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記者会見とはこういうものなのか 発言の真意 恫喝する記者 鉢呂経産相辞任

 鉢呂経済産業大臣が辞任した。「死の町」、「放射能をつける」という内容の発言の責任をとっての辞任。会見の中で放射能発言については、オフレコの立った状態で記者との懇談での言動であり「まだ一週間であり、どの記者のかたたちと話したか分からない」、放射能発言の状況についても「明確な記憶がない」と述べた。
 
 真実を突き止めるのに記者会見で質問をするのは大切である。取材対象が明言することなく、質疑応答に対して不真面目な態度の場合、時には報道陣も熱くなるであろう。そして強く追求しなくては取材対象から正確な事実が得られないこともある。
 
 しかし、事件や事故の加害者に対しての追求ならともかく、発言に対する真偽を問いただすのに恫喝する必要があるのだろうか。
 
 大臣に対して「あなたね、国務大臣をおやめになられるなら、その理由をきちんと説明しなさい」「きちんと説明しなさい最後くらい」「説明しろっていってんだよ」と無礼な態度をしたのが何処の媒体の記者なのか。公式な会見ではなく、いわば”立ち話”での”放射能言動”を大きく問題にしたのはどこの媒体の記者なのか。大臣の発言よりもこうした記者の情報の取り扱いのほうがひどい。
 
 アメリカではオバマ大統領が会見をするとき、記者達は一斉に立ち上がって大統領を迎える。大統領が「座ってもよい」というジェスチャーをして初めて着座する。それくらい品格のある雰囲気だ。何でもよその国の真似をすることがいいとは思わないが、鉢呂大臣辞任会見時の一部の品格無き記者の何というていたらくである。
 「死の町」については当初全く問題だと思わなかった。原発から20キロ圏内の惨状、それは豚の死骸にウジがわいていたり、餓死してぺっちゃんこになっていたウシ。田んぼのあぜ道で白骨化したウシと思われる死骸。目の前にエサがあるのにオリが邪魔になって食べることができず、顔をオリに突っ込んだまま死んでいたイヌ。
 
 こうした状態を見たら「死の町」はむしろ適切。問題だとするならば、マスコミや野党はこの惨状を何と表現するのか。
 
 そしてその言葉だけを福島県民に聞かせれば「それはひどい発言だ」と返ってくるに決まっている。こんな世論誘導をし、政治をもてあそんでマスコミの人というのは権力でも手に入れた錯覚に陥っているのではないだろうか。それとも「脱原発」を表明していた鉢呂大臣は目障りだったか。
 
 野田総理もさっさと鉢呂大臣を辞めさせることなく、「あの言動なら問題ない。続投させる」と援護射撃すべきだった。
 
 大臣のこの程度の言動でやめさせようとする空気が異常である。鉢呂大臣は本当に辞めなくてはならなかったのか。国難のこの時期に。
 
 
(11/9/12・追記)
 ”放射能”の言動について、毎日新聞ではこう書いている。この文面を読む限り、”なすりつけられた”のは毎日新聞記者だと推測できる。
 
Q (福島第一原発の)視察どうでした?
A やっぱり、ひどいと感じた。(記者に突然、服をなすりつけてきて)放射能をつけたぞ。いろいろ回ったけど、除染をしないと始まらないな。除染をしっかりしないといけないと思った。
 
Q 予算措置は?
A あす、予備費の2200億の関連で閣議決定する。それでも足りないよね。じゃ、おやすみ。
 
 東京新聞(11/9/11・3頁)では、報道陣が録音しない「囲み取材」の内容として、共同通信記者から聞いた話を載せている。
 
 議員宿舎に戻った鉢呂氏は防災服のままだった。帰宅を待っていた記者約十人に囲まれた。視察の説明をしようとしながら鉢呂氏が突然、記者の一人にすり寄り、「放射能をうつしてやる」という主旨の発言をした、ということだ。各紙が「放射能をつける」という言葉のニュアンスが違うのだが、各社一致していないことで、現場にいた記者ですら、それほど問題のある発言だと認識していなかったことが分かる。
 
 しかし、「放射能」が8日午後11時半ごろであり、「死の町」が翌9日午前の記者会見での発言。それにもかかわらず、問題となったのは「死の町」が先で、「放射能」はあとになってからである。順序が逆になっていることから推測できるのは、「死の町」ではあまり問題にならなかったから、「放射能」を改めて問題にしたのではないかということだ。
 
