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職場のいじめで不安障害、抑うつ状態を発症 富士通の元女性社員に労災認定 大阪地裁(2010.6.23)

 富士通京都支社に勤務していた女性の元社員が、職場のいじめが原因で精神障害を発症したとして、京都下労働基準監督署に対し、療養補償給付不支給処分を取り消すように求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。中村哲裁判長は「発症は同僚のいじめと、それらに対して会社が防止措置をとらなかったため」とし、病気と業務との因果関係を認め、処分の取り消しを命じた。
 
 同裁判長は「集団で長期間継続した陰湿ないじめで、常軌を逸した悪質なひどい嫌がらせだった」、「上司に相談したあとも支援策が無く、失望感を深めた」と認定した。
 
 判決によると、女性は課長補佐職として勤務していた平成12年6月から約2年半のあいだ、自分より職務等級の低い女性社員たちから高給であることをねたまれるようになった。女性の失敗談をメールやチャットで流され、目配せをして冷笑されるなどの嫌がらせを受けた。女性は平成14年11月に不安障害と抑うつ状態を発症して休職、17年6月に休職期間満了で解雇された。
 
 不安障害は、これといった不安対象がないにもかかわらず、常にオブラートに包まれたような不安感に襲われている状態になる疾患。不眠や発汗、動悸などの症状も伴う。
 
 大人のいじめ、とりわけそれが職場であればより悪質だ。集団でのいじめは罪の意識が分散するため、いじめる側にその意識が薄い。しかしそんなことは大人であれば一定の制御がきくものだが、この会社ではやめさせようとか、やめようとかいう行動に出る社員はいなかったようである。いじめをした女性社員は、同じ職場の仲間の人生に傷をつけておきながら、何食わぬ顔で生活しているのだろうか。幼いまま大人になる者ほど扱いにくいことはない。
 
 そして女性からの訴えがあったにもかかわらず、上司もその存在意義を無くしていた。人間関係が悪化するのは上司が放置しているからに他ならない。こうしたことに対処できないようでは、上司である必要もなく、それこそただの高給取りだ。
 
 不幸にも元社員の女性は病気になってしまったが、体調がよくなったら新たな職場で奮起して欲しいと願う。課長補佐まで上り詰めたのは素晴らしい努力であるし、なによりも、病気になるまで我慢のできる強い人である。
 
  
 
★ 「職場いじめで精神障害」富士通元社員の労災認定(産経新聞・10/6/23)
★ 富士通:元女性社員いじめでうつ認定 大阪地裁(毎日新聞・10/6/23)
 
 

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「携帯プランの解約時の違約金、消費者に不利益で消費者契約法に違反」京都のNPO法人が提訴 京都

 京都なら起こると思っていた。NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」が、NTTドコモとKDDIに対して訴えを起こした。両社が携帯電話の契約時に、契約プラン解約時の違約金を請求するのは消費者に不利益な契約内容であり、消費者契約法に違反するという内容だ。
 
 ドコモの場合、「ひとりでも割50」などのプランに契約すると、2年単位の契約で基本料金が半額になる。契約期間内に解約すると9,975円の違約金が生じる。
 
 百歩譲ってここまでは分かる気がする。2年は使ってくださいね、月々の基本料金を安くするから、というお願いだ。ただ理由が分からないのが、2年を超えたときの自動更新後に解約しても違約金が生じることだ。3年目以降の契約でなぜ違約金が生じるのかが分からない。そもそもなぜ「自動更新」なのだ。契約者に継続するかどうするか選択させず、これではいつまでも違約金がつきまとうことになる。正規に利用していて自動更新された挙げ句に”違約”とはこれいかに。
 
 百歩譲らずに考えるとこうなる。自宅の電気やガスを契約して毎月使っているが、これらを使わなくなったからと契約をやめるときに違約金を取る会社があるだろうか。つまり、今回提訴したNPO法人としては、理由がハッキリしない違約金に対する提訴なのだろう。
 
