言葉のリサイクル

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テイクアウト

sora
 ファーストフードにいったとき、レジ付近にいた店員さんが奥の店員さんに「今のお客さんにポテト入れた?」と聞いた。奥の店員さんは「いや・・・入れて・・ないです・・・」。テイクアウトの時の入れ忘れである。
 
 私も経験がある。入れ忘れに気づくと「追いかけて!」となり、急いで店外に出てお客さんを捜す。こういうときのお客さんというのはとても速く、そして遠くにいらっしゃる。見つけることができたときは幸運だが、発見に至らないとクレームになる。商品本体の入れ忘れが最悪だが、ガムシロップの入れ忘れ、ストローの入れ忘れ、ナプキンの入れ忘れでもクレームになった。
 
 原因は確認を徹底しなかったことという単純なことだ。提供前にポテトを入れたかどうかを確認すれば防げた。
 
 仕事でも勉強でもそうだが、たいていのミスというのは確認を怠ったことによって危険が高まる。「まあいいか」を思った瞬間にその危険度が増す。単純な思考がもたらす作業というのはこつこつ実行することで時間がかかっても成果が出るが、時間に追われたり環境に余裕がない状況であると簡単な工程を省いてしまうことが危険なのである。
 
 他方、いつしか時間に余裕のない現代社会の中に生きていることに気づく。気づける時間があるのはいい方だが、それすらない場合は仕事そのものを動かす人に歪みが生じるのではないかと不安になる。流行語に「ブラック企業」というのがあるが、人は何故ロボットのごとく人を使い、使われるようになってしまったか。それを享受しなければならない環境に慣れてしまったのだろうか。
 
 今年、千葉県内の工場で爆発事故があった。工場の生産過程は「安全第一」が唱われているはずだ。その次に続く「品質第二」「生産第三」の順番が狂うと事故に直結する。我々はこの順番をいつしか勝手に入れ替えてしまっている。是非、「ゼロ災」の精神を忘れないようにしたい。
 
 冒頭の「ポテト入れ忘れ事件」だが、10分くらいしてからお客さんが入れ忘れに気づいて戻ってきた。店員さんが「ああ、お客様、申し訳ございません」と平謝り。ただお客さんは笑顔でいて怒っていなかった。店員さんにしてみれば、お客さんが戻ってこなければ、嫌な気分で年越しになってしまったであろうし、お客さんも自宅で気づいたら不快であったに違いない。
 
 新しい年に嫌なものを持ち越さないように、一つ一つ丁寧に実行したい。来年にテイクアウトしていいものがあるとすれば、失敗に対して揺るがなかった正しい気持ちだけである。
 
 
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