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正しい戦争

 12月10日、ノルウェーの首都オスロでノーベル賞授賞式が開催された。ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領は演説の中で、「正当な戦争が避けられないことがある」「一定の条件が満たされる場合にのみ戦争は正当化されるとされた」などと発言した。アフガニスタンに3万人兵士の増派を決めた後の大統領の演説は、矛盾な言動であることを認識しつつも、堂々とした演説であった。
 
 オバマ氏の受賞には内外から批判がある。「就任して何も功績を残していない」、「平和賞受賞者が戦争を擁護するのはおかしい」、「平和の追求と反戦主義が同じでないと訴えたのは正しい」、「ノーベル賞に傷をつけた」などである。
 
 功績を残していないオバマ氏が受賞をしたのは、彼の軍事政策に対する期待感が込められたためであろう。4月のプラハ演説では「核を使用した唯一の核保有国として、核軍縮をリードする用意がある」などと述べたが、この”過去を謝罪する低姿勢”からの転換ともいえる今回の演説を賞賛する向きもある。
 
 実際問題として、話し合いで相手が武器を置くことをしてくれるのであれば、どの国でもそうしたいはずである。しかしながら、人権活動家を拘束する国やテロ組織などは話し合いのテーブルに着く用意はなく正義に対して銃口を向けるのである。この時に、こちらは「ああそうですか」と退散するか、こちらも武器を構えるかということが問題になる。武装組織に対して警察力が弱かったり無政府状態で混乱するような国の場合に他国の軍事介入が始まる。
 
 戦争と平和は対義語であるはずだが、あたかも性別や肌の色と同じ”同権”であり、同じ方向を共に歩んでいくかのような状態に矛盾を感じることがある。やっかいなことは、戦争よりもむしろ平和なのかもしれない。平和は目に見えない。しかし戦争は悲惨な状態を直視することになるし、これまでも歴史がそれを語ってきた。目にすることのできない平和を”人質”にして、戦争を擁護することはあってはならない。
 
 根底にある意識の問題である。人の生きる道を模索し、相手を尊重し、自分をどれだけ犠牲にできるかということに、人の価値というのは見出すことができるはずである。「戦争」と「平和」は反意語であり同義語にはなり得ない、そういう考えを訴え続けることが、目に見える平和を生み出すことを信じてやまない。
 
 
 
※ 読者のみなさま、今年もお読みいただきありがとうございました。よいお年をお迎えください。
 
 
 Nono
 
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★ オバマ氏へのノーベル賞授賞 大統領支持層からも批判(産経新聞・09/10/14)
 
 

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鳩山総理、辞任を否定 あきれた緊急会見

 「そうならないように最善を尽くしていく」。鳩山由紀夫首相は偽装献金問題について緊急記者会見を都内で行い、記者が「国民の辞任に対する声が高まったら辞めるのか」という問いに対しての回答である。与党最高責任者と小沢幹事長の秘書の問題として捜査がされていることに対しては「率直に申し訳ないと思う」とし、「国民の声に応えるべく政権運営をしていく」と述べた。献金された金についての使途は「正確には分からない(弁護士)」などとした。 
 
 東京地検特捜部は24日、偽装献金事件について、元公設秘第1秘書、勝場啓二氏(59)を約4億100万円の政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で在宅起訴した。会計責任者の芳賀大輔・元政策秘書(55)を同法違反(重過失による虚偽記載)罪で略式起訴。首相本人は嫌疑不十分で不起訴処分とした。
 
 この捜査結果を受けての記者会見となったが、母親からの12億6千万円の資金提供を贈与と認め、贈与税約6億円を納めることを明らかにした。「私腹を肥やしたり不正な利得を得たということは一切無い」とした首相。野党時代には「秘書の犯罪は政治家の責任」と厳しく追及してきたのにもかかわらず、「政治家としての使命を果たすことが私の責任」と辞任は否定した。
 
 政治家というのはどうして回りくどい説明が好きなのであろうか。イエスかノーか、10分で終わる内容を3倍の時間をかけて話をする。きれいな文言を並べ立て、クリーンなイメージを守ろうとするも、この会見で納得することはできなかった。億単位の金の使い道についても「具体的には分からない」とする一般市民との感覚が乖離している。この首相に国民の暮らしや経済を直視し、語ることはできるのだろうか。
 
