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婚外子差別規定は憲法違反 裁判官14人全員一致で最高裁決定 115年間続いた民法改正へ

 結婚していない男女の間に生まれた子供(婚外子)への遺産相続分を巡り、結婚した夫婦のこの半分しか相続できない民法の規定が「法の下の平等」を保証した憲法に違反するか否か。最高裁判所大法廷は14人の裁判官の全員一致で「憲法違反」と決定を下した。
 
 裁判長の竹崎博允長官は、「家族形態の多様化や国民意識の変化などを考慮すると、親が結婚していないという選択の余地がない理由で子に不利益を及ぼすことは許されない」と判断を示した。
 
 これまでこの種の訴訟では憲法違反ではないとされてきたが、時代の変化に反応した最高裁決定なのだろう。時代の変化に法律が追いつくのは後になることが多い。守るべき判例法やその時の考え方が「差別ではなく合憲」としてきたに違いない。
 
 今回の決定を歓迎する声がある一方で、「家族の絆が壊れる」という声もある。しかし家族の絆とは本来法令が整備することではない。明文化できないのが人と人とのつながりである。
 
 大阪市内で一人息子(4)を育てる会社員の西崎麻衣さんは未婚の母。母子世帯向けの「寡婦控除」にも納得できないという。夫と離別などで子供を一人で養う女性が対象で、婚姻歴のない西崎さんには適用されない。控除のない分、年間74000円ほどの税負担を強いられる。
 
 西崎さんは「それほど悪いことをしたのか。ペナルティとしか思えない」と語る。西崎さんが心配するのは一人息子が成人したとき。「自分を否定し、責めることをすると思う。そんな思いだけはさせたくない」と声を詰まらせた。
 
 今回の決定により、民法規定を改正する必要があり、谷垣法相は「できるだけ早く法整備に着手する」と述べた。
 
 法律を作るのも運用するのも人間である。何のための法律かといえば、人が平穏に過ごすためのものである。「子供は親を選べない」と、今回最高裁が下した決定は、子供の福祉を優先的に考慮した画期的なものであった。
  
 
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※ 法律的には「非嫡出子」であるが、差別的な響きがあるため「婚外子」が広く認められている。
 
★ 婚外子相続格差は違憲「家族形態は多様化」 民法規定巡り初判断・最高裁大法廷(時事通信・13/9/4)
★ 婚外子「ペナルティ?」 相続格差以外にも差別(毎日新聞・13/9/4)
 
★ BABY A:BABY B(本ブログ・06/10/1)
 
 

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【グーグルサジェスト機能】表示の削除認めず 東京地裁 採用側に問題はないのか

  
 自分の名前を検索すると、犯罪を想起させる語句が自動的に表示され、名誉を傷つけられたとして、東京都内の男性が米グーグル本社と日本法人に表示の削除と慰謝料200万円の支払いを求めていた訴訟の判決が東京地裁であった。
 
 30日、東京地裁の本田知成裁判長は請求を棄却した。同様の訴訟で、東京地裁の別の裁判長が4月に表示の差し止めを命じており、判断が分かれる形となった。
 
 グーグル側は「語句の組み合わせだけでは何の事実も示さず、名誉を毀損しない」と反論していた。判決では、「検索結果自体から、サイトの内容が名誉やプライバシーを侵害し、社会通念上容認できないものか一見して明らかとは言えない」とした。つまり、検索結果そのものは男性の名誉等を侵害するのかはっきりしない、というわけだ。
 
 4月の東京地裁の判決では「名誉毀損に当たる投稿を見る人がおり、放置すれば権利侵害が拡大する」として表示の差し止めを命じた。二つの訴訟は今後、東京高裁で審理される。
 
