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火事が多発 従業員は避難誘導することができるのか

 東京・杉並区高円寺南の居酒屋では12人が死傷した。出火元の厨房内にある焼き鳥の火が、油のしみこんだ壁などに引火、天井を覆っていた装飾用の布などに燃え広がったとみられている。
 
 警視庁捜査一課と杉並署などの調べで、店の非常階段の前には座布団が詰まれていたことが分かり、非常時に機能する状態ではなかった。火事発生当時には、従業員が濡れたおしぼりで消火活動を試みたという証言もあり、高温の油に水が入った場合に起こる「水蒸気爆発」を起こした可能性も指摘されている。この火災ではビルの出入り口に客らが殺到、一部は窓から飛び降りた。非常階段が機能していれば、被害は少なくて済んだのかもしれない。
 
 ところで、こうした客の出入りするビルやテナント側に、非常時に客を誘導するような心構えがあるのかどうか疑問に思うことが多々ある。 
 
 08年10月1日に大阪の個室ビデオ店で起きた放火事件では、細長い形状の店内に出入り口は1カ所しかなく、店の奥にいた客ら15人が死亡している。店員は1人で、避難誘導などの措置はとらなかった。
 
 例えば飲食店に行って奥の部屋に通されたとき、トイレに行くついでに非常口を確認することがある。すると、その通路上にはビールの空き箱などが置いてあり、パニック状態で煙が充満したなかで安全に外に出られるのか疑問だった。
 
 そしてそこで働く従業員はどの程度「避難誘導マニュアル」のようなものを知らされていて、熟知しているのか。高校生が働いているようなファーストフードで、アルバイトの全員は果たして客を誘導し、初期消火活動などを試み、非常扉開閉レバーを引っ張るなどということを知っているのであろうか。
 
 銀行やコンビニでは非常ベルがあることが知られているが、それ以外の場所でビルのオーナーや経営者がどの程度危機管理を意識しているのかが怪しい部分がある。スプリンクラー設置義務の有無や、消火器の置き場所、そして非常口をどの程度頼りにできるのか考えるべきであろう。
 
 これから空気が乾燥する時期でもあり、火の取り扱いは特に留意しなくてはならない。それは従業員もいざというときのことを想像することである。そして客も非常口(非常灯)はどこにあるのかくらいは一瞥(いちべつ)で確認できるので、そうした意識を怠らないことだ。
 
 ある飲食店2階には非常用のスロープ(ロープ状のハシゴ)が窓側にあり、その使い方が記載されていた。その使い方を読んでいたが、どうも今ひとつ分かりづらい。これが非常時にすんなり使えるかといえば無理であろう。
 
 2010年4月1日からどの世帯にでも火災報知器の設置が義務づけられる。頼りになるが、火災を起こさない意識と起きてしまってからの迅速で確実な消火・避難・通報が一番重要である。
 
 
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★ 東京・荒川でビルなど7棟焼く、男性1人の遺体(読売新聞・09/11/23)
★ 【高円寺ビル火災】ダクトの油に引火か 非常階段前に座布団山積み(産経新聞・09/11/23)
★ 【個室ビデオ店火災】46歳男「生きていくのが嫌になり」放火(産経新聞・08/10/1)
★ 火を放った男の子(本ブログ・06/2/2)
 
 

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オリジナルでいられる自分を演出するジーンズ、どこまで下がる?

 激安ジーンズなんていうものが登場することになるとは思わなかったが、値段はともかくジーンズというのは身につけていて心地良いアイテムである。場所がジーパンを選ぶことがあっても、ジーパンは場所を選ばない。休みの日に友達と待ち合わせがあって、うっかり時間に遅れることがあるときでも、ベッドの近くのジーパンを乱暴に手に取り、左右の足を蹴るようにジーパンに通す。そして「速く走れ」と言わんばかりに猛ダッシュしても文句を言わないのがジーパンだ。
 