 他の新聞各社も「放射能」を一斉に報じたのは、いわゆる「特オチ」を嫌ったからに違いない。「特オチ」とは「特ダネ」の反対の意味で、他社が「特ダネ」を抜いた時に自社がそれを知らなかった、という場合のことを指す。他社が知っていることを知らないと取材力の無さを指摘されることになる。
 
(11/9/15追記)
 東京新聞(11/9/14・26頁)では「鉢呂前経産相発言と報道」と題してこの問題を検証している。東京新聞の記者はその場におらず、共同通信の配信に基づいたという。(以下一部抜粋)
  
 毎日新聞社長室広報担当によると、「鉢呂氏は現地の状況について『ひどいと感じた』などと述べたあと、近くにいた毎日新聞の男性記者に防災服をすりつける仕草をし、『放射能をつけたぞ』という主旨の発言をした」。ただ、同社はこの発言を「非公式な場所での悪ふざけ」ととらえ、九日付朝刊では報じず、他社も動かなかった
 
 「放射能」発言は、フジテレビが同日午後6時50分過ぎのニュース番組で「死の町」発言に付け加える形で最初に報じた。この後、共同通信が午後9時過ぎに速報するなど各メディアは一斉に後追い。録音しない非公式の場での発言だったため、発言内容は「放射能をつけちゃうぞ」「ほら、放射能」「つけたぞ」「うつしてやる」など微妙に異なった。
 
 一日遅れて報道したことについてフジテレビ広報は「いつどのように放送するのかは編集の問題なので、公表していない」。共同通信の岡部央経済部長は「『死の町』発言で、原発事故対策を担う閣僚としての鉢呂氏の資質に疑義が生じたことで、前夜の囲み取材での言動についても報道するべきだと判断した」とコメントしている。
 
 江川昭子さんのツイッターによれば、その場に記者いたことが明らかになっているのは、朝日、NHK、毎日、共同の4社であるという。日テレ、TBS、テレ朝、フジは現場にいたか明らかにしていないという。
 
 一人の大臣が辞める事態となった発言内容について、現場にいた記者というのは限られた人数であったようである。その囲み取材を一斉に報じたことには違和感がある。現場に自社の記者がいないのに、一面トップで報じるというのは報道する側として違和感のないことなのか。つまり、情報源(ソース)がはっきりしていないのに、他社の引用をすることが報道の仕事だとしたら、ツイッターで情報源も確認せずにリツイート(引用)して情報を拡散させているのと同じレベルではないだろうか。
 
 「鉢呂氏の発言には批判が多い」という記述をいろいろな媒体で見かけるが、その「多い」という根拠はどこの報道機関が取材したものですか?
 
 
https://twitter.com/#!/amneris84/status/113418504606191617
 ↓元産経新聞の記者福島香織さんのツイート↓
https://twitter.com/#!/kaokaokaokao/status/112750023762124800
↓再生開始15分の辺りで1記者の詰問がある。 
http://www.ustream.tv/flash/viewer.swf

Video streaming by Ustream
 
[youtube http://www.youtube.com/watch?v=pK0rR7gtH4s&w=480&h=390]
↓3分34秒から「天皇が来る意味は?」↓
[youtube http://www.youtube.com/watch?v=QZ2rUiROI7o&w=480&h=390]
 
 
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★ 鉢呂経産相辞任 記者クラブに言葉狩りされて(田中龍作ジャーナル・11/9/11)
 
★ 鉢呂経産相が辞任 不適切発言などで引責(朝日新聞・2010/9/10)
★ 「ほら、放射能」厳しい状況共有のため 鉢呂氏(読売新聞・11/9/10)
★ 鉢呂経産相:8日夜の報道陣とのやりとりと9日夜の主な説明内容(毎日新聞・11/9/10)
 
 

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「放射能問題は深刻」 元内閣官房参与・小佐古氏が証言 辞任後の初インタビューで

 元内閣官房参与で辞任の記者会見で涙を流した、小佐古敏荘氏(61)がウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに応じた。同氏は海の汚染や魚への影響について迅速が分析ができていないために特定の放射能の危険性を過小評価していると述べた。その他の同氏の主張論点は以下のようになる。
 
1. 野菜などの食品汚染は散発的に報告されているが、主食の米の収穫が始まったころに憂慮すべき問題が明らかになる。「東北の米は買わない」ということになればやっかいなことに。
 
