小泉容疑者の孤独
一時は「年金テロか」と言われた元厚生事務次官宅襲撃事件。しかし調べを進めるうちに、逮捕された小泉毅容疑者(46)が行政に対して一方的に恨みを抱いた荒唐無稽な考えであったことが明らかになっている。
34年前に飼っていた犬「チロ」が保健所に処分されたことを根に持っていた。「そこまで悲しんでいるようにも見えなかった」と言うのは小泉容疑者の父親だ。
もしかすると突然連れて行かれて処分された「チロ」の最期をふびんに感じたかもしれない。家族から引き離され、独りぼっちのまま処分された一匹の犬の孤独感に強く同情したのかもしれない。
佐賀大学理工学部に現役で合格したが、大学での生活がうまくいかなかったようだ。やがて中退し、職を転々とするが、人との付き合いでうまくいかないことがあった。彼は孤独な人間であったのだ。
人間関係が良好であれば、過去の苦しみや悲しみは軽減されるか消えて無くなるに等しい。それは過去の負の体験を他人に話すことで、悲しみを1人で抱え込む必要が消失するからだ。
「おまえ、それはちがうよ」とか「ああ、それは辛いな」と悲しみを共有し、楽しみや幸福感を作っていくのは友人がいるからできることである。
孤独という時間を背負ったまま生きてきた小泉容疑者にとって、「時が癒してくれる」ということはなかった。普通の人が毎日新しい1日を迎える中で、彼だけは孤独な時を刻み続けていた。彼のそばに誰か1人でもいたとしたら、こうした凶行は起きなかったはずである。
彼は「チロ」の孤独については同情したが、「殺されたこと」までは想像していなかった。もしその悲惨なチロの最期を考えることができたなら、全く無関係な元次官やその妻を殺傷するような行為には及ばなかったはずである。
環境省は全国の犬猫収容施設の拡充に乗り出すことを決めた。「終末処理」されるまでの期間を延長し、新しい飼い主が現れるチャンスを増やすのが目的だ。通常は収容されて3日間程度で処分される。出会いの場を広げることが有効策に成り得るだろう。これで少しでも命が助かればいいと思うが、本来は最初の飼い主が責任を持って動物と接することができれば、それが一番であるのは言うまでもない。
☆ 死は人生における最大の損失ではない。最大の損失は生きている間に心の中で死んでいくものである。(Norman Cousins)
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★ 捨て犬猫の収容所拡充、飼い主と出会いの場に 環境省(朝日新聞・08/11/30)
★ 【衝撃事件の核心】変貌、カネ、奇行・・・元次官襲撃・小泉毅容疑者の解剖(産経新聞・08/11/30)