 そんなジーパンの価格はいったいどこまで下がるのだろう。アイシェアの調査では、ジーンズの価格が下がることについて、「とても賛成」(20.6%)と「どちらかというと賛成」(41.5%)を合わせると62.1%の支持がある。その理由は「安い方が消費者が助かる」「選択肢の幅が広がる」「ブランドジーンズの低価格も期待できる」とあった。今後、どこまで価格が下がるかについては「もう下がらない」(46.8%)、「500円台」(28.5%)、「600円台」(13.4%)となり、大半の人が現状より安くなることがないと見ている。
 
 こうした調査の一方で、年間5万本の「4万円ジーンズ」を売るカリスマ店員が大阪にいる。阪神百貨店3階の「ジーンズハウス」、中村延以子さん(38)だ。「確かに一時期に比べると売り上げは落ちていますが、格安ジーンズに押されて売り上げが減少、という実感はありません。ユニクロは敵ではない。むしろ陳列の仕方など勉強になることも多いのです」と語る。
 
 また、「自分をより魅力的に見せたい女性は、いくつものバリエションのジーンズを上手に組み合わせています。素材やデザイン、加工の多彩さを楽しむには、格安ジーンズでは難しいでしょう」と分析している。
 
 服装、とりわけそのシルエットを気にする女性ならではの考え方かもしれないが、冒頭のようなその日の状況に合わせてカジュアルでありながら、友達や異性と共有する時間をうまく演出する役割がジーンズなのだ。私もそんな高いものではないが、1万2千円で13年前に購入したジーパンを大事に持っている。いざという時にしか出動させないので、ずいぶんときれいな状態だ。
 
 見た目の質感で差をつけるなら、多少価格は高くてもブランドジーンズ。そして時を選ばせない気軽さが激安ジーンズにある。つまるところ、着用する人がどんな場面に自分を投影し、どんなジーパンを選ぶか決めることとなる。つまり、センスが自分とジーンズの色を染めていくことになるのだろう。あなた自身がドレスコードなのだ
 
 
☆ 自己愛が強い人にはライバルがいない(ベンジャミン・フランクリン)
 
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★ 激安ジーンズの価格、どこまで下がると思いますか?(Business Media誠・09/11/9)
★ 「4万円ジーンズ」年5万本販売のなにわ妻(PRESIDENTロイター・09/11/7)
 
 
 

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道路の不正使用 見えない障害物

 
 東京大学と株式会社アイプラスプラス(東京・新宿区)は共同で「オーデコ(Aux Deco)」を開発した。これは視覚障害者の第二の目となり得る機器であり、白杖(はくじょう)との併用で、街を便利に歩くことができる世界初の製品だ。
 
 額につけたカメラは周囲の障害物を映像として捉え、その輪郭データを低周波マッサージ器のような微弱な電流で装着者に伝えることができる。これにより、放置自転車や看板に電柱などを感知するだけでなく、点字ブロックがなくても、路肩や横断歩道の白線でさえ感知することができる。その形状がイメージとして装着者に伝わる仕組みとなっているのだ。
 
 実際に使用した視覚障害者の女性は「これなら歩けますね」と笑顔で話すが、ネックとなっているのがその値段で約120万円。こうした中で一部の自動販売機では、飲料水を1つ購入すると3円が視覚障害者のために寄付され、支援する仕組みを作っている。
 
 オーデコを使ってみた女性は装着実験に先立ち、「町は歩きづらいですよ。電柱、看板、自転車・・怖がっていても歩けませんから」と言っていた。道路には放置自転車や看板が置いてあるが、放置自転車は自治体によって駐車禁止区域が定められている。看板に関しては道路の不正使用として道路交通法の適用対象となる。看板が連なっていると、そこに私有地であるかのような錯覚が生まれ、放置自転車を増やすことになる。
 
 エコ・健康ブームで自転車利用者が増えている。それ自体は大変意義のあることであるが、狭い日本はなかなか自転車をとめる場所がない。これから新たに店舗を作る場合には自転車利用者数も想定した場所の確保も必要であろう。しかし民間だけでは限界がある。
 
