言葉のリサイクル

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振り込め詐欺の音声公開 青森県警察本部

 
 大学に入ったのが30歳のころだった。在籍していた学部は社会人学生が多く、若い現役生もいたが、比較的年配の学生も少なくない。7年間いた中で、他学部の学生と同じ授業を受ける機会が何度かあった。
 
 普通、自己紹介するときに年齢は言わない。大抵は「○○学部○年生の・・」と所属学部と学年を言えば足りる。「5年生」のとき、この「5年生」を強くアピールすることで、年齢を聞かれることはなかった。ついでに「来年は6年生になる予定です(笑)」と言ってしまえば、大学1年生+4年+アルファくらいの年齢だと推測してくれる。
 これは「すり込み」という技術だ。5年生であると認識してもらい、「来年は6年生」と畳みかけることでそれ以上”疑惑の眼差し”で見られることはなく、1年間”ため口”で話し掛けてもらうことが出来た。見た目が比較的若く見られる部分があったのは幸運だったが、年齢を聞かれる前に学年をアピールすることで誤魔化すことが出来た。
 
 振り込め詐欺の被害が無くならないのも、この「すり込み」の技術が幅をきかせているからだ。普通、自宅の電話が鳴って「あぁ、オレだけど」と言われれば、最初の時点で自分の息子だと思いこんでしまう。それが離れて暮らしているのであればなおさらだ。最初に息子だと刷り込まれれば、その後に「会社の金を使い込んだ」「事故を起こして示談金が必要」という滅多に起こりえない話も信じてしまう流れになる。被害者が「声も口調も息子に似ていた」ということがあるが、電話という100%明瞭な音声とは言い難いやりとりの中で、パニックを共有していれば、心理的に我が子と思いこんでしまう。
 
 振り込め詐欺が許せないのは、過ちを犯した自分の子供ですら助けたいという親心に揺さぶりを掛けていることだ。会社の金を使おうが、痴漢で捕まろうが、金で解決できるなら助けたいと思うのが親というものだ。そこにつけ込む犯罪は許すことが出来ない。
 
 青森県警はホームページ上で、実際に振り込め詐欺に遭遇した男性が録音したテープを公開した。これは未遂に終わっている。最初から男性は「怪しい」と思ったことから録音をしていたようだ。これを聴くと「教師である娘が生徒にケガをさせた」という「県教委」、「校長」、そして「弁護士」が登場する。口調だけで判断すれば、本当にあったできごとだと錯覚してしまいそうだ。さらに社会的地位や身分のある肩書きが名を連ねて登場すれば、”我が子の不祥事”を前提に話されることにより、平身低頭になって信じてしまうことだろう。
 
 犯人側も個人情報は握っていると思う。しかし”我が子”本人ならば、家族でしか知り得ない秘密の質問が効果的だ。現在や過去の恋人の名前、同僚の名前、趣味の話、そして干支は本人でないとすぐに出てこないことが多い。
 
 「オレオレ詐欺」ではなく、青森の例のような場合は、いったん電話を切って、自ら電話番号を調べて県教委の○○さんを呼び出せばいい。校長であれば、学校に電話すれば分かることだ。そもそも公的機関が電話で「現金を振り込んでくれ」という話自体が通常ありえない。おかしいと思ったらすぐに確認を。
 
 
★ 「息子が大変」…行員が1時間説得も振り込め被害(産経新聞・08/10/27)
★ 「こんな電話は要注意」振り込め詐欺の音声公開 青森(朝日新聞・08/10/29)
★ 生活安全部オレオレ詐欺音声公開 青森県警察本部(音声はこちらから聴くことが出来ます) 
 
 

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