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多い死体遺棄事件

 ここのところ死体遺棄事件が多いような気がする。親が死んだが葬儀代がなくて放置したという事件や、山口県下関市では民家の床下から3人の女性の遺体が見つかった。以前には神奈川県平塚市で乳児ばかり3遺体が見つかり、母親が死体遺棄容疑で逮捕された。
 
 死体遺棄罪は何らかの事情で人が死んだ場合、当局に届けずに遺体を動かして隠したり捨てたりする行為である。こうした行為をすることによって、その後の警察の捜査に支障を来す場合がある。そして本来火葬されるべき遺体を放置することは、個人の尊厳をも踏みにじる行為となる。
 
 死体遺棄現場を発見した捜査当局が、殺人事件が起きたと推定することもある。死体遺棄容疑で容疑者を逮捕してから、殺人容疑で取調べが行われることが多くなった。
 
 昨年4月に発生した「江東区女性会社員バラバラ殺人事件」では、犯人の男は被害者の遺体を損壊し、トイレやゴミ集積所に捨てるなどした。遺族にとってみれば、自分の子どもの遺体をまともに確認できない状態にされ、この上ない怒りと悲しみがあったに違いない。
 
 しかし死体遺棄罪は最高で3年、死体損壊罪は5年である。残虐な行為の割には法定刑としてはさほど厳しくないのが現状である。従ってこの事件では最高刑に死刑のある殺人罪について検察側が厳しく死刑を求めたが、判決では被告が反省している、計画的な殺人ではなく発作的であった、という部分が斟酌されて無期懲役判決となった。
 
 人間の遺体が遺棄されるわけではなく、名誉や尊厳が軽々しく捨てられている現状がある。本来、畏怖の念を持って接するべき人間の魂を見ようとしない、そんな風潮がまかり通ることは実に恐ろしいことである。1人の人間ではなく、集団として扱われれば多くの人が犠牲になる戦争や紛争になり、たった1つの魂などの存在はもはや無視されてしまう現実である。
  
    
☆ 大切なのはどれだけ相手を愛するかではなく、相手にとって自分は何かを知ることだ 。(ローレンス・カスダン )
 
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★ 鳥取男女不明:税理士の部下逮捕 死体遺棄容疑で(毎日新聞・09/6/3)
 
 

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タイタニック号 最後の生存者イギリスで死去 97歳

 1912年4月にイギリスからアメリカに向かう途中、氷山に衝突し沈没した豪華客船「タイタニック号」の最後の生存者、ミルビナ・ディーンさんがイギリスの高齢者介護施設で亡くなった。97歳。当時、ディーンさんは生後9週間であったため、自分がタイタニックの乗客であったことは後に知らされた。事故に遭ったとき、母と兄と一緒に救命ボートに乗ったが、父は大西洋に沈んだ。
 
 今であれば迅速な救助も期待できるだろうが、当時はそうではなかった。タイタニックは初めて、マルコーニ社製の電信機を使ってSOS信号を発信した。電信士はタイタニックが沈むまでの2時間、SOS信号を発信し続けた。
 
 SOSは”Save Our Ship”などの意味であるといわれるが、実際にはそれは意味の後付けで、モールス信号である「SOS」は、【・・・ーーー・・・】と打電が単純で、素人でも分かりやすいことから採用された。
 
 唯一の日本人乗客である細野正文氏が乗船していた。音楽家である細野晴臣氏の祖父である。この時、救命ボートを横取りしたのが細野氏であるという誤った噂話が広がり、官僚であった細野氏は免職となった。「日本人は卑怯者」ということになってしまった。細野氏はそうした噂に対して何も話さないまま1939年に亡くなった。その後の調査で、97年にそうした話が間違いであるということが分かり、細野氏の名誉は回復された。
 
 歴史上最悪の海難事故は、最後の乗客の死去で歴史を閉じそうである。しかし歴史というのは常に量産されている。1秒1秒過ぎていく現在がすぐに過去になり歴史として刻まれる。その1秒を安全に迎えて過去にできるように、こうした事故を教訓としなくてはならない。歴史というのは、当時の遺品などもさることながら、我々の記憶の中にしか存在しない、後世に伝えるべき貴重な記録が我々の中にあるのである。
 