 インターネットの検索が便利なのは、機械的であれ、統計的に多く検索される語句を表示してくれるため、自分の知りたい情報にたどり着けることである。
 
 しかし、その反面、悪意を持ったサイトと何ら関係の無い人の名前が関連づけられる可能性は十分ある。
 
 本来、名誉を傷つけたサイト運営者や投稿者が刑事、民事で訴えられる案件かもしれないが、原告の男性側はその”元”となる検索サービスを提供するグーグルを訴えた。複数のサイト運営者を訴えるのはあまりに途方に暮れる作業であるし、そのサーバーが海外にあると対応はほとんど困難である。
 
 一度広がってしまった誤情報を訂正するのは容易ではない。個人情報の保護が強く主張されているのも、人の知らないところで悪用される危険があるからだ。
 
 原告の男性は就職活動などで不利益を被ったと主張している。であるならば、機械的に発生した語句等で現れた無責任なサイトの価値判断を誤った、企業の採用側に問題があるのではないだろうか。就職活動は人の人生を左右する。企業は誤った人的評価をした根拠を明確にすべきである。
 
 
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★ グーグル訴訟:「検索」予測表示の削除認めず 東京地裁(毎日新聞・13/5/30)
★ グーグルのサジェスト機能画面で名誉毀損 グーグル側に賠償命令 東京地裁(本ブログ・13/4/19)
 
 

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ネットでの書き込み信用性は? 食べログで客激減 飲食店が提訴

 ネットで母親に贈るチーズケーキを探した。何しろチーズケーキ大好きな母である。とはいうものの、ネットで食べ物を探すというのは冒険である。とりあえず見つけてみたが、口コミのレビューがあまりよくなかった。「小さい」「高い」というものばかりで不安であったがとりあえず購入した。
 
 飲食店の口コミ情報などを載せているサイト「食べログ」に、事実に反する内容が投稿され、客が激減したとして、札幌の飲食店経営会社が同サイトを運営する「カカクコム」(東京都)に対して、情報の削除と損害賠償220万円を求めて札幌地裁に提訴した。
 
 同社は食べログに店の情報を登録したが、「出てくるのが遅い」「まずい」などの投稿が掲載され、メールでカカクコムに削除を要求。しかしカカクコム側は「内容に違法性がないので削除には応じられない」と拒否した。
 
 人の感覚、主観というのは十人十色だ。だから参考にするにしても、絶対的ではない事を承知するべきである。逆に良い評判しか書いていないのも勘ぐりたくなる。ネットは気軽に投稿できるのがよい反面、それを鵜呑みにしてしまう人たちがいる危険も考えなくてはいけない。
 
 違法な書き込みならともかく、「まずい」という程度では書き込み自体に違法性がないのは明白だ。しかし、それが営業に直接結びつく可能性のあるものであれば、それを放置したサイト側は営業妨害、つまり偽計業務妨害罪に問われる可能性がある。「書き込みによって業務を妨害された」というのは、「学校に爆弾を仕掛けた」といった内容に似ている。今回提訴した会社は民事訴訟による損害賠償請求であるが、刑事罰を求めたとしたら、カカクコム側はどう対応するのであろう。
 
 母に贈ったチーズケーキ。母から電話があった。「ありがとう。あれ、ご近所にも分けてあげたら『どこで買ったの?』と言われるくらいおいしかった。悪いけどもう一度送ってくれる?」と感激した様子であった。あれだけ感激されると贈った方もうれしい。
 
 再度贈ったついでに自分でも食べてみた。器は素っ気のないアルミの器であったが、確かにおいしかった。至福の時間を口に頬張りながら思ったことは一つ。ネットの情報は自分で確かめなければ当てにならない、ということだった。
 
 
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★ 第三十五章 信用および業務に対する罪(刑法・政府の電子窓口)
★ デマを流す人、信じる人(11/5/27)
★ 「特定は可能」入試ネット流出、偽計業務妨害容疑で京都府警が捜査へ(11/2/28)
★ 食べログ:「投稿で客激減、削除を」 札幌の飲食店が提訴(毎日新聞・13/5/9)
 
 

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グーグルのサジェスト機能画面で名誉毀損 グーグル側に賠償命令 東京地裁