 党のトップと幹事長に捜査の手が及んでいることに、どれだけの国民が納得しているのか。「額が額なので、国民の皆さんも納得していただけないのかもしれない」と述べた鳩山首相。疑惑が出た時点で潔い決断をすべきなのである。政治家の説明責任は必要ではない。必要なのは行動責任である。良くも悪くも結果論こそが政治家の全てである。
 
 
☆ 身をもって示すことがリーダーシップである。(Albert Schweitzer)
 
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★ 捜査に全面的に協力 首相発言(1)(読売新聞・09/12/24)
  
 

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「事業仕分け人」対 官僚の攻防戦

 
 簿記について明るくはないが、仕訳作業の中に売掛金という勘定科目がある。いわゆる「ツケ払い」のことだ。目に見える収入ではないが、将来に入ってくるかもしれない収入として売り上げ計上される。
 
 事業仕分け人と官僚の攻防が終わった。侃侃諤諤の議論には賛否がある。スーパーコンピュータの予算削減には科学者たちが異議を唱えた。仕分け人の「1位じゃなくて2位じゃダメなんですか?」には閉口した。競争社会、とりわけ、技術立国の日本がわざわざ2位に甘んじることのほうが難しい。科学分野はすぐに答えの出るものばかりではない。研究成果が出るのは先のことだ。英語ノートの廃止についても文科省の担当者は「深い議論の末に決まったことを、たったの60分でカットしてしまうとは」と憤った。
 
 しかし「予算は必要」と言うべき側の「プレゼンテーション能力の欠如」が指摘されている。矢継ぎ早に質問する仕分け人相手に即答できないのはプレゼン能力だけの問題ではなく、コスト意識が低いからだ。職員にコストに関する危機意識がないから質問に対して即答できない。
 
 例えば民間であれば、売り上げが前月比で1割落ちれば経営者は策を練る。商店主であれば、店先で声を張り上げるであろう。公務に携わる人は不況であろうと何であろうと、とりあえず倒産の心配はない。納税が国民の義務とはいえ、「ぜひ、納税を」と街で声をからす人はいない。退職金を自主的に辞退する自治体の長は少数だ。毎年、会計検査院から省庁に対して無駄遣いに対して是正勧告がなされても、国民には一言、「税金を上げます」の施策ばかりに思えてならない。
 
 今回の事業仕分けでは、予算削減された側の怒りも当然だが、無駄の削減をガラス張りにしたことには一定の評価がある。しかし、教育やスポーツ、科学などの分野はすぐに答えの出せるものばかりではないのである。そうしたものに対しては売掛金、すなわちツケ払いとして予算計上してほしかった。
 
 そのプレゼン能力の無かった側の敗北だが、無駄だからカットするだけではなく、もったいないからとっておく、という予算編成もお願いしたい。売掛金が回収できないときは、帳簿にマイナス収支となるが、教育や科学の分野ではそれをマイナスとは言わない。未来への投資は、売掛金以上のプラスの要素を回収できることもあるからである。 
 
 
☆ 日本の損失、そして我が社の損失、非常に残念です。(出典不明・仕事を辞める時、職場の上司からのこのひとこと)
 
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オバマ大統領「低姿勢すぎ」と酷評の米メディア きれいなお辞儀なのに

 飲食業や販売をする接客業などでは、お辞儀の練習から始まると言っても過言ではない。「会釈」がだいたい15度ほど上体を前に傾ける。敬礼が30度、「ありがとうございました」「誠に申し訳ございません」の最敬礼が45度くらいだが、場合によっては90度になることもある。会釈もタイミングが難しい。いつも頭を下げてばかりでは会話や場の雰囲気に余計な時間を作ってしまう。会釈が汚い人というのは、視線も相応に下げていないためである。相手を見ながら敬礼をしたら失礼である。
 
 来日していたオバマ大統領が天皇皇后両陛下の前で行った”最敬礼”が米国内で波紋を呼んでいるという。「低姿勢すぎる」「米国大統領として不適切」「ペコペコ頭を下げた」「日本人受けすると考えた」と、米メディアからは酷評が並ぶ。言論の自由が、首長の表現の自由にケチをつけた。
 
 何が問題なのかが分からないが、「郷に入れば郷に従え」の例えで、オバマ大統領はそれを忠実に成し遂げただけのことだ。日本人が会釈や敬礼、そして最敬礼をすることもよく知ってのことだろう。そんな大統領に敬意すら感じる。
 