2. 原発状況に関して、政府の意志決定がどういう理屈で何を決めているのか不明。とても民主主義社会とは思えず、東アジアの発展途上国のような状況。
 
3. 校庭の放射能許容レベルが主張した低いレベルに設定すると、何千校もの学校で放射能除去作業が必要になる。コストがかかる選択肢は支持されなかった。
 
4. 原子炉から海に廃棄された放射能物質について、海水の監視や、拡散状況の予測をこれまで以上に行い、海草から魚類に至るまでさまざまな種類の汚染に対応するための措置を実行するように求めたがやっていない。
 
5. 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)データは3月23日まで一般公開されず、結果として何千人もの福島県民を高レベルの放射能にさらした可能性がある。
 
という具合だ。
 
 辞任後、小佐古氏がマスコミのインタビューに応じたのは初めて。小佐古氏は心の準備ができたとうことで、今後は米国や台湾で講演を行うという。
 
 日本政府の情報提供はまさに民主主義社会とは乖離(かいり)したものである。情報の隠蔽などしていないといわれてもその疑念を払拭するにたり得る正しい情報が得られていない。加えて、政府が地方自治体に対して、放射能物質に関する的確な情報や指針を出しているとも思えない。
 
 もはや正しいことは誰が言ってくれるのか分かりにくくなった。正しいことを精査して信じるしかない。先進国でありながら、国民に重要で正しい情報が降りてこないというのは大問題である。
 
 真実が明らかになることが大切である。その内容がどんなことであろうとも、国民に知らせて民意を原発事故政策に反映させることもせずに、停止中の原発稼働することが容易ではないことは明明白白である。
 
 
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★ 【インタビュー】日本の放射能問題は深刻 元内閣官房参与・小佐古氏(WSJ日本版・11/7/2)
★ 福島第1原発:福島ナンバーの車に理不尽な風評被害(毎日新聞・11/7/2)
★ 日本全国隠された「放射能汚染」地域 全国民必携これが本当の数値だ(現代ビジネス・11/6/27)
★ 原発「安価」神話のウソ、強弁と楽観で作り上げた虚構、今や経済合理性はゼロ(東洋経済オンライン・11/6/21)
★ 確実に広がる放射能、福島県内学校の75%が放射能「管理区域」レベルの汚染(1)(東洋経済オンライン・11/4/14)
★ 日本当局の「重大な怠慢」仏CRIIRAD報告(フランスメディアニュース・11/6/29)
 
 

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おやじギャグには”真摯な対応”を 法相の失言

 うちの父はかつて酒の席で「おやじギャグ」というところを「オヤジギャル」と言ったことがある。そういえば「オヤジギャル」という言葉も流行ったが、それにしても年配の殿方が生産する親父ギャグはどうしてああもつまらないのだろう。あまりにくだらなすぎて笑うこともあるが、大抵はどん引きである。
 
 かつてのバイト先の店長は、兄妹で長男であることを言った後に、「長男ですよ(そうなんです)なんちって」といって、周りの人間を一瞬にして脳死状態にしたことがある。別のところで、シフトを無断で休むことを当時「ぶっちぎる」と言っていたが、それを「ぶっとばす」と言い放った人もいた。
 
 すべてはコミュニケーションのために行われるおやじギャグだが、つまらなくてもそうした努力は伝わるものであり、「しょうがないなぁ」と周りはそれとなく同調するものである。
 
 しかし、言って良いことと悪いことを知らなければならない人がいる。
 
 法務大臣は、広島での会合で、国会答弁について「個別の事案についてはお答えを差し控えます」、「法と証拠に基づいて適切に処理している」の2つだけ覚えておけばよい、便利な文句だ、などと発言した。
 
 当然のことながら野党は猛反発。小泉進次郎衆議院議員は、「2つの文句しか言わないのならロボットに法相を任せておけばよい」と皮肉り、自民党の河合克行氏は「国会軽視も甚だしいし、歴代の法相に対する冒涜だ」と強く非難した。
 
 法相は会合で場を和ませようとしたのであろうが、ジョークがうまくない人が言うと、おやじギャグでは済まずに悲惨を極める。
 
 こういう資質の人に対して、死刑執行命令書に署名をするという重責を任せていいものなのだろうか。問題視されている映像流出の海上保安官の刑事責任を問うよりも、捜査を監督する長である法相のこの発言のほうが大いに問題である。
 