 
 グーグルのサジェスト(提案)機能で出た文字列が、男性を犯罪に加担したような印象を抱かせたとして、東京地裁が米グーグル本社に賠償命令を出した。男性は犯罪とは無縁だったが、就職活動で不利な扱いを受けたという。
 
 同機能を使って男性の名前を入力すると、犯罪を思い起こされるような単語が並び、関連サイトには男性を誹謗中傷する内容が記されているという。
 
 グーグル側は「機械的に出た文字列に責任はない」などと反論したが、判決では男性への名誉毀損を判断した。日本の司法判決が本社のある海外には直接及ばないため、グーグル側の誠意に期待するしかない状況だ。
 
 ネット上の情報はその信憑性については慎重な判断が求められる。情報が嘘の場合も多くあり、悪意の書き込みも散見できる。従って、サジェスト機能で出された文字列だけで男性の就活に不利益をもたらした企業側も、情報を吟味すべきだった。訳の分からない情報で他人の人格を決めつけてよいわけがない。
 
 その一方、ネットに根拠のない文言を掲載する側も問題である。そうした悪質サイトの存在もさることながら、グーグルのサジェスト機能画面も無責任に作られたサイトと同じ役割を担ってしまった。
 
 ネット上の人権侵害が問題になる中で、検索サイトも個人の情報に慎重にならなければいけないということを判断した地裁判決は画期的である。
 
 ネットは自動的に情報処理できる利便性があるぶん、こうした問題発生が容易だ。自動的に作られたブログも存在し、情報源がはっきりしない場合は情報として扱わない心構えが重要である。
 
 人の評判を誰かに伝えるとき、真実と誠意をサジェストするようにしていますか。
  
 
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★ スマイリーキクチさんのブログ「炎上」させた18人を名誉毀損で検挙へ(本ブログ・09/2/5)
★ 自分の名前をグーグルに 犯罪想起の単語 判決は(読売新聞・13/4/16)

 
 

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警察通訳官が取り調べ体験 滋賀県警 法曹界で重責を担う通訳者

 外国人事件を捜査する警察通訳官の研修会が2日に滋賀県警本部であった。大津市内で外国人による強盗傷害事件を取り調べる想定。民間通訳者4人が容疑者役となり、警察通訳官が取調官と通訳官役に別れて行われた。
 
 通訳官は辞書を使い、容疑者の供述を忠実に通訳をし、民間通訳者の指導を受けながらこなした。滋賀県警の通訳官制度は95年に創設され、現在は8言語に対応できる警部補以下41人が登録している。
 
 警察官が自ら通訳も担当するのが警察通訳官である。呼称に差はあるかもしれないが、警視庁の場合かつては中国語や韓国語、タガログ語に堪能な人材を警部補採用で募集していたが、本稿執筆時には採用はなく、現在は科学捜査官、財務捜査官、サイバー捜査官を募集していた。前職で専門技術を身につけている人であれば、積極的に採用したいところなのだろう。
 
 法曹関係の通訳だと民間のフリーランスの通訳者に依存することになる。警察の取り調べで外部の通訳が必要な場合、登録されている通訳が派遣される。その後、弁護士接見時にも通訳が必要なこともある。さらに裁判では法廷通訳人が必要とされる。
 
 当然のことながら、取り調べや法廷でのやりとりはその流れや専門用語を理解しなくてはならない。守秘義務もあることから誤訳をせずに業務を遂行しなくてはならない大変な仕事だ。
 
 日本はこうしたあらゆる国の言語に対応した通訳が多いのではないだろうか。英語は勿論、中国、韓国、タイ、タガログ、ロシア、インドネシアなどの言語もさることながら、マイナー言語にも対応できる存在が少なからずいる。こうした人たちの存在は貴重である。
 
 しかし一般的に法曹関係の通訳報酬は安いとされる。時間あたり、または1日数千円から1万円くらいほどとされる。定期的に仕事があるわけでもないので、これだけで生計を立てるのは難しそうだ。
 