     
☆ 何かいい物語があって、それを語る相手がいる。それだけで人生は捨てたもんじゃない。(映画・『海の上のピアニスト』)
 
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★ 「タイタニック号」最後の生存者が死去 当時生後9週間(読売新聞・09/6/1)
★ 第1回万国無線電信会議(モールス信号が聞けます)
★ タイタニック(=米国人最後の乗客の死去・本ブログ・06/5/8)
 
 

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刑務所で育てられる盲導犬

 自宅最寄り駅近くの繁華街に行列の出来る精肉店がある。客の目当てはコロッケで、連日夕方ともなれば長蛇の列になっている。某日そこを通る時、前に盲導犬のゴールデンレトリバーを連れているサングラスをかけた男性がいた。レトリバーは精肉店の方に顔をやると止まってしまった。事態を察知した男性は、「こら!」と言って叱るとレトリバーはまた前進を始めた。雑踏の中を人の”目”となって歩くのは大変だろうと思う。
 
 盲導犬を育成するには犬の適性を考慮し、訓練にも時間がかかる。需要と供給のバランスは等しくないのが現状だ。そんな中、刑務所で盲導犬を育成するプログラムが始まっている。そこは日本で初めての半官半民の刑務所である「島根あさひ社会復帰促進センター」だ。ここは比較的刑期の短い受刑者が入所し、犯罪を繰り返す者(累犯者)や暴力団関係者はいない。
 
 生後2ヶ月の盲導犬候補であるレトリバー3頭を、受刑者が独房で寝食を共にしながら育てる。夕食後の自由時間を使い、毛繕いや耳の掃除をしたり、ボールを使って子犬とふれあう。子犬は週末になると、パピーウォーカーと呼ばれるボランティア家庭に預けられる。独房の様子を報道陣に公開された受刑者は「週末はゆっくり眠れるという安心が2割、寂しさが8割です」という。
 
 以前、これと似たようなプログラムがヨーロッパの刑務所で導入された。育てるのは犬ではなく、「たまごっち」である。たまごっちはペットを育てるゲームであり、日本では90年代と2000年代にブームとなった。フンをしたら片付けなくてはいけないし、定期的にえさをやらないと”ペット”は死んでしまう。そのとき取材に応じていた受刑者の1人は「これが僕を必要としているんだ」と話し、何かに必要とされる存在を実感していた。
 
 島根の同センターでは、受刑者に対して子犬がしっぽを振って遊んで欲しい、トイレに連れて欲しいと訴えてくる。言葉が通じないので、思いやりがなければ子犬を困らせることになる。常に想像力を働かせなくてはならない。愛情の根本は想像力だ。
 
 犯罪には1つの共通点があると思う。それは「奪ってしまう」ということだ。窃盗、強盗、横領、詐欺など財産を奪う罪はもちろん、暴行や傷害は他人の平穏な日々を奪い、レイプや死体遺棄・損壊は人間の尊厳を奪い、そして殺人は人生を奪う。
 
 世の中はギヴ&テイクで成り立っている。このバランスを欠いてしまうと人として生きてゆくのに狂いが生じることになる。今まで何かしらを奪ってしまった受刑者にとって、次は必ず与える番なのである。それを無口な子犬が教えてくれるに違いない。
 
  
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★ 受刑者育てる盲導犬、独房での触れ合い公開 島根(朝日新聞・09/4/29)
★ 財団法人日本盲導犬協会
★ タレント犬、警察犬 人に仕える犬たち(言葉のリサイクル・09/4/16) 
 
 

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認知症妻介護役を好演 長門裕之 「ショカツの女・3」

 初めて好きになった芸能人は、女優の片平なぎささんだ。幼いころドラマで見て、こんな美人が世の中にいるものなのかと思った。それから数年経つと「スチュワーデス物語」で”再会”するが、とんでもない悪女を演じていて驚いた。その後は2時間ドラマに出演するようになる。そんな片平さん主演のドラマ「ショカツの女・3」を見た。
 
 片平さんも見たかったが、認知症の妻を介護する役で長門裕之さんが出演するということも見た理由の1つ。実際に長門さんは、認知症である妻・南田洋子さんの介護をしている。
 