 契約行為はすべて契約自由の原則に基づいて行われ、公序良俗に反さない限りどんな契約でも交わせる。公序良俗に反する契約とは例えば「100万円払うからAを殺してくれ」などという”契約”であり、公序良俗に反して無効となる。
 
 消費者契約法では、消費者に著しく不利な契約を結ぶことは違法であり無効であるとしている。携帯電話会社の契約が消費者にとって著しく不利な契約か否かが法廷で問われることとなる。
 
 京都では、賃貸マンションの契約更新時にかかる「更新料」が同法違反だとして、賃借人の男性が提訴し、京都地裁、大阪高裁で男性が敗訴する判決が出ている。一方で、別の女性が提訴した公判では、京都地裁、大阪高裁ともに原告女性の勝訴、家主が敗訴する判決が出ており判断が分かれている。
 
 
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★ 携帯電話の違約金が不当としNTTドコモとKDDIを提訴 京都のNPO法人(産経新聞・10/6/16)
★ 携帯電話割引プラン、中途解約違約金で提訴(読売新聞・10/6/16)
★ 料金・割引(NTTドコモ)
★ 個人向け料金・割引(KDDI株式会社)
★ マンション更新料返還求める訴訟で家主の控訴棄却 大阪高裁(産経新聞・10/2/24)
★ 賃貸マンション更新料、消費者契約法に「違反せず」(産経新聞・08/1/30)
 
 

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ケータイをポケットに コタツでうたた寝でやけど、男性が勝訴 仙台高裁

 携帯電話をポケットに入れてコタツに入り、うたた寝をした結果、脚に低温やけどを負ったらメーカーの責任か。——— やけどをした宮城県内の男性(54)が携帯電話製造メーカーに損害賠償を求めた控訴審判決が仙台高裁であり、男性の訴えを退けた一審の仙台地裁判決を取り消し、メーカーに221万円の支払いを命じた。
 
 男性は2003年5月に携帯電話をズボンのポケットに入れてうたた寝。その後、左太ももに低温やけどを負った。判決では携帯電話とやけどの因果関係を認めた上で、「(携帯電話は)ポケットに収納し、こたつで暖をとることは通常予想され、取扱説明書で禁止したり、危険を警告する表示をしていない。製造物が通常有すべき安全性を欠き、製造上の欠陥があると認められる」とした。
 
 訴えられた「パナソニックモバイルコミュニケーションズ」(横浜市)は、「判決内容を精査して今後の対応を考える」としている。
 
 携帯をポケットに入れたままこたつで暖を取ることは「通常予想される」ことなのだろうか。
 
 95年に施行された「製造物責任法」(=Product Liability=PL法)により、説明書の冒頭部分は「警告」「危険」「注意」などの表示部分が増え、それまでよりもずっと分厚くなった。「そんなこと言われなくても分かっている」と言いたくなるような事例が出ていることもある。カップラーメンを買えば「お湯でやけどに注意!」と親が子どもに言うような注意書きある。こんな文言必要なのかとも思うが、実際にこの文言を入れることで、消費者を危険から守るこの法の趣旨には一定の理解ができる。この法の施行前は、消費者が製造物の欠陥の立証をする必要があり、事実上消費者には難しいことであったからだ。
 
 しかし、今回の判決は妥当なのだろうか。判決の対象となった携帯電話は「P503is」で現在は販売されていない。ドコモのホームページで探したが、説明書は見つからなかった。パナソニックの一番古い携帯電話で取扱説明書のダウンロードができる「P505is」があったので、ダウンロードをしてみた。
 
 この中にはこうある。電池パックの「警告」部分(20ページ)で、「直射日光の強いところや炎天下の車などの高温の場所で使用、放置しないでください」。さらに、「ムーバについてのお願い」(24ページ)では、「極端な高温、低温は避けてください。温度は5℃〜35℃、湿度は45%〜85%の範囲でご使用ください」とある。そして「ズボンやスカートの後ろポケットにムーバを入れたまま、椅子などに座らないでください。また、鞄の底など無理な力がかかるような場所に入れないでください。」となっている。ちなみに、コタツで暖を取るときに注意を促す文言は見つからない。
 