 法相は謝罪をした。しかし謝って済んでしまうから、議員は要らないのだ。時の仕分け人には事業だけのみならず、人材についても仕分けをして欲しい気がする。
 
 
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尖閣映像流出 長引く任意聴取の海上保安官はどうなる

 「自分が流出させた」と告白した第5管区海上保安本部・神戸海上保安部の海上保安官(43)の任意の事情聴取が長引いている。警視庁と東京地検が合同で捜査を始めて間もなく名乗り出た海上保安官はこの後どうなるのであろう。容疑が固まれば「逮捕」としていた捜査側であるが、一筋縄ではいかなようだ。
 
 罪の構成要件を固めて本人の供述の裏付け捜査が必要になる。特に今回は映像をアップロードしたという事実は固まっているようだが、国家公務員法の守秘義務違反での捜査。秘密なのか否かが焦点となり、警察と検察でも見解が二分している。犯人しか知り得ない秘密の暴露などがなければ、後に否認に転じた時に公判が維持できない可能性もある。
 
 世論も専門家も意見は賛否二分している。石原慎太郎・東京都知事は「愛国者を罰するのは間違い」とし、橋下徹・大阪府知事は「本人には気の毒だが、公務員は政治家の決定に従うべき。そこが崩れたら政治行政は成り立たない」と語る。
 
 法を犯せば罰せられるのは当然である。捜査当局が判断することは、この嫌疑に見合う行為を海上保安官が行ったかということであり、逮捕して起訴することで公判を維持できるかを勘案しなければならない。
 
 もし海上保安官を逮捕したならば、後に不起訴とすることだ。中国船長を無罪放免とした時と天秤にかけ、それを釣り合わせること、正義と大義を両立させる冷静な手段である。それにしても海上保安官も警察官も検察官も同じ司法職員である。捜査当局の士気が上がらないように感じるのは気のせいか。
 
 明らかに違法行為を行った中国漁船を”無罪”にし、それを公開した海保職員が犯罪者になろうとしている。同じ国内法でも一方は国境を守る海保が検挙し、その映像を公開した自国民である職員を2つの捜査機関が検挙しようとするのは海外から見れば奇妙に映るに違いない。
 
 
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★ 【海保職員「流出」】長引く取り調べの理由とは?「準備不足」と「世論感情」と(産経新聞・10/11/11)
★ 映像流出事件、任意捜査も検討 逮捕の可否、検察も割れる(共同通信・10/11/12)
 
 

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誰のための捜査 尖閣沖衝突事件映像流出問題

 尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件の映像がインターネット上に流出した問題で、海上保安庁長官による告発を受け、東京地検と警視庁、沖縄県警は国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで被疑者不詳のまま捜査を始めた。
 
 情報が流出したという危機管理上問題である点は否めないが、これほど捜査機関に期待を寄せない事件も他にない気がする。もともと衝突の様子を録画したビデオは国民に公開すべき物であった。中国漁船の違法行為が明白であるのに、向こうの顔色をうかがって船長を処分保留で釈放したことは当初想像していないことであった。それを政府が公開しないことは歯がゆかった。
 
 今回の流出で情報危機管理の問題はあるかもしれないが、流出させた方に悪意があったとは思えない。むしろ公開しなかったことの方にいら立ちを感じる。真剣に捜査に取り組む捜査当局には申し訳ないが、とてもしらける。
 
 巡視船に衝突した船長を不問に付したのに、それを流出したからといって国民の中から犯人捜しをするのは捕まえたところで中国の船長同様、”英雄”扱いになり、かえって政府の弱腰外交が非難されるだけである。
 
 ついでながら、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件もあり、検察が捜査することにどことなく抵抗がある。一体この捜査は誰が被害者で、何の正義を守るための捜査なのかが全く分からない。
 
 中国漁船に追突された海保の巡視船が一番悔しい思いをしているに違いない。国境を守る最前線で闘いながら、その仕事が報われない虚しさである。漁船の船長釈放の時、政府はその判断を那覇地検に丸投げした。政府は、そんな最前線で働く人たちの仕事を本気で考えたことがあるのだろうか。
 
 
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★ 流出前後の防犯カメラ要請=那覇市内のネットカフェ-ビデオ事件で捜査当局(時事通信・10/11/9)
★ 尖閣映像流出:検察当局が捜査へ…守秘義務違反容疑 – 毎日jp(毎日新聞・10/11/8)
★ 映像編集は事件直後 検察、守秘義務違反で捜査(読売新聞・10/11/8)
★ 検察当局が捜査へ 守秘義務違反容疑など 尖閣ビデオ流出(時事通信・10/11/7)
★ 尖閣ビデオ投稿者特定に限界 密告用サーバーの存在も(産経新聞・10/11/8)
 
 

