贅沢な赤字サービスだった? 国鉄のエスカレーター設置工事
昭和50年の朝日新聞の記事で見つけた「赤字国鉄ぜいたくサービス!?」が興味深かった。日本国有鉄道(国鉄、現:JR)中央線の高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪(いずれも東京・杉並区)の3駅にエスカレーター設置工事が始まった。しかし「台所事情の苦しさを訴えるキャンペーン」を展開しているのに「贅沢ではないか」という内容だ。
記事には西荻窪駅を利用する漫画家のサトウサンペイ氏の言葉を引用し、
「あの程度の階段なら歩いてもいいと思うけどねぇ。(中略)国鉄にとってはもっと大事なことがあるんじゃないかな」
としている。
国鉄は設置理由を◇(高架駅である)ホームが他の駅より高い◇高架工事の際地元から要望されていた◇近くに身体障害者施設がある、とした。しかし国鉄内部からも、「冷房車を増やすなど、大衆に喜ばれるサービスを優先すべき」との声が上がる。
国立視力障害センター(当時東京・杉並区梅里、現:国立障害者リハビリテーションセンター/埼玉県所沢市)の担当者は、「あれば便利だが、あの程度の階段なら、盲人なら歩いて上がれる。エスカレーターに行く前に階段があっては、松葉杖や車いすの人は結局利用できない」
と指摘する。
興味深いのは障碍者施設担当者までもが、エスカレータに否定的であるということだ。今であれば「エレベータも整備せよ」という声が上がると思うが、何とも時代を感じるところである。
バリアフリーという考え方が当たり前の今からすれば、何が問題なのか分かりにくいが、そんな議論が起こるほど当時の国鉄の赤字は問題になっていたのだ。
昭和62年4月1日、国鉄は7つのJRに分割民営化された。直前までの赤字は約37兆円。民営化後の平成20年度末時点で国鉄清算事業団の債務残高は19兆円などとなっている。
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★ 国鉄清算事業団の長期債務残高はどのくらい残っていますか(財務省)