 ドラマ本編は頻発しているひったくり事件から始まる。そして長門と草村礼子演ずる老夫婦。夫が少し目を離した隙に、車椅子の妻がとある男を見つけて車椅子で追跡する。しかし、段差により車輪が浮き上がり転倒してしまう。男はその場所の近くで殺害されているのが発見される。犯人を目撃していたかもしれない妻は認知症であった。
 
 本庁捜査一課は「認知症の妻の証言など忘れろ」というが、ショカツ(所轄=新宿西署)の捜査員たちはその妻から事情を聞くことから始める。「郵便屋さん(を見た)」との言葉を信じることから始めるのだ。
 
 「医者は認知症という。でも何でも忘れるわけではなく、昔の話をすると鮮明に覚えていることもある」「もう3年になる。俺たちの結婚記念日を忘れたのが始まりだった」「記憶がだんだんなくなっていく」「妻の言葉の一つ一つには意味がある」「君たち若い人にはいっぱい未来がある。でももう俺たちにはないんだ」。
 
 こうした長門のセリフは、実際に介護をしている南田との生活と重なる部分があるような気がする。公園で手から砂を落とすシーンは、長門が実際に言った「どんどん手からこぼれていく。拾っても拾っても追いつかない」というコメントと重なる。
  
 ドラマ本編では、岡本信人演じる刑事がショカツを軽視する管理官に食い下がる。
「ひったくりや振り込め詐欺の被害者は、みんな一生懸命この国を支えてきたお年寄りです。お年寄りを守ろうと、寝食を忘れたこの若い刑事の正義を奪うんですか」。
 
 この国を支え、長い人生を一緒に過ごしてきた夫婦が、晩年を幸せに送れるような社会がいい。老老介護の負担が少しでも減るような社会がいい。愛情も正義も、まっすぐ線を引くことは難しいかもしれない。曲がった線を直すのがパートナーであり、周りにいる仲間である。
 
 資源のないこの国は人が財産だ。そして人生を語ることのできるお年寄りがたくさんいる。そんなお年寄りから学ぶことを忘れてはならない。今は世界的な不況で少しばかり暗い世の中かもしれないが、戦後の焼け野原を経験していない僕らは踏ん張らなければいけない。そんなことを教わったドラマであった。
 
   
☆ 人生の悲劇は、まだ生きているのに心が死んでいるということである(アルベルト・シュバイツァー)
 
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★ 南田洋子が意識障害で緊急入院(産経新聞・09/4/2)
★ 消えていく記憶 認知症の南田洋子(本ブログ・08/11/3)
★ お年寄りと接する”常識”の変化(本ブログ・09/2/19)
 
 

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93歳米国人女性の簡単料理動画が人気

 YouTubeで93歳の米国人女性が紹介する料理の動画が人気です。
例えば、パンを適量用意して、
1)オリーブ油を塗る。
2)塩を適量かける。
3)お湯をかける
完成!といった具合に簡単です。ご本人も「パーフェクト!」とご満悦。
「豆パスタ」では、
1)ジャガイモの皮をむいてカット。
2)タマネギも同様に。
3)以上を炒める。
4)そこに缶の豆を全て投入。
5)塩、コショウ、水を入れて沸騰させる。
6)そしたらパスタを入れて5〜10分待つ。
7)チーズ、トマトソースなどをお好みで。
完成!という具合です。
 この動画に登場する女性の名はクララさん。動画には「Great Depression Cooking」とタイトルが付けられており、クララさんが1930年代の「世界大恐慌(Great Depression)」の時に経験した簡素な料理を動画で公開したところ、アクセス数が増えました。
 
 コメントの中には「アイラブ・クララ」「クララは独身?」などといった書き込みも見られます。世界的な不況の今、再びクララさんは簡単料理を披露することになったのです。ちなみに、撮影者はクララさんのお孫さんです。
 
 
 
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★ Great Depression Cooking (You Tube)


 

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自分が好き?嫌い?都が小学生に「自尊教育」導入

 「あなたは自分のことが好きですか?」
 
 東京都教育委員会が公立の小中学生、都立高校生と対象に「自尊感情」について調査、中高生の5〜6割が「自分」を好意的にとらえていないことが分かった。このため都教育委員会は「自分の存在価値を積極的に肯定できる子どもを育てる」とし、4月から小学校で試験的に「自尊教育」を実施する。
 調査結果によると、中学生では「自分のことが好きだ」との問いに対して、「そう思わない」「どちらかというとそう思わない」と否定的に回答した割合が、中1が57%、中2が61%、中3が52%に上った。
 
