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店に「なぜ捕まえた」 万引き少年を擁護する親たち

 万引きで捕まえられた少年を見たことがある。都内の繁華街にあるCDショップ。私服の警備員に引きずられるように出てきたのは、一見すると普通の子供であった。むしろ私服の警備員があまりにカジュアルな格好をしていて、そちらのほうに驚いた。万引きというのは窃盗罪という立派な犯罪であるが、罪の意識の希薄さが実行した少年のみならず、その保護者にも及んでいる。
 
 「通報されて子供がショックを受けている」、「商品を子供が取れるような場所に置いている店のほうが悪い」、「いくらですか?代金を払えばいいんでしょう?」。万引きした子供の親が、こうした理不尽な苦情を言ってくるケースが増えている。
  
 書店などで作る業界団体「日本出版インフラセンター」の試算では、大手書店14社の万引き被害は年間約40億円。総売上の1.4%に相当する。店側も私服の警備員や万引き防止システムなどを導入するが、大きな書店でなければそこまでコストをかけることも出来ない。本の売り上げは定価の2割程度であることが多く、薄利多売であるのが実情だ。ゆえに万引き被害は書店にとって死活問題となっている。
 
 警察庁によると、今年上半期に万引き(窃盗容疑)で摘発された少年は前年同期比8.2%増の13,726人。うち警視庁が1月から7月に都内で検挙した少年は46.4%増の2,565人で、全国でも群を抜くという。同庁が428人の万引き少年に行った意識調査で、「ゲーム感覚」「(捕まったのは)運が悪かった」との回答が4分の1にのぼった。同庁では「少年だけでなく、保護者を含めた全ての世代に『万引きは犯罪』という認識を持ってもらうことで、他の犯罪抑止につなげたい」としている。
 
 万引きのニュースを聞くと必ず思い出す事件がある。03年1月、神奈川県内の書店で起きた悲劇がそれである。店主は万引きをした中学生の少年を発見。反省の態度を示さなかったことから警察を呼んだ。警官が任意同行を求めたところ少年は逃走。近くの遮断機をくぐったところで電車にはねられて死亡した。
 
 そのあと書店には「人殺し」、「なぜ警察を呼んだ」などの非難が殺到し、店主は一時休店を決定した。その後、書店や新聞社などには非情な非難に対する抗議、店主への激励が寄せられた。
 

「正義という仮面を付けた暴力。自分の姿を見せずに正義のふりをして人を傷つける、そんなやり方が通ってはならない」
 
「記事を見て大変ショックを受けた。非難に負けては万引を助長しかねない。辛いとは思うけれど、営業をずっと続けて欲しい」
 
「自分の息子も万引きを働いた。書店からの連絡で身柄を引き取りに行ったときは情けなくて頬をひっぱたいたが、もっと悪いことを犯す前に早く捕まって良かったと思った」
 
「少年の父親が謝罪したことを知って、立派な父親だと思った」
(以上、読売新聞朝刊・03/2/3)

 
 こうした声に支えられ営業を再開した店主だったが、その5ヶ月後、結局閉店することとなった。店主は再び万引きを目撃、注意することが出来ず「もうどうしてよいか分からなくなった」との理由だった。
 
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 最近コンビニで買い物をした。家に帰ってレシートを眺めてみると、購入したキュウリ1点がそこには印字されていなかった。正直に言えば、申告すべきかちょっと悩んだが結局後日、コンビニにレシートを持参した上で、事情を説明して店長さんにキュウリの代金を支払った。その額、105円。「なんか万引きしたみたいでいやだったので」というと、店長さんは「いえいえとんでもない、こちらのミスですから」と恐縮されていた。
 
 当たり前のことをしたに過ぎないが、少なくとも、105円くらいいいじゃないかと思って放置していたらきっと後味が悪い。たかだか105円だが、農家のかたに生産されて、運搬されて、町のコンビニに並び、従業員の収入になるもの。そんなふうに考えるとなおざりには出来なかった。
 
 万引き少年を擁護する保護者の中にはこういう者もいるそうだ。「なんで捕まえたんですか。万引きに気付いたなら、通報する前に諭すべきでしょう」。本来、その諭す役目をするのが親である。往生際の悪い人間というのはいつの時代もみっともない。保護者というのは、何でもかんでも保護することではない。降りかかった不運から守ってやることのみならず、脇道にそれてしまったらそれを軌道修正するのも保護することである。
 
 「たかが万引きくらいで」— そのセリフ、寝食を惜しんでペンを走らせている作家の方々の前で言えますか。
 
 
☆ 人生は一冊の書物に似ている。馬鹿者たちはそれはパラパラとめくっているが、賢い人間はそれを念入りに読む。なぜなら、彼はただ一度しかそれを読むことが出来ないのを知っているから。(ジョン・パウル)
 
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