 今回勝訴した男性のケータイの説明書に、上記同様の記載があったと仮定したら、男性は適正な温度内での使用をしたであろうか。コタツの中の温度は適正な温度であると確認をして使用したであろうか。ズボンのポケットに入れることで「無理な力がかかるような」ことにはならないと信じたのであろうか。
 
 消費者に立証責任を課すのは酷であるとはいえ、メーカーが注意を促すのであれば、上記の文言だけで十分である。「コタツでの使用を書いていなかったメーカーの責任」だとすれば、電気コタツ、石油ストーブ、電気ヒーター、ガスファンヒーター、電気毛布、車の座席のヒーターなど、あらゆる可能性をメーカーが取説に記載をしなければならないことになる。
 
 ついでにパナソニックの携帯ラジオ「R039」という機種の取説も読んでみた。すると「暖房機の付近など高温になるところ」での使用は「避けてください」とある。
 
 メーカーに肩入れをするつもりはないが、充電池を充電して使用する携帯電話がどんなものであるかというのは、初めて携帯電話を使用する人が読んでも上記文言で十分だと思うのだが。
 
 携帯電話は便利になって、ますます薄くなっていくことだろう。その説明書は安全のために、電話帳並みにますます分厚くなっていくことだろう。
 
 
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★ 携帯ポケットにコタツ→やけど、男性が勝訴(読売新聞・10/4/22)
★ 製造物責任法(総務省法令データ提供システム)
 
 
 

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愛犬チロの飼い主に死刑判決 さいたま地裁

 「まず理由から言い渡しますので、そこに座ってください」。
 08年11月に発生した元厚生事務次官宅連続襲撃事件で、殺人、同未遂、同予備、銃刀法違反の罪に問われた男性被告人(48)の判決公判がさいたま地裁で行われ、伝田喜久裁判長は男性被告に死刑を言い渡した。
 
 裁判では被告の犯行の態様や計画性に加え、結果の重大性を指摘。「生まれ変わったらまた殺す」などと述べていることから「矯正は不可能」であり、死刑を躊躇する特別な理由はないとした。犯行動機である「保健所に殺処分された愛犬チロのあだ討ち」自体が重大事件を引き起こす動機として正当化できるわけがない、とした。
 
 被告は犯行後に霞ヶ関の警視庁に出頭した。弁護側は「自首に当たる」としていたが、これも否定されることとなった。出頭すること自体が犯行の計画に入っており、これを認めることは合理的な司法判断とはいえないとした。
 
 最初の被害者であり、退官後の第二の人生を過ごそうと考えていたY夫妻に降りかかった悲劇。夫が刺されるのを見て、自分にもナイフの刃が向けられた奥さんの恐怖は察するにあまりある。恐怖の中で意識が薄れていく被害者の無念さを考えれば死刑選択は当然だといえる。第二の被害者で重傷を負った、東京・中野区のXさんの妻(73)も後遺症に苦しみ、極刑を望んでいたという。
 
 被告は即日控訴した。
 
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 山口県下関市で、殺処分5時間前に飼い主が現れ、救われた犬がいる。同市内に住む女性が飼っている、雑種で3歳の「アイ」である。
 
 アイは2月下旬に路上でケガをして鳴いているところを、私立早鞆(はやとも)高校1年である冨田由実さん(16)に見つけられた。ひき逃げされたとみられている。動物愛護管理センターに犬を引き渡したが、「飼い主や里親が現れなければ、約2週間後に殺処分される」と聞いた。
 
 冨田さんは「なぜ人間はひき逃げなんてできるん。ひかれた犬をさらに殺すなんてできるん」と思い、友人に話した。冨田さんに共感した級友が犬の飼い主捜しを始めた。犬について知っている人がいたら教えてください、というメールは次々に広がった。チラシも作り、そのチラシを目にした女性がセンターに名乗り出た。それが殺処分される5時間前だった。女性は「アイがいなくなって夜も眠れなかった。本当に感謝しています」と話す。
 
