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バリアフリー化は不可能か 公共の施設

 森永乳業が行っている「育児相談窓口」の相談内容から、子ども連れの外出事情が分かった。それによると、子どもを連れて外出するときの主な移動手段で最も多いのが「自家用車」(100人中、73人)、以下、「電車」「バス」となっており、10年前の調査結果と差はなかった。公共交通機関を利用しない理由は、「荷物、ベビーカー、子どもを抱えて、バスや電車に乗れない」「ぐずったりして周囲に迷惑をかけそうなので」とある。
 
 子ども連れでの外出で不便を感じることを「道路」「買い物場所」「交通機関」の3つに分けて聞くと、道路は「歩道が狭い」「段差がある」「ガタガタの路面」、また「階段などがあると、時間がかかっても遠回りする」ともある。自転車との接触事故が多いことから、走行中の自転車に危険を感じたことがある人が半数を超えた。
 
 買い物場所については、「授乳場所がない」「おむつ替えの場所がない」「通路が狭い」「エレベーターがない」となっている。交通機関については、「駅にエレベーターがない」「エレベーターはあるが、ベビーカーを乗せるといっぱいになるので肩身が狭い」とある。バリアフリー法の施行で公共施設は一昔前に比べて格段によくなっているとは思うが、子連れママさんにとっては大変な苦労が伴っているようだ。
 
 先日、近所の楽器屋から出たところ、車椅子の青年が近くのおじさんに声をかけていた。楽器屋に入りたいのだけれども、道路との段差があるために入れないらしい。「板1枚あればいいんですけどね」と青年。おじさんが「ちょっと待ってて」と板を探していた。わずか5センチの段差を我々は気にすることがないが、子連れママさんにしろ、車椅子の人にしてみれば大きな障害となっているのだ。
 
 それのみならず、放置自転車や店の看板がこうした人達の行く手を阻んでいる。歩道等には点字ブロックが配されているが、その上に自転車が放置されていることも珍しくない。放置自転車は各自治体の条例で違反となっているであろうし、看板の類は道路の不正使用で違法であるから逮捕もあり得る。実際に今年1月には名古屋で、22歳の男が警察官の警告を無視して歩道でスケートボードを続けていたとして、道路交通法違反(道路における禁止行為)の現行犯で逮捕されている。
 
 自治体も歩道を整備する際に、歩行者等に心理的に訴えかける作戦に出てはどうだろうか。点字ブロックのみならず、車椅子や松葉杖のイラストを配したマークを歩道に埋め込むなどすることは困難ではないはずだ。人の集まりそうなスーパーやコンビニは、自転車を一時的に停車しておけるスペースを確保すべきであろう。
 
 ところで、都内のJRや私鉄各線の駅は次々とバリアフリー化が進んでいるが、都心にありながらバリアフリー化が全く進んでいない駅がある。JR御茶ノ水駅がそれで、エスカレーターもエレベーターもない。駅周辺には大学病院も多いことから、近隣の病院関係者らはJRと千代田区に改善を申し入れている。患者によっては手前の駅で降りて、タクシーで病院に向かう人もいるという。
 
 しかしながらこの駅、バリアフリー化には困難が伴いそうである。この駅は北側に神田川、南側に高台という間に挟まれた所に位置しており、乗降客が多い割にはホームも狭い。東西に延びるこの駅は、駅舎東口がお茶の水橋に階段がもたれかかるように配置され、西口側も聖橋に階段がもたれかかるようになっており、素人目から見てもこの駅のどこにエスカレーターやエレベーターを配置するのだろうと思ってしまう。とはいえ、バリアフリー法に違反することになってしまい、このまま放置しておく訳にもいかないであろう。
 
 公共の工事は自治体等に任せることとして、歩道上の迷惑行為対策は我々にも何かできそうである。公共のマナーとは自己満足のためだけではない。他人をも巻き込むから”公共”なのである。
 
 
※ 2019.1.19 追記
御茶ノ水駅に初のエスカレーターが整備されました。今後も完全バリアフリーに向けての工事が進むそうです。良かったですね!
 
ようやくバリアフリー化 JR御茶ノ水駅に初のエスカレーター(TOKYO MX・2019/1/19)
 
★ 「公共交通機関は使いにくい」と感じるママが7割、”電子レンジのある授乳室”も登場し、外出先の子育て環境に格差(MarkeZine・09/2/2)
★ JR御茶ノ水駅をバリアフリーにすべきだ(OhmyNews・08/2/29)
★ 「スケボーマン」歩道暴走&悪態ついて逮捕(スポニチ・09/1/25)
 
★ JR御茶ノ水駅を聖橋から臨む(グーグル・ストリートビューより)
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