 自治体の自転車置き場整備も積極的に進める必要がある。「とめてはダメ」というだけでは、街の経済が停滞する。杉並区立高井戸小学校(高井戸西2)の横の道路は小学校のグランドに面しているが、ここを自転車置き場として利用するために改良された。壁だけであった部分に自転車置き場を作ったのだ。
 
 
 地下を有効利用したのが東京・八王子市だ。JR八王子駅周辺には10カ所以上の駐輪場があるが、感動的なのが南口ロータリーにある「地下タワー式自転車駐車場」だ。
 
 自転車をベルトコンベアのようなところに置き、予め取得しておいたIDカードをかざすことで、あとは自動的に地下に収納される。地下はちょっとした要塞のようになっており、流行りの「工場萌え」的な感動すら覚える。何といっても、出入り口がわずかなスペースで済み、出庫もIDカードをかざしてから出てくるまで40秒程度となっている。
 
 前に書いたことがあるが、やはり大学と企業が開発した空間に文字や画を描ける装置というのがある。これを利用すれば、街から道路不正使用をしている看板に取って代わる存在になり得る。
 
 こうしたハードウエアも大切なのだが、結局は利用する側である人間のソフトウエアに依存する部分が大きい。「みんながやっているから」という考え方は、ソフトウエアとしては大きな欠陥にすぎない。
 
 
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★ 株式会社アイプラスプラス
★ 八王子駅南口地下タワー式自転車駐車場(財団法人八王子市住宅・都市整備公社)
 
★ 空間に絵が描ける(本ブログ・05/4/1)
★ バリアフリー化は不可能か 公共の施設(本ブログ・09/4/9)
★ 崩れる「公」意識(本ブログ・06/10/31)
 
 

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見たいのに消える広告 バナー広告はこうしてほしい

 
 ウエブサイト上をブラウジングしていると、バナー広告が目に入る。本ブログは時事問題を多く扱うこともあり、新聞社サイトをよく閲覧している。そうしたサイトに見られる最近の傾向というのが、記事の文中にバナー広告が入っていることである。大きさにして横350縦250ピクセルほどのものが多く、記事中に割り込ませるのは効果的だ。考えてみると、新聞紙面でも随所に大小の広告が入っており、新聞社のウエブサイトでそれをすることは不思議なことではない。
 
 ただ1つ不満がある。他のウエブページでも同じ事なのだが、別のページに移動しようとするときに、あるバナー広告が目に入る。「あ、見たい」と思うのだが、そう思った瞬間には別のページに移っている。気になる広告を求めて、ブラウザの「戻る」をクリックするが、そのバナー広告は別の内容に変わっている。気になる広告だったので、ブラウザの「再読込(リロード)」を何度か実行することで見たかった広告に巡りあえないかと試すが、なかなか目当ての広告が出ない。結局イライラするので、諦めて他のページに行ってしまう。
 
 そんなイライラを無くして頂くべく、広告屋さんには1つ工夫をしてほしい。現行の自動的に広告が変わる手段に加えて、マウスオーバーしたら広告を選択できるようにしてほしい。そして見たい広告でマウスを止めてそのままクリックすると、その広告主のウエブサイトに飛ぶという仕組みだ。
 
 ちなみに広告ではないが、イメージ的にはこんな感じ。マウスを動かすといろいろな写真の一覧を見ることができるもので、Macのソフト、”iPhoto”のイベント選択画面を利用した。
 
 自分でホームページを作っていることもあり、マウスオーバーも使用するが、なかなか便利で面白いものだ。どうしてこの手の広告がないのかな、と思っていたので、関係者の皆さんぜひご一考下さい。
 
  
☆ 拒絶に慣れていない子供は、欲しいものが手に入らないということより拒絶されたことを一層辛く考えることになる(ルソー)
 
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「すかいらーく」が間もなく消える・・

 ファミリーレストランの先駆け的存在であった「すかいらーく」が10月末で「ガスト」などへの転換を終了させることとなり、「すかいらーく」は四半世紀以上続いた歴史に幕を閉じる。
 
 1970年に「スカイラーク」は創業者である横川4兄弟が、東京都西東京市(当時の保谷町)に食料品を扱うスーパーを設立したのが始まり。場所がひばりが丘団地地区であったことから、英語でひばりを意味する「skylark」を店名に採用、第一号店を国立市に出店した。
 