 財団法人「日本青少年研究所」の平成14年の国際調査でも、「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」という問いに「よく当てはまる」と回答した中学生が、アメリカ51.8%、中国49.3%、そして日本は8.8%だった。同研究所の千石保理事長は「謙虚さ、控えめを良しとする日本の文化がまだ根強いのが一因。子どもが成績を他人と比較して、『自分はダメだ』となる傾向も見られる。これは日本だけの特徴で、諸外国に比べて自己評価が低い。もっと自分に自信を持たせるような教育を勧める必要がある」とコメントした。
 
 これまでの日本の教室というと、生徒が一斉に先生のほうを見て授業を受ける。前に座った生徒は発言するときに後ろにいる同級生の視線が気になり、「間違えたら恥ずかしい」という感情を持つこともあるだろう。これに対して効果的な授業法の1つは、席をクラス全員の顔が見えるように、机を丸く並べて座らせる事が挙げられる。特に、正解を求めるのではなく、個人の意見をどんどん取り入れる方式だ。皆の顔が見えていれば、自然に発言することに躊躇がなくなる。発言する機会が多くなれば、仮に間違った考えでも自分に自信が持てるものである。
  
 子どもに限らず大人でも、「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「なぜ」「どのように」という事を言える者が多いとは限らない。特に日本人はトラブルを恐れて、外国人を含めたミーティングでも積極的な意見を述べないままでいることが多いようだ。
 
 言いたいことを言えずに黙っていると後悔する。そしてそれは「自分が嫌いになる」ことに拍車をかける。自分が正しいと思って行動すれば悔いはない。悔いのない言動には正々堂々と意見を述べることができるはずだ。
 
 もし私が「自分のことを好きか」と問われれば迷わず「YES」と答えるだろう。なぜなら、ご飯はおいしいし、友達といると楽しいし、飼っている犬はかわいいし、草木に目をやれば美しいと思うからである。自分を好きになって初めて、他人を好きになることになるであろうし、社会が好きになるであろうし、海の向こうの国のことも好きになるはずである。生まれ変わっても、もう一度この自分になりたい。
 
 
☆ 愛されたいなら、自分から愛し、そして愛される人になりなさい(ベンジャミン・フランクリン)
 
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★ 自分嫌いをなくそう!都が小学生に「自尊教育」導入へ(産経新聞・09/3/11)
★ 勝ち組と負け組(本ブログ・08/3/28)
★ 恋愛マニュアル(本ブログ・08/2/27)
★ 「頑張れば夢かなうというのは幻想」(本ブログ・08/2/22)
★ マラソン(本ブログ・08/2/17)
★ 高校生の出世意欲最下位(本ブログ・07/4/27)
★ 女性のシワ(本ブログ・05/12/13)
 
 

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ガン闘病の延地和子さん、副読本に掲載

 昨年3月9日のエントリ「余命半年の元校長 最後の授業」で、大阪府吹田市の前教育長であった延地和子さんの「最後の授業」を取り上げた。校内暴力が吹き荒れた時代に生徒と正面からぶつかり、「大変だったけど、楽しかった」と語った。離婚、そして24歳の娘さんの突然死。そうした事を乗り越えて教育畑一筋でがんばってきた延地さん。
 
 そんな延地さんが校長を務めたことのある中学校で、いのちの大切さを説いた「最後の授業」が、中学3年生の道徳の副読本に掲載されることとなった。4ページ2500字の文章にちりばめられているという。執筆したのは、大阪府和泉市立教育研究所の指導員、高井建次さん(61)。「内容をどうするか迷ったが、結局引用部分が三分の二以上になった」という。
 
 『人間が生きていくっていうことは、いろんな試練があってね、それを乗り越えるっていうのは本当に大変なことです。でも、1人じゃない、仲間がいる、仲間と支え合ってこの世の中で生きているんだ、そう私は思っています』
 