 会釈や敬礼がきれいな人というのは決まっている。それは胸を張る姿もきれいなのである。オバマ大統領の演説は英語出版関係者によると垂涎ものであるという。それは説得力のある話し方、英語の言葉の選び方、そして堂々と語るあの姿勢。どれをとっても一流なのだという。そうした人には威厳を感じるし、威厳のある人が敬礼する姿というのはみっともないどころか、メリハリのある堂々とした社交マナーである。
 
 日本の大手企業・組織のトップが会見で頭を下げることが多くなった。それもほとんど最敬礼である。これから組織のトップになる人はお辞儀をマスターすることが必要になるようだ。お辞儀の仕方が分からなかったら、アルバイトに聞けばよい。
 
 
☆ マナーというものは、ソースをテーブルクロスにこぼさないことではなく、誰か別の人がこぼしても気づかぬふりをしているところにある(チェーホフ)
 
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★ 「低姿勢すぎる」オバマ氏の天皇へのお辞儀に批判(イザ!・09/11/16)
 
 
 

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「羽田も成田も有効に併用」羽田ハブ発言で前原国交相

 前原国交相は千葉県の森田健作知事と20分間会談した。その中で「成田の機能を全て羽田に移すということではなく、成田は国際線、羽田は国内線という原則は変わらない」とした。森田県知事は「地方をあんまりいじめないでよ」と笑った上で、「真意を聞いてほっとした」としている。
 
 前原国交相は「両空港を一体にとらえ、合理的なすみ分けをする。成田が国際線専用であることは変わらない。ただ、羽田が新しい滑走路が出来ることもあり、成田で夜間の離着陸が出来ない分を羽田に回すことになる。現在830万人の外国からの観光客を2020年に2000万人に増やすために、羽田の受け入れ体制を強化する。関空や中部国際空港を衰退させることは全く考えていない。これまで日本にはハブ空港がなかった。その役割を羽田に託し、日本の航空産業の活性化につなげたい」とした。
 
 具体的な役割分担は今後詰めて協議する。
 
 ハブ空港とは、国内線や国際線の乗り入れが中心的になるもので、自動車の軸の部品であるハブからその名前が来ている。羽田が国際化することで、成田、中部、関西の各国際空港がなおざりになるのではないかという懸念から、空港関係者や自治体からは反発の声が上がっていた。その一方で、東京都の石原知事や神奈川県の松沢知事は賛成の意を表明していた。
 
 石原都知事は「羽田に国際競争力を付けることが、東京のみならず日本の国際力の強化につながる」と述べた。
 
 
☆ 宇宙時代には、人間は二時間で世界一周できるようになるだろう。飛行に費やす時間が一時間、空港に到着するまでに一時間(ネイル・H・マクエルロイ)
 
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★ 中部空港抱え戸惑う愛知 前原国交相の羽田国際ハブ空港発言に(産経新聞・09/10/13)
 
 

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景気悪化で緊急雇用対策本部設置 政府が今月にも(2009.10.5)

 今年の春に大卒で就職した友人の子からメールがあった。「なんか、最初思っていた業務内容と違っていて仕事やめたいよ」。「だめだよ。今やめたら就職できないよ。入社して半年じゃ何も分からないから、3年は続けてみては?その中で自分の好きな事を見つけたらいいよ」と、こんなやりとりをした。
 
 8月の失業率は5.5%であり、労働人口のうち20人に1人が失業状態である。有効求人倍率は0.42倍という状況で、これは100人中42人しか就職できないという数字だ。大人の就職状況もさることながら、来春卒業する高校生や大学生で就職先が決まっていない若者が多いことが問題だ。
 
 政府は最悪の雇用情勢となっていることを受けて、管国家戦略相と長妻厚労相が今月にも緊急の雇用対策をまとめることとした。管国家戦略相は「年末、新年度の雇用情勢が非常に心配だ。何らかの雇用対策が必要」と述べ、鳩山首相は首相官邸で「いずれかの時点で、雇用対策本部的なものを立ち上げる必要がある」と述べた。緊急対策のみならず、長期的な雇用対策にも取り組み、人手不足となっている介護分野での雇用促進策などが検討される。
 