 バブル崩壊後の低迷期には「ガスト」を出店させ、低価格路線、ドリンクバーなどの導入で客の呼び込みに成功したが、その後もすかいらーくは店舗をガスト等に転換して縮小していった。
 
 ガストは売上高が前年を上回る業績になっており、マイナスで推移している「デニーズ」「ロイヤルホスト」とは差をつけている。デニーズやロイヤルホストも閉店している店舗も多く、「食の多様化でファミレスの時代は終わった」という関係者の声も聞こえる。
 
 私が一番最初に親に連れて行ってもらったファミレスが「すかいらーく」であり、当時ひばりが丘団地の至近距離にある店舗だった。ここは24時間営業のゴルフの打ちっ放しがあり、父がそこでクラブを振るところを見て、そのあとにすかいらーくに行くのがお約束でもあり、楽しみだった。当時はファミレスという言葉も存在せず、単に「レストラン」であった。もっぱらお子様ランチとオレンジジュースが定番メニューであったが、考えてみるとお子様ランチを食べたのはあそこが最初で最後である。
 
 しかしそれも時代の流れ。昨年の食材とガソリン高騰で客足が減ったことも一因であったのだろう。一番の要因は客層の変化かもしれない。ファミリーレストランでありながら、家族で飲食をしている光景がほとんど見られなくなった。人が変われば消費の傾向も変わる。外食産業も客の動線を読む必要に迫られている。そして、新たな思い出作りの場所を提供してほしい。最近は没個性のお店が増えているような気がして少し寂しい。
 
 ドリンクバーのある店舗は確かに嬉しいのだが、少々落ち着かない感もある。そんな中で、落ち着いた雰囲気の中で食べることのできた、思い出の場所が無くなってしまうのは残念である。1つの思い出が、最終回を迎える気がした。
 
 
☆ 発明する方法は一つしかない。それは模倣することだ。正しく考える方法は一つしかない。それは古くからの、試練を経た、何らかの思想を継承することだ(エミール・アラン)
 
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★ 創業業態「すかいらーく」消滅へ 業界の注目が集まる次の嫁ぎ先(ダイヤモンド・オンライン・09/10/19)
 
 

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JR西と事故調の”脱線” 福知山線脱線事故報告書漏えい問題

 2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故で、国交省航空・鉄道事故調査委員会の委員とJR西日本の役員が事故報告書の完成前に会い、内容を把握していた問題は、JR西日本と国交省事故調の委員との馴れ合い体質を露呈することとなった。
  
 漏えいが発覚した報告書には、自動列車停止装置の整備の遅れ、過酷な運転ダイヤ、日勤教育などが記載されており、JR西の体質に始めて言及する内容だった。
 
 事故当時、亡くなった運転手は運転実績も浅く、脱線事故直前にも数回にわたる運転ミスがあったことが分かっている。事故現場へ制限速度を超えるスピードで進入したのも、運転ミスによる遅延を回避するためであった。事故車両の一部であった2両目が、マンション外壁にへばりつく形であったことが衝撃的で今でもその映像が頭から離れない。
 
 事故調との癒着というのであれば、何のための事故調だかその存在意義が怪しくなる。JR西は、あれだけの惨事を引き起こしておきながら、保身のための積極的な連絡であることは明白だ。旅客業務というのは言うまでもなく安全第一である。世界に誇る鉄道を開発したとしても守らなくてはならないことは言うに及ばない。「生産第三」を「安全第一」よりも優先させた結果である。
 
 関係したJR西と事故調の元委員らは、国鉄時代の先輩後輩・上司部下の関係だったという。国鉄時代の負の遺産がこんな形で現れるとは考えなかった。何よりも、本当に犠牲者や遺族に対して真摯な態度であるのかどうかが疑問である。文言を変えた方が良さそうだ。「顧客第一」「体質第二」「利益第三」なら分かりやすいだろう。
 
