言葉のリサイクル

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朝のバードストライク

 バスを待っていた時に頭上を通過したのは2羽のスズメだった。仲良く並んでいる姿はおそらくつがいだったのかもしれない。そんなことを考えたのはわずか1秒程度のことだった。目の前の道路で低空飛行に入ったスズメたちだったが、1羽が上昇した時に、ワゴン車が通過。もう1羽がバン、という音を立ててぶつかってしまった。そのスズメは上昇したもう1羽と同じ方向に落ちた。しばらくバタバタと動いていたが、ぱたりと動かなくなってしまった。
 
 残されたスズメはどうして相手が着いてこないのだろうか不思議に思ったに違いないが、何が起きたかは知らないほうがきっと良かった。直前の1秒まで、桜が散りかけた朝の新緑を飛び抜けてきたであろうスズメのカップルだったが、命の終焉はあっという間だった。
 
 鳥には飛ぶ自由があるように思いがちであるが、それは間違いである。空を飛びたいと思っている者たちが羨んでそう解釈しているだけである。鳥にしてみれば、羽を動かすことは人間が2足歩行するのと同じというだけである。巣作りしている場所を気をつけなければ天敵に襲われる。水分補給している水たまりは汚染されているかもしれない。大洋から陸上に近づいた時に油断をすれば飛行機に巻き込まれる。自由という考えは、強く自分を律してこそ存在する大気だ。
 
 子供が交通事故に巻き込まれる報道が相次いでいる。半ば確信的に突っ込んでくる車を子供達は回避する術がない。ハンドルを握っているのは免許の取得や運転の自由を認められている大人だ。己の技術を過信すれば運転する自由を剥奪される。朝のスズメのように、自らの命の灯火を消しうる行為なのである。
 
 「寝不足だった」「仕事のことを考えてボーッとしていた」という事故原因は、自由を主張して鳥になっていた羽を自らもぎ取る考え方であり、その羽毛を被害者にかぶせる無責任な行為である。
 
 目の前で消えていった鳥の命を見るのはとても辛かった。お子さんを亡くされた親御さんにしてみれば、それは比にならない絶望であったことだろう。亡くなったかたのご冥福を心よりお祈りし、けがをされた方の回復を切望する。
 
 警察庁によると、平成23年中の交通事故死亡者数は4612人。そして重軽傷者のみを出した事故を考慮すれば少なくとも、自由をはき違えていた運転手の数と近くなる。
 
 
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