 
 アイをかわいそうと思った冨田さんとその友人、「夜も眠れなかった」という飼い主の女性。人や動物の魂を愛おしいと思うことはこういうことである。アイの発見から2週間で事なきを得た話である。
 
 その一方で、被告は34年もの間、”復讐”だけを考えて生きてきた。”チロ”を失った気持ちは同情するが、第二のチロを出さないような努力はいくらでもできたはずである。冨田さんのような発想をしようとしなかった、ただの怠慢ではないか。
  
 
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★ 【元厚生次官ら連続殺傷 判決(上)】「まず理由から」小刻みに頭を震わせる被告は裁判長の言葉に・・(産経新聞・10/3/30)
 

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「足利事件」再審公判で菅谷さんに無罪判決 裁判所が謝罪 宇都宮地裁

 
 90年に4歳の女の子が殺害された「足利事件」で犯人とされて無期懲役が確定、証拠であったDNA鑑定に疑問があることが分かり、昨年6月に釈放された菅谷利和さん(63)の再審判決公判が26日、宇都宮地裁であった。佐藤正信裁判長は「旧DNA型鑑定に証拠能力はなく、自白も信用性が無く、虚偽であることは明らか。菅谷さんが犯人でないことは誰の目から見ても明らか」として無罪を言い渡した。
 
 判決朗読後に佐藤裁判長は「菅谷さんの真実の声に耳を傾けられず、17年半もの長きにわたり自由を奪うことになったことは誠に申し訳なく思います」と謝罪、3人の裁判官が起立して頭を下げた。これらの裁判官の言動は異例のことだ。菅谷さんは「裁判所が謝ってくれたので、今日の天気のように気持ちが晴れました」と語った。
 
 鹿児島の選挙違反事件、富山の強姦事件に続いて、冤罪の恐ろしさを知ることとなった。冤罪事件に見られるのが自白偏重の取り調べだ。密室での取り調べでやっていないことを「やった」と言ってしまう心理状態は理解できる。これまでにも発生したことを防げなかったことが残念である。
 
 冤罪は司法職員が一番起こしてはならない大失態である。菅谷さんの人生は時間を奪われただけでなく、犯人という濡れ衣まで着せられた。親の死に目にも会うことができなかった。もし菅谷さんが服役中に病死でもしていたら、もはや取り返しのつかない”冤罪による死刑”と同じことになるところだった。
 
 そして殺害された女児の遺族の方が一番聞きたくなかったことであろう。犯人逮捕で心の整理が着いたはずなのに、18年も立ってから「犯人じゃなかった」と言われて心の悲しみをどうすればよいのだろう。
 
 足利市周辺では当時、女児4人が相次いで殺害され、今回の件も含めてすべて犯人が捕まらないまま公訴時効を迎えている。もはや、幼い子を手にかけた犯人にたどり着くことは不可能であり、犯人が野放しの状態になっているのである。
 
 覚えている映像がある。「足利事件」を捜査していた栃木県警足利署の刑事が、遺体発見現場の河川敷で雨の中、手を合わせて犯人逮捕を誓っている画である。あの時に、きちんとした物証や犯人しか知り得ない秘密の暴露を押さえておけば、菅谷さんの自由を奪うことはせずに済んだ。
 
 当時、取り調べを担当した刑事や検察官は菅谷さんに謝罪をしていない。捜査機関の持ってきた証拠や証言に不備があったとして裁判所が謝罪したのだから、警察と検察も同じことをしなければ今後も司法の足並みがそろわずに冤罪を生むだけだ。菅谷さんが収監されていた苦しみに比べれば、頭を下げる行為など大したことはないではないか。冤罪を前にすると、捜査機関というのは全くの無力である。
 
 
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★ 足利事件:菅谷さん無罪 裁判長が謝罪 宇都宮地裁(毎日新聞・10/3/26)
★ 30年前の女児殺害、異例のDNA再鑑定へ 栃木県警(本ブログ・09/9/22) 
 
 

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二審も懲役30年、小学生に強姦など95件のM被告(2010.3.19)