※国交省航空・鉄道事故調査委員会は現在「運輸安全委員会」と改称しています。
 
☆ 崇高な精神の持ち主は目的を持ち、そうでないものは願望を持つ(Washington Irving)
 
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★ 事故調への接触、JR西の現副社長が指示(読売新聞・09/9/28)
★ 事故調漏えい:JR西前社長、中間報告書素案も入手(毎日新聞・09/9/29)
 
 

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店に「なぜ捕まえた」 万引き少年を擁護する親たち

 万引きで捕まえられた少年を見たことがある。都内の繁華街にあるCDショップ。私服の警備員に引きずられるように出てきたのは、一見すると普通の子供であった。むしろ私服の警備員があまりにカジュアルな格好をしていて、そちらのほうに驚いた。万引きというのは窃盗罪という立派な犯罪であるが、罪の意識の希薄さが実行した少年のみならず、その保護者にも及んでいる。
 
 「通報されて子供がショックを受けている」、「商品を子供が取れるような場所に置いている店のほうが悪い」、「いくらですか?代金を払えばいいんでしょう?」。万引きした子供の親が、こうした理不尽な苦情を言ってくるケースが増えている。
  
 書店などで作る業界団体「日本出版インフラセンター」の試算では、大手書店14社の万引き被害は年間約40億円。総売上の1.4%に相当する。店側も私服の警備員や万引き防止システムなどを導入するが、大きな書店でなければそこまでコストをかけることも出来ない。本の売り上げは定価の2割程度であることが多く、薄利多売であるのが実情だ。ゆえに万引き被害は書店にとって死活問題となっている。
 
 警察庁によると、今年上半期に万引き(窃盗容疑)で摘発された少年は前年同期比8.2%増の13,726人。うち警視庁が1月から7月に都内で検挙した少年は46.4%増の2,565人で、全国でも群を抜くという。同庁が428人の万引き少年に行った意識調査で、「ゲーム感覚」「(捕まったのは)運が悪かった」との回答が4分の1にのぼった。同庁では「少年だけでなく、保護者を含めた全ての世代に『万引きは犯罪』という認識を持ってもらうことで、他の犯罪抑止につなげたい」としている。
 
 万引きのニュースを聞くと必ず思い出す事件がある。03年1月、神奈川県内の書店で起きた悲劇がそれである。店主は万引きをした中学生の少年を発見。反省の態度を示さなかったことから警察を呼んだ。警官が任意同行を求めたところ少年は逃走。近くの遮断機をくぐったところで電車にはねられて死亡した。
 
 そのあと書店には「人殺し」、「なぜ警察を呼んだ」などの非難が殺到し、店主は一時休店を決定した。その後、書店や新聞社などには非情な非難に対する抗議、店主への激励が寄せられた。
 

「正義という仮面を付けた暴力。自分の姿を見せずに正義のふりをして人を傷つける、そんなやり方が通ってはならない」
 
「記事を見て大変ショックを受けた。非難に負けては万引を助長しかねない。辛いとは思うけれど、営業をずっと続けて欲しい」
 
「自分の息子も万引きを働いた。書店からの連絡で身柄を引き取りに行ったときは情けなくて頬をひっぱたいたが、もっと悪いことを犯す前に早く捕まって良かったと思った」
 
「少年の父親が謝罪したことを知って、立派な父親だと思った」
(以上、読売新聞朝刊・03/2/3)

 
 こうした声に支えられ営業を再開した店主だったが、その5ヶ月後、結局閉店することとなった。店主は再び万引きを目撃、注意することが出来ず「もうどうしてよいか分からなくなった」との理由だった。
 
 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 最近コンビニで買い物をした。家に帰ってレシートを眺めてみると、購入したキュウリ1点がそこには印字されていなかった。正直に言えば、申告すべきかちょっと悩んだが結局後日、コンビニにレシートを持参した上で、事情を説明して店長さんにキュウリの代金を支払った。その額、105円。「なんか万引きしたみたいでいやだったので」というと、店長さんは「いえいえとんでもない、こちらのミスですから」と恐縮されていた。
 
