戦し続けている。それは情報受信者である購買層がテレビやインターネットに流れてしまったことが大きい。アメリカの一部の新聞は「ネットに殺された」と表現している。
 
 テレビも苦戦している。広告収入減も一因だが、タレントが騒いで楽しんでいるだけのような、在り来たりの番組作りに視聴者がそっぽを向いてしまった。昨年秋の改変期には、視聴率が好調であるNHKの「クローズアップ現代」のようなドキュメンタリー番組の放送に着手した局もある。
 
 しかしながら、テレビ番組には放送倫理違反を勧告されたテレビ朝日の「報道ステーション」や偽証問題で社長が辞任をした日本テレビの「真相報道バンキシャ!」といった具合に、テレビ番組が過去にやらせやねつ造で非難を浴びたのにもかかわらず、自浄作用が機能していないことも視聴者をあきれさせたと言える。
 
 話しを紙メディアに戻すと、不況と活字離れが指摘されているにもかかわらず、部数を伸ばしている雑誌が「Hanako」(マガジンハウス)だ。歴史ある雑誌が休刊や廃刊に追い込まれる中で、確実に部数を伸ばしているという。昨年のリニューアル時期に編集長に就任した北脇朝子氏の手腕が大いに発揮された。写真選びとレイアウトに時間をかけて「よりビジュアルを重視した紙面構成」を構築した。
 
 さらに、1冊の特集に社員編集者1人が1つの特集を全て担当することで、特集テーマの軸がぶれずに紙面に統一感が生まれるのだという。これは読者に媚びてモノを作ろうとするものではなく、「これが今号のHanakoです」と自己主張させることで読者を引き寄せるコツなのだろう。この自己主張に読者が少しずつ共感を覚えたに違いない。
 
 この手の雑誌の広告も凝っていることが多く、一見すると広告なのかコンテンツなのか分からないことがある。そんな異次元の世界に引き込むのがこうした雑誌である。しかし読者を夢中にさせるのはビジュアルを重視することだけではない。
 
 つまるところ、どんな媒体でも大切なものといえば情報である。人は情報を求めてあらゆるメディアに接しようと試みる。取材スタッフが苦労して手に入れた情報であれば報われるだろう。しかしそれは必ずしもスクープや目新しいものだけではない。大衆の目が行きがちである情報と、それとは違う何かを取り入れることで、同じ内容を扱うにしても情報の鮮やかさは違ってくるものである。
 
 インターネットの情報は便利であるが、真贋を見定める力量を養わなければならない。それを補完してくれるのはテレビの情報であり、その責任が半永久的に残るであろう紙メディアである。ページを1枚めくるときに、読者が望む内容がそこに含まれているかどうかで紙媒体の価値が決まる。すなわち紙一重であることをないがしろにしてはいけないのであろう。
 
  
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★ 新聞社の次は出版社=広告急減で業績悪化 米メディア業界(時事通信・09/4/3)
★ 『Hanako』が絶好調 ”雑貨化”する女性向け情報誌とは!?(日経トレンディネット・09/3/30)
★ 新聞の発行部数と世帯数の推移(社団法人日本新聞協会)
★ テレビ朝日に放送倫理違反 放送人権委員会が勧告(産経新聞・09/3/30)
★ 「バンキシャ」偽証容疑者、テレビ朝日でも証言(産経新聞・09/3/24)
★ デジタルメディア観(本ブログ・06/7/10)
★ 新聞を読まない私たち(本ブログ・07/3/14)
★ 活字媒体は生き残るか(本ブログ・08/10/8)
★ ブログを書く人の気持ち(本ブログ・08/4/13)

 
 

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