 広島県内の公立小学校校舎内などで、01年から06年にかけて、教え子の小学生女児に性的暴行や同未遂、強制わいせつなど95件を繰り返していた元教諭、M被告(44)の控訴審判決が広島高裁であった。高裁は18日、一審の広島地裁判決の一部の事実誤認があったとして破棄、改めて一審と同じ懲役30年を言い渡した。元教え子3人や保護者は、被告や県などに約1億1550万円の慰謝料支払いを求めて広島地裁に提訴している。
 
 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 福岡県内の強姦事件認知件数が4年連続全国ワースト1であったが、昨年はそれを返上し、東京がワースト1となった。福岡県警によると、強姦事件の認知件数は05年(143件)、06年(142件)、07年(140件)、08年(122件)であった。これを人口10万人当たりで換算すると、東京や大阪を上回っており、4年連続の汚名をきせられていた。
 
 そのために県警は、強姦、殺人、放火などを担当する捜査1課内に性犯罪特別捜査係を新設し、特別捜査員を集中的に捜査に当たらせた。福岡市や春日市などで連続発生した強盗・強姦事件では合同捜査本部を県警南署に設置し、元内装工の男性被告(25)=1審無期懲役、控訴中=が35件の犯行を繰り返していたことを突き止めた。
 
 さらに09年4月、県警生活安全総務課内に「子供・女性安全対策隊」を設置し、「声かけ」「つきまとい」行為へ警告するなどして84人を検挙している。
 
 強姦罪は親告罪だ。つまり、被害者の訴えがないと公訴ができない。強姦事件が多い一因としてこの親告罪であるがために、被害者が捜査機関への告訴を躊躇している部分もあるだろう。公判でその苦痛を思い出して訴えなくてはならないことは被害者にとってさらなる負担になる。
 
 強姦罪に限らず、親告罪は加害側の罪の意識が少ないところにある。タレントのスマイリーキクチさんのブログで、スマイリーさんに対する誹謗中傷が成された名誉毀損事件は記憶に新しい。ネット上だから、みんなが書いているからと、書き込みをした18人は同罪で検挙された。今後も親告が進む事案であろう。
 
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 M被告の起こした事件で、強姦罪は懲役3年以上の有期刑で、他の罪との併合罪で最高30年という異例の長さとなった。しかし性欲のはけ口を幼い子になした罪は重く、大きい。この事件の態様が、教師が教え子に対するということ、それが校舎内でも行われたということ、さらに長期にわたって多数の被害者を出していること、そうした悪質さを考えると、「元教諭」という肩書きが聞いて呆れる。
 
 公判廷で裁かれるということは、先進国においては最低限の権利が保障されることを意味している。こうした事件を起こす者は、それだけでもありがたいとひざまずかなくてはならない。
 
  
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★ 教え子10人被害、強姦の元教諭に二審も懲役30年(産経新聞・10/3/18)
★ 強姦ワースト1、4年連続の福岡から東京に(読売新聞・10/3/11)
★ 教え子暴行46件、元小学校教諭・M被告に懲役30年の最高刑 広島地裁(本ブログ・09/9/14)
 
 

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今年”時効”の「井の頭公園バラバラ事件」は死体遺棄事件?

 
 最近、アクセスしていただいている方にブログ内のトップエントリから考えさせられることもある。ここ数日間にアクセスの多いのが今年の春に書いた「時効成立 井の頭公園バラバラ殺人」であるが、なぜアクセスが多いのだろう。テレビで何かやっていたか、と思って気付いたことがある。遺体がバラバラだったから自動的に「殺人・死体遺棄事件」と思っていたが、この事件は単に「死体遺棄事件」ではないのかということだ。つまり、例えば病死した遺体を切断して遺棄した可能性もある。
 
 事の真相を探るべく、当時の読売新聞記事を検索してみた。4月のエントリで書いた、続報が無かったことを裏付けるかのように、キーワード「井の頭公園 バラバラ」での検索結果はたったの16件である。
 