 生きている人に質問をすれば答えが返ってくる。死期が近づいている人の教えに対して、僕たちは何を問い、何を答えとして導き出さなくてはならないかを考えて生きて行かなくてはならない。
 
 延地さんは昨年4月1日に亡くなった。「最後の授業」をした3月7日から25日後のことだった。
 
 
☆ 学校で学んだことを一切忘れてしまった時に、なお残っているもの、それこそ教育だ。(アインシュタイン)
 
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★ 命の授業 永遠 ガン闘病の故延地さんの言葉、副読本に(朝日新聞・08/12/11)
★ 余命半年の元校長 最後の授業(本ブログ・08/3/9)
 

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お年寄りと接する”常識”の変化

 
 
 ”中高年のアイドル”と言われている綾小路きみまろさん。1時間のライブに多くの中高年層が訪れていた。たくさんの毒舌を吐いているが、それが人気の秘密のようである。来場者は「事実を言われているから何も気にならない」と笑う。
 考えてみると、お年寄りを気遣って当たり障りのないことを言いがちではあるが、それが世代と疎遠の間柄になってしまっている気がする。最初は目上の存在であるから敬語を使って話しているが、それがいつの間にか距離を置いた関係を作ってしまっているのかもしれない。
 
 認知症を防ぐこととして、頭を使うことが大切であるようだ。例えば熊本県の老人ホームでは、これまでオムツをして寝たきり状態にさせていたことをやめて、食事が終わるとトイレに連れて行く。入浴も寝たまま入るスタイルを変えて、介助をしながら通常の入浴に近い形を取り入れた。食事もどんなに時間がかかっても、リビングでスプーンなどを使って食べてもらう。「今まではこちらが面倒を見てあげている、というおごりがあったかもしれない」と施設の責任者は言う。
 
 毒蝮三太夫さんも高齢者への毒舌で有名だ。「ジジイ」「くたばれ」「バレンタインデーに関係のないババアばかりだな」などなど。しかし最初からそのような芸風・口調ではなかったという。40年前にラジオ番組を担当したときに同級生から「普段の話し方じゃないからつまらない」と言われて、今のような口調になり人気を博した。
 
 毒蝮さんは聖徳大学短期大学部客員教授を務め、老人とのコミュニケーションについて教えている。高齢者に接するポイントは、「笑顔で話しかける」「肩に手をかける」「気にかける」の3つだ。人と接する機会が少なくなり、自然と笑顔が消えていくお年寄り。「笑顔で話しかける」というのは対老人でなくとも大切な要素に思えた。人とのふれ合いが少なくなるから「肩に手をかける」。「風邪を引いたみたいだけど、調子はどう?」というように「気にかける」。
 定年退職で人生の節目をリタイアする高齢者は、社会と接する機会が少なくなっていく。本当は誰かと話したくて仕方ないのに、本心から接してもらえない寂しさがあるのかもしれない。上記のお二人の毒舌が受け入れられているのは、よそよそしい態度ではなく、そのものズバリを言っているからに他ならない。
 
 高齢者を受け入れている職場がある。東京・五反田にある「モスバーガー五反田東口店」だ。募集している年齢を見ると、「16歳〜75歳まで」となっている。若い人であれば機械的な対応で済ませてしまうところを、年配者ならではの柔らかい口調の接客が受けていて、若い人ばかりではなく年配のお客さんも増えているとか。ちょっとした気遣いもお客さんに好評で、若い店長も見習うべき点が多いと考えている。
 
 孤独になればなるほど脳も衰えていく。認知症予防の観点からも、「人と話す」という基本的なコミュニケーションを忘れないようにしたい。人生の先輩から教わることもあるであろうし、自分も将来必ず老いと向き合わなくてはならないのだから。
 
 そして過度に年寄り扱いすることも良くないことかもしれない。ある施設で若いスタッフが「おばあちゃん、お食事ですよ」などと声をかけても無視されていた。そこにベテランのスタッフが来て「○○さん、お食事ですよ」と名前を呼びかけたところ、振り向いてくれたという話しを思い出した。
 
 
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★ モスバーガー五反田東口店求人情報
★ クローズアップ現代ホームページ
★ 消えていく記憶 認知症の南田洋子(本ブログ・08/11/3)
 
 

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