 今年就職活動をしている大学生の子のブログでは、夏休みまでは就職活動の事がよく書かれていた。しかし最近の日記では「遊びに行った☆」「○○で△△を食べた〜♪」と、就職に関する記述が全く出なくなってしまった。「○○おいしいよね☆あそこは高いだけあって味は最高においしいよ」。そんなコメントを書くことで慰めるしかなかった。就職決まったら、○○に食べに行こう。きっと格別の味になるから。
 
 鳩山首相は3日、障碍者主役のファッションショーに出演、赤いジャケットに身を包んでステージでポーズを決めた。報道陣に「ファッションのポイントは?」と聞かれると「笑顔、笑顔」と言った。
 
 総理、雨に濡れているリクルートスーツに身を包む若者が、笑顔になる対策を早く打ち出してあげてください。この国のステージを国民が謳歌するというのは、未来を担う若者の存在あってのことですから。
 
 
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★ 「雇用対策は必要に応じて実施」管戦略相と長妻厚労相が確認(産経新聞・09/10/5)
★ 鳩山首相夫妻がサプライズ出演 障害者主役のファッションショー(産経新聞・09/10/3)
 

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中川元財務相死去 突然の訃報に関係者は

 4日午前8時20分ごろ、東京都世田谷区の中川昭一元財務相宅から119番通報があった。救急隊が駆けつけると中川氏が倒れており、午前8時27分に死亡を確認した。56歳だった。警視庁世田谷署では遺書や検視による目立った外傷は見当たらないことから事件性はないものとみている。家族の同意を得て行政解剖をしたが死因は分からず、病理検査を実施して詳しい死因を調べる。
 
 中川氏の妻(50)によると、朝になって起きてこないことを不審に思い2階の寝室に行ったところ、ポロシャツと短パン姿で冷たくなっているのを発見した。自殺をうかがわせる形跡はなかった。吐血はないものの、若干の吐しゃ物がベッドの上で確認されており、室内の机の上には処方薬が大量に残されていた。最近「眠れない」と話しており、処方された睡眠薬を飲んでいた。妻は3日午前10時ごろ、娘は同正午ごろに中川氏が寝ているのを見たという。
 
 鳩山由紀夫首相は中川氏の訃報を聞いて「突然のことで大変驚きました。ご遺族に対して深くお悔やみ申し上げ、心からのご冥福をお祈りいたします。同じ北海道の国会議員として大変残念です」。
 
 麻生太郎前首相「自民党の再建に向け、次の世代をになう大事な人材だった。衆院選の結果を厳粛に受け止めて再起を期すことを期待していた。今は言葉にならないくらいにショックを受けている」。
 
 谷垣禎一・自民党総裁「今まで体調が十分でないところがあったのを、努めて公務に督励されていた。心配していたが、こんな知らせを聞くとは思っていなかった。有能なかたで、まだこれから日本の政治にも中川さんの力を発揮して頂かなくてはならない局面が必ずあったはずだ。ご冥福をお祈りしたい」とし、さらに「私は当選年次が近く、(麻布)中高の同窓だ。中川さんが当選されたころから仕事だけでなく、個人的にも一緒してきた」。
 
 町村信孝・元官房長官「驚きの一言に尽きる。信じられない」。
 
 みんなの党・渡辺喜美代表「昭一さんのお父さん(中川一郎元農水相)が亡くなられたのが、まだ60歳になる前だったと思う。本当に早い死で残念でならない」。
 
 昭一氏の父、一郎氏の秘書を務めた新党大地の鈴木宗男代表「親子2代の悲報。あまりにも短い人生だった。巡り合わせというか、言葉で表しようがない。一段落したら激励会でもしてやろうと思っていた矢先だった。こういう別れかたをするのなら、話すことがたくさんあった」。
 
 中川氏の父、一郎氏も57歳の若さで亡くなっている。あまりに早すぎる死。酒のトラブルがたびたび指摘されていたが、誰にでもミスはある。要はどう名誉挽回していくかにかかっている。政治家としてのみならず、人として人生まだこれからであった。
 
 関係者が弔問に訪れてインタビューに応じているが、涙する人が多かった。政治家の訃報でこうした光景を見るのはあまりないことだ。中川さんの人柄を表しているのだろう。中川昭一さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
 
★ 中川昭一元財務相が死亡 自宅ベッドで、妻が発見 外傷無し、東京・世田谷(時事通信・09/10/4)
 