 第一報は94年4月23日の東京夕刊「井の頭公園に左足 ポリ袋入り、ごみ収集場に 東京・三鷹」である。この中では「警視庁捜査一課と三鷹署で調べたところ、左足の足首と分かり、死体遺棄事件として捜査を始めるとともに・・・」とあった。
 
 しかし翌24日の東京朝刊には「警視庁は、園内のゴミ箱など計14カ所から同一人物のものとみられる両手首、ひじ、ろっ骨などの入ったポリ袋を発見した。このため殺人、死体遺棄事件として三鷹署に特捜本部を設置・・遺体は死後2日前後・・」とある。25日にはさらに遺体が見つかり、26日に身元が判明する。
 
 5月3日の見出しが「東京・井の頭公園バラバラ遺体 殺害現場は?」などとなっており、記事ではこの時点で捜査が長期化する可能性を指摘している。その後の見出しは「井の頭公園バラバラ事件」となっており、殺されたことを断定できるような記述はない。
 
 同年11月23日東京朝刊では、被害者が「何らかの理由で(自宅のある)吉祥寺駅一つ手前の西荻窪駅で下車した後に事件に巻き込まれたとみて・・・」とある。
 
 翌95年1月12日夕刊では「東京・井の頭公園バラバラ殺人・・」との見出しとなってはいるが、やはり死因を特定するような記述はない。この日の記事は、吉祥寺駅近くで被害者に似た男性が男2人に殴られているという目撃情報が掲載されている。
 
 そして3月9日には「バラバラ事件」となり、被害者の父(当時67)が、被害者の父親の心情を綴った鎮魂の書「心事の奇跡」(創英社)を出版した記事となっている。これが最後の記事となり、同月20日には「地下鉄サリン事件」が発生、三鷹署特捜本部は解散してしまう。
 
 最新の記事が今年の4月23日「井の頭公園切断遺体事件が時効・・」である。この記事の中では、「・・・23日午前0時、公訴時効が成立した。警視庁は殺人、死体遺棄事件として、延べ37000人の捜査員を投入したが捜査は難航・・・(中略)15年間の情報提供は約250件だった」などとなっている。
 
 これだけの猟奇的事件であるから殺人事件に間違いない気もするが、殺されたという根拠が見当たらない。死体遺棄事件であれば時効は3年であるが、いずれにせよすでに時効は完成してしまった。もし犯人が分かるようなことがあれば、民事訴訟で不法行為に基づく損害賠償請求が唯一の罰を与える機会となるが、それも捜査が終結している以上、難しいことである。この時効は不法行為を知ったときから20年であり、あと4年4カ月ほどである。
 
 被害者である川村さんの頭部などは発見されていない。遺体が完全な状態で発見されていないことが、逆に殺人の疑いを濃厚にさせたような気もする。本を出版した父親はすでに他界したとのことだ。知人女性の言葉が最後に載っていた「川村さん一家にとって時効はないはず」という記述が無念さを表している。
 
 
☆ 時間は存在しない。存在するのは、瞬間だけである 。(トルストイ)
 
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★ 時効成立 井の頭公園バラバラ殺人(本ブログ・09/4/24)
  
 

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2009年のニュースを振り返る・4【時効の是非】

 今年は時効の議論が活発になった年でもある。時効の成立によって真相究明に終止符が打たれる。しかしながら凶悪事件の被害者やその家族の無念さははかり知ることはなく、残りの人生を悲しみに費やすことになる。
 
 法務省は21日、凶悪事件の公訴時効を見直す具体的方策を提示した。法制審議会に提示されたのは、(1)時効の廃止(2)時効期間50年など大幅延長(3)容疑者を特定できなくてもDNA型情報を被告として起訴する制度(4)一定の証拠に基づいて検察官の請求で裁判官が停止(中断)する制度の4つ。
 
 また、廃止と延長の組み合わせも提示された。法定刑の上限が死刑に当たる殺人罪などは、現行の時効25年から「廃止」にする。上限が無期懲役の強制わいせつ致死罪などは、現行の15年から30年に延長。上限が懲役20年の傷害致死や危険運転致死罪は、現行の10年から20年に延長、などである。法務省は意見を一般から募ることにしている。今夏に一般から募った意見では7割が時効の廃止・延長を支持している。
 