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異例の移送劇 ピンクパンサーのメンバー、スペインから厳重警戒 警視庁

 
 防弾チョッキに身を固めた屈強な捜査員数人が、男1人を移送する光景は物々しいものだった。07年6月に東京・銀座の宝石店から2億8千万円相当のティアラが強奪された事件で、警視庁組織犯罪対策2課と築地署は、強盗致傷容疑で国際窃盗団「ピンクパンサー」のメンバー、モンテネグロ人の男(42)を逮捕した。
 
 警視庁は男が拘束されているスペインの空港の航空機内で男の逮捕状を執行した。公海上か日本到着後の航空機内での逮捕が通例であり、異例の逮捕となった。スペインと日本とは犯罪人引き渡し条約が締結されていない。スペイン当局が日本側の要請に応じる形となったのも異例だ。背景には国際犯罪組織に対する警察当局の強い姿勢がある。
 
 ピンクパンサーはヨーロッパの各国内でも強盗を重ねており、各国警察がメンバーを国際手配しており、今回の容疑者もキプロスで逮捕されていたが、後に別の事件の容疑でスペインに移送され、今回の日本への移送となった。メンバー奪還のために移送中の襲撃をすることも珍しくなかったため、警視庁は築地署までの移送に防弾チョッキを着用した捜査員、そして防弾加工を施した車両を機動隊車両で囲む形での移送となった。
 

「犯罪人引き渡し条約」締結は2カ国のみ

 
 犯罪人引き渡し条約は2国間双方で、死刑か1年以上の懲役・禁固刑に相当する犯罪を犯した者の身柄を引き渡す条約。日本の場合、アメリカと韓国の2カ国しか締結されていない。日本との締結が拒まれるのは日本に死刑制度があるためだ。自国民保護の観点から犯罪者であっても日本との条約締結に距離を置く国がほとんどだ。
 
 しかし数年前から状況は変化しつつある。90年代に入って中国人による犯罪が増え、日本当局は中国当局に犯罪者を引き渡すように求めることが多くなった。また、中国に帰国した犯罪者を代理処罰するよう要請することも多くなった。中国側も協力姿勢を見せ始め、積極的に捜査協力するようになった。これにより代理処罰を恐れた中国人が本国への帰国を断念したケースもあるという。
 
 代理処罰が必ずしも被害者側の望みを叶えているとは限らない。静岡県内で死亡ひき逃げ事件を起こし、ペルーに帰国した男は現地で代理処罰された。こうした事案について被害者側は報道によってのみ内容を知ることができ、外務省や警察当局からは何の連絡もない。また日本と海外の刑罰では差があることも問題だ。
 
 警察庁と全国の警察本部は今年になって、「グローバル犯罪対策室」を立ち上げた。国内の外国人犯罪捜査状況を一元管理し、国際刑事警察機構(ICPO)との連携も強化する。犯罪の国際化は各国警察の脅威である。海外との捜査の連携を強化すべく、捜査共助のシステム構築を早急に成すべきである。
 
 
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★ ピンクパンサー、成田着 スペインから移送、厳重警備(共同通信・10/8/14)
★ 「ピンクパンサー」逮捕・移送 国境なき犯罪撲滅へ”共闘”外交ルート、異例の引き渡し(産経新聞・10/8/15)
★ 「FBI型」でグローバル犯罪を捜査 警察庁(産経新聞・10/2/23)
 
 

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愛する人を失った悲しみは永遠 65回目の原爆の日 長崎

 
 人は生まれてから両親とのふれあいを知る。肌と肌のふれあいが家族の絆を強固なものにし、自分にとって大切な人は何かを知る。外に目を向ければ、友達や異性との交友関係から友情を知り、愛情を知る。
 
 そのうち言葉を交わすことをしなくても、人と人は相手の瞳を見つめるだけで人を恋しいと思う時もある。相手の瞳が輝いていてこちらを見ているのは、とてもきれいな瞬間であり、2人にとって特別な空間が生まれる。生きている者と話をしていて楽しいのは、瞳の輝きが人の生を感じさせるからである。
 
 1945年8月9日午前11時2分、原子爆弾が長崎に落とされた。一瞬にして7万人を超える人たちが亡くなった。残された人は原爆後遺症で苦しみ、家族や友人、恋人を失って失意の底に突き落とされた。
 
 第二次世界大戦は終結したが、被爆者の苦しみが海外に詳しく伝えられることは未だに少ない。そればかりか、悲惨な歴史を刻んだにもかかわらず、世界では戦争や紛争が止むことはなく、核保有国がその脅威をちらつかせている。
 