 当たり前のことをしたに過ぎないが、少なくとも、105円くらいいいじゃないかと思って放置していたらきっと後味が悪い。たかだか105円だが、農家のかたに生産されて、運搬されて、町のコンビニに並び、従業員の収入になるもの。そんなふうに考えるとなおざりには出来なかった。
 
 万引き少年を擁護する保護者の中にはこういう者もいるそうだ。「なんで捕まえたんですか。万引きに気付いたなら、通報する前に諭すべきでしょう」。本来、その諭す役目をするのが親である。往生際の悪い人間というのはいつの時代もみっともない。保護者というのは、何でもかんでも保護することではない。降りかかった不運から守ってやることのみならず、脇道にそれてしまったらそれを軌道修正するのも保護することである。
 
 「たかが万引きくらいで」— そのセリフ、寝食を惜しんでペンを走らせている作家の方々の前で言えますか。
 
 
☆ 人生は一冊の書物に似ている。馬鹿者たちはそれはパラパラとめくっているが、賢い人間はそれを念入りに読む。なぜなら、彼はただ一度しかそれを読むことが出来ないのを知っているから。(ジョン・パウル)
 
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★ エコバッグ使った万引が増加 対応に苦慮(本ブログ・09/8/8)
★ 万引き親子に裁判官が苦言(本ブログ・06/6/30)
★ 万引につぶされてしまった本屋(本ブログ・05/6/16)
★ 「店が悪い!」万引現場に”モンスターペアレント”(イザ!・09/9/26)
★ チョコ1個万引で実刑 罰金刑から一転、仙台高裁(イザ!・09/9/8)
 
 

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その他

掃除のアルバイトはプライドを捨てる?

 大学在学中に早朝掃除のバイトをしようとしたことがある。規模はそこそこ大きい会社であった。
 
 面接に行くと、年配の男性が履歴書を見ながら言った。
 「うーん、大学に行って、あー、パソコンとかやってるのね。うーん」
 何か不満なのかと思っていると、
 「大学とか行って、パソコンとかやって、でもこういうバイトをするからには、そういうプライドを捨てなきゃいけない」
 
(はっ?!)
 
 「英語とかすきなんでしょう?こういう仕事はね、そういうプライドを捨ててかからないと・・・」
 
 聞いていて我慢できずに遮った。
 
 「いや、それは違いますよ。大学は大学、勉強は勉強、仕事は仕事ですよ。体動かすことがしたかったので」
 
というと、
 
 「ああ、そうかい?」
 
と何となく納得してくれたようだったが、このおじさんはそんなにこの仕事にプライドがないのであろうか。
 
 そもそも、掃除の仕事というのは地味ではあるが、必要な仕事である。
 
 家の周りがきれいなのは、近所のかたが朝掃除してくれるから。会社や大学の建物がきれいなのは、掃除業者の方がきちんと毎日掃除してくれるから。街がきれいなのは、お店や事務所のかたが向こう三軒両隣をきれいに掃いてくれるから。車道がきれいなのは、夜間に清掃作業車が水をまいてきれいにブラシをかけてくれているから。トイレがきれいなのも、毎日掃除してくれる目立たない存在がいるから。
 
 トイレって掃除したことありますか。一日掃除を怠っただけでかなり汚くなる。尿石がこびりつきますから。
 
 男女のトイレ、男のほうが汚い感じもしますが、女性のほうも結構汚い。更衣室も同様。男のほうは何だか知らないけど臭う。女性のほうは臭いはないが、髪の毛や服のほこりが大量に落ちていて、お世辞にもきれいとはいえない。
 
 化粧室という名の場所できれいになった人の後始末をしているのは、目立たない人たちなのだ。
 
 世の中には誰かがやらなきゃいけない仕事というのが必ずある。早朝掃除の仕事は結局時間が折り合わずにだめになったが、あの時あのオジさんに言ってほしかったな。
 
「この仕事は社会貢献のひとつです。ぜひ誇りを持ってやっていただきたい」と。
 
 
☆ 自分を低く評価している人を高く評価する人はいない。(Anthony Trollope)
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