 (1)の時効の廃止だが、前にも書いたように、容疑者が特定できている事件に関しては時効を無くしたほうがよい。被疑者が分かっているのに捕捉できないがために犯人を野放しにすることは社会にとって脅威である。しかし完全に廃止してしまうと、例えば明治時代の殺人事件の犯人を平成のいま特定したところで、社会正義が成り立つのかどうか疑問が残る。証拠品の保管場所確保についても現実的ではない。
 
 そういう意味では、(2)の時効期間50年など大幅延長は現実的だ。1警察官が退職するまで約40年ほどであることを考えれば、歴史の生き証人である我々の記憶があるうちに容疑者を逮捕できる可能性がある。科学捜査も進歩することであろうし現実的である。実際、今年冤罪であることが分かった「足利事件」の管家利和さんの場合、逮捕当時のDNA鑑定の精度の低さが冤罪を作り出した問題の一つであった。その後の鑑定技術の向上で管家さんは晴れて無罪と確定するのである。
 
 (3)は考えたこともなかったが、容疑者本人ではなく、そのDNAを起訴して事件に一定の完結性を持たせるということか。勿論、容疑者が確保され次第、”DNA”と同様の裁きを受け継ぐことになるのかもしれない。
 
 (4)も現実的である。証拠がそろっていて、十中八九”クロ”である容疑者がいた場合、時効の中断により、容疑者を精神的に追い込むことができるであろう。無尽蔵に時効を廃止よりも法運用の流れに整合性がある。
 
 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 時効について考えれば、法制審議会の今後の判断に注目できるが、それと同時に考えなくてはならないことがある。それは事件が起こらないような社会環境の整備だ。先日、茨城連続殺傷事件の金川真大被告人(26)に死刑判決が出た。事件の態様を考えれば予想された判決である。自分勝手な妄想にとりつかれた犯罪者の言い分は身勝手で、何の関係もない人を傷つけた罪は極めて重い。
 
 大切なのは教育である。親が、学校が、社会が人を育てていくことを放棄したとき、その隙間に犯罪は生まれる。挑戦的な態度を法廷でとり続けた金川被告も、幼なじみの男性が面会に来たときには動揺を見せた。
 
 男性が「優しそうな昔のイメージのままだ。絶対やるはずがないと思っていた」「どうしてそんなふうになっちゃったの?」と尋ねられると、金川被告は「大して変わってないよ。単につまんないから、人生やめるかって」と答えた。平静を装っていたが、目は潤んでおり、のど仏を上下に動かして嗚咽を我慢している様子であったという。金川被告の周りにこの男性のような人が声をかけてあげられたら、防げた事件かもしれない。
 
 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 公訴時効の廃止・延長が現実的になったとしたら、忘れてはならないことがある。事件を捜査機関に任せるだけではなく、我々もその事件を忘れてはならないということだ。諸外国に比べると日本はまだ治安がよいほうである。それは日本人の国民性が大きく影響していることを忘れてはならない。
 
 
☆ 時が癒やす?時が病気だったらどうするの?(『ベルリン・天使の詩』)
 
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★ 公訴時効:廃止など4案を提示 法務省が法制審部会に(毎日新聞・09/12/21)
★ 幼なじみの言葉に目潤ませた金川被告 接見時(読売新聞・09/12/18)
 
★ 時効の殺人 民事賠償確定へ 最高裁(本ブログ・09/4/18)
★ 時効成立 井の頭公園バラバラ殺人(本ブログ・09/4/24)
★ 愛知一家殺傷 犯人の異常な行動(本ブログ・09/5/11)
★ 時効まで2ヶ月半、傷害致死容疑で元同僚逮捕 検視に問題なかったか 京都府警(本ブログ・09/7/19)
★ 東京・八王子スーパー強盗殺人事件 時効まで1年(本ブログ・09/7/25)
★ 警視庁に”特命”新設 時効間近の重大事件を扱う(本ブログ・09/11/2)
  
 
 

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