 「戦争を終結させるために投下した正当な行為」といった文言はつまるところ戦争に勝利した国がいうことのできる大義名分だけのものに他ならない。そのために払った犠牲を認識することを避ける。
 
 爆弾に優劣などないが、原子爆弾による被爆者は今も後遺症に苦しむ。戦争は全く終結していないのだ。身体に痛みが残れば、65年前の悪夢が常によみがえる。戦争が終わっていない人たちの声に耳をふさいで本当の核廃絶ができるであろうか。
 
 原爆死没者名簿に記された人は15万2276人。これだけ多くの人たちの家族や友人、恋人たちは、30万を超える輝いていた瞳を知っている人たちであり、悲しい人たちである。そして戦争を知らない人たちが空を見る時に、別の空を知っている人たちである。
 
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★ 非核三原則の法制化「私なりに検討」 首相(読売新聞・10/8/9)
★ 米国人作家も平和式典参列 キャメロン監督に促され(朝日新聞・10/8/9)
★ 「何で来ないの」「失礼だ」 米国、平和式典欠席で 長崎の被爆者(10/8/9)
★ 長崎市 平和・原爆 日本語総合ページ(長崎市ホームページ)
 
 

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死刑を考える人たち

 千葉法相が1年ぶりの死刑を行ったことを明らかにした。死刑存続派からは「当然だが遅すぎた」という声が聞こえ、死刑廃止派からは「前回の執行から1年という時期を選んだことに憤りを感じる」といった声が聞こえる。
 
 死刑が執行されたのは、東京拘置所(東京・葛飾区)にいた2人の死刑囚。06年に宇都宮市内で宝石店従業員6人を焼死させ、強盗殺人と現住建造物等放火罪で刑が確定していた男(59)と、03年埼玉県熊谷市などで男女2人を殺害するなどした殺人、同未遂、逮捕監禁罪などの罪で刑が確定した男(33)。
 
 もともと人権派弁護士出身、死刑廃止論者であった千葉法相が死刑執行命令書に署名したことは意義深い。これまでの法相では思想信条から死刑執行命令書に署名をしなかった杉浦正健氏がおり、その一方で在職中に13人の執行をした鳩山邦夫氏もいる。90年代に入ってから法相のもとでの死刑執行は平均すると4人ほどになる。
 
 「自らの責任があるから」と死刑執行に立ち会ったことも法相としては初めてである。この時期の死刑執行に、参院選で落選した千葉氏がそれを成したことに対する批判もあるが、執行書にサインはしないであろうと法務省幹部ですら思っていただけに「職責を全うしたのではないか」という声も聞かれる。
  
 一方、裁判員裁判で「死刑を選択するような裁判には参加したくない」という声も聞かれる。これは裁判員の思想である。しかし、今後は国民誰もが死刑に関して考えなくてはならないことを意味する。裁判員も死刑選択が視野に入ってきた事案ならば、どんな気持ちで審判の話し合いをすることになるのだろう。
 
 「政治パフォーマンス」にしては、荷の重い仕事に立ち会った千葉氏である。拘置所長、検事、教誨師(きょうかいし=罪を犯したものを教え諭す者)と一緒に立ち会ったこの仕事を「パフォーマンス」だと片付けるのは短絡的だ。
 
 2005年、広島市で女児(7)がわいせつ行為の後に殺された事件で、殺人などの罪に問われていたペルー国籍の男(38)の控訴審判決が28日にあったが、広島高裁は、死刑を求めた検察側、無罪を求めた弁護側双方の控訴を棄却、一審広島地裁の無期懲役を支持した。あいりちゃんの父親は「遺族としては妥協せずに極刑を望んでいる。さらなる長期化も覚悟している」と落胆した様子だったという。
 
 
 死刑選択について、これだけ重荷を背負って苦しんでいる人がいるということを、罪を犯す者は考えたことがあるのだろうか。
 
 
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★ 「執行は当然」「前回から1年目に抗議」賛否の声(読売新聞・10/7/28)
★ 「死刑の現実」直視する時(SANKEI EXPRESS・10/7/29)
★ 女児わいせつ殺害、二審も無期 「犯行は衝動的」死刑回避 ペルー人被告・広島地裁(朝日新聞・10/7/28)
★ 無念の父、「1審より辛い」 広島女児殺害再び無期(読売新聞・10/7/29)
★ 広島女児殺害事件 被告に無期判決(本ブログ・06/7/5)
 
 

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