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日本人、4人に1人は65歳以上 積極的長寿の促進を

 総務省の人口推計の発表で、65歳以上の人口は2898万人、総人口に占める割合は22.7%と過去最高となった。このうち女性は人口の25.4%(1659万人)、男性は19.9%(1239万人)となり、女性の4人に1人、男性の5人に1人が該当する数字となった。
 
 世帯主が65歳以上で無職の世帯の1ヶ月平均消費支出が約20万6千円。これに対して可処分所得は16万4千円となり、4万2千円足りない。不足分は00年の2万円と比べて倍増している。要因は税金と社会保険料の増加だといい、同省によると「不足分は預貯金などの金融資産の取り崩しなどで賄われている」という。
 
 少子高齢化が本格的に始まった、そんな報道を見聞きするたびに思う。少子化は未来が先細りする問題ではあるが、高齢化そのものは悪いことではない。日本人の長寿化は世界に誇ることのできる話である。問題なのは、社会から疎遠となっていくリタイア世代に対する社会保障の不備にある。
 
 医療崩壊も叫ばれるなか、自治体によってはプールや体操などのリハビリ施設に定期的に参加してもらうことで、多くのリタイヤ世代が元気な町もある。病気や病院ありきの議論ではなく、子供や働き盛りの世代にも通用するような、健康促進プログラムを考える必要がある。
 

 加齢による関節や腰の痛みなどを改善すべく、プール内での運動を行っている施設が愛媛県宇和島市にある「アクアクリニック別当」である。通院患者の8割がひざや腰の痛みと生活習慣病を抱える高齢者で、プールを目的に通っている。筋力や脚力を鍛えることで「寝たきりにならない、介護を必要としない晩年」が目標だ。
 
 院長の釜池豊秋院長は「体操の個々の動きには医学的な裏付けがある。水の負荷で運動する人の力に合わせ、無理なく筋肉を鍛えることができる。ほとんどの腰痛やひざの痛みは筋肉を鍛えれば治る」と強調する。 
 
 同市内の70代の女性は変形性関節症。毎日通院して水中体操をしてきた。「今はほぼ痛みが消え、最高血圧は160から130に下がり、体重も3キロ減った」と喜ぶ。プールから出てきた80代の女性も、神経痛のために杖が必要だが、「運動した後は心地よくて生きる元気がわいてきます」と語る。(99.8.21・読売新聞東京朝刊)

 
 こうした水中療法や温泉療法が効果的であることは医学者の間では知られているが、実際に病院がプールまで用意するとなると経営的に難しい。ゆえに、自治体が持っているプール・温泉施設を積極活用することで、医療費の削減、医療機関の負担軽減、ひいてはリタイヤ世代の長寿につながる。病気になる前の予防を施すことが先決なのである。
 
 つなげて話をするのはおかしいかも知れないが、テニスのクルム伊達公子選手が韓国オープンを制した。スタンドの韓国人観客からは大きな拍手と歓声が送られたとのことである。ソウルに住む韓国人主婦(32)は「40歳近くというのに本当に凄い闘志。あんな力がどこからわいてくるのだろう。ファンになった」と嬉しそうに話した。
 
 復活してからあれよあれよという間に登りつめていくクルム伊達公子だが、どうしても年齢のことに絡めて報じられてしまうのは失礼だと思いつつも、やっぱり凄いことである。一度引退したのにもかかわらず、自分より年下の選手を次々に倒していった。クルム伊達は昨年、「負けず嫌いにブランクはなかった」と述べている。13年前に引退したクルム伊達の活躍は、何か勇気づけてくれるものを感じる。それは”アラフォー”だから凄いのではなくて、リタイアしてから堂々と復活し続けていく姿勢に目を見張るのである。
 
 若いときに華のある時期を送ることができるのは当たり前。そのあと社会が手を差し伸べれば、リタイアした方たちがまだまだ復活し続けるのは決して夢物語ではない。せっかく政権が交代したのだから政府には思い切った改革を望む。手を差しのばせる余裕のある国であるべきだ。
 
  
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★ 女性高齢者の割合、始めて25%超す 男性は5人に1人(朝日新聞・09/9/21)
★ 【テニス】年齢に負けない伊達 韓国人観客から拍手と歓声(産経新聞・09/9/27)
 
 
 

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