 通常の通訳も、事前に資料を用意して準備が欠かせない。通訳者である関谷英里子氏は「好奇心と勉強好きでなければ務まらない」とテレビで語っていた。大変な割にはあまり認知度が低く、報酬もずば抜けて高いわけではない。自分から仕事を取ってこなければ安定した収入も見込めない。
 
 警察通訳官であれば身分は警察官であるので、通常の業務をこなしながら通訳が必要な時に出番となる。それ以外の民間通訳は不規則な拘束時間と不安定な収入がネックである。被告人の人生を左右することになるのだから、それなりの地位の確立が求められる。
 
 警察の通訳や法廷通訳人は、各都道府県警察本部や裁判所で不定期にて募集が行われる。興味のある人は調べてみてはいかがであろう。
 
 
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★ 県警の通訳官が取り調べ体験(中日新聞・12/11/3)
 
 

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PTSDは傷害 女性4人監禁の被告に懲役14年 最高裁初判断

 監禁した4人の女性を「家畜」などとよび、「しつけ」と称して暴行・監禁していた男の上告審が最高裁第二小法廷であり、被告の上告を棄却した。懲役14年の1、2審判決が確定する。
 
 被告は03年から04年にかけて、自宅があった青森県のホテルや都内のマンションなどで女性を監禁、首輪などを付けて暴力行為を加えるなどしたが、後に警察に逮捕された。女性は監禁中にPTSD(Post Traumatic Stress Disorder=心的外傷後ストレス障害)になった。
 
 裁判では「監禁や暴行により、一時的な精神的苦痛にとどまらず医学的な診断基準で求められる特徴的な精神症状が継続して表れている。このような精神的機能の障害を引き起こした場合も刑法の傷害に当たる」とし、PTSDを負わせた場合も刑法の傷害罪が成立するという初判断を示した。
 
 似たような例としては05年に奈良県で、大音量で音楽を流すなどして近所の住民を睡眠障害、耳鳴りなどの被害をおわせ、ストレスを与えた主婦が奈良県警に傷害罪で逮捕され、後に最高裁で傷害罪が確定している。
 
 目に見える形での傷ではないために、こうした加害行為を傷害罪で裁くのは容易ではなかった。しかし、PTSDにしろ、睡眠障害にしろ、心療内科や精神科の敷居が低くなった今となっては、因果関係を追跡することは難しくなくなった。
 
 心に傷を負わすのは陰湿な嫌がらせ、というだけではなく、犯罪として認められたという点で、今回の最高裁判断は加害者を処罰する一つの指針だ。被害を受けた人は、そのときの状況などを忘れないように記録しておくのも一つの手段である。
 
 監禁行為は人の自由を奪うという点で卑劣である。監禁されている間、被害者はいつ自由になるのか分からない不安定な精神状態に陥る。その恐怖は計り知れず、こうした蛮行は厳罰に処されるという法本来の在り方が示される結果となった。
 
 
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★ 「PTSDも傷害」初判断、4女性監禁 被告の懲役14年確定へ 最高裁(産経新聞・12/7/25)
★ 連続女性監禁:PTSDで傷害罪成立 最高裁が初判断(毎日新聞・12/7/25)
 
 

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闇サイト殺人最後の被告無期確定 1人死刑、2人無期 最高裁決定 浮かばれない被害者

 07年、男3人が派遣社員の女性(当時31歳、名古屋市千種区)を拉致、殺害した事件の上告審で、最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は、強盗殺人などの罪に問われた堀慶末(ほり・よしとも)被告(37)への死刑を求めた検察側の上告を棄却する決定を出した。1審死刑を破棄して無期懲役に減刑した二審判決が確定する。
 
 裁判では、神田司死刑囚(41)は死刑、自首したK受刑者(45)は無期懲役が確定している。1人が死刑、2人が無期懲役という判決が確定することになる。
 
 裁判長は、「動機に酌量の余地はなく、刑事責任は重大だ」、「被害者が1人で、死刑がやむを得ないほどの他の量刑要素が悪質といえないとした二審の判断に誤りはない」とした。
 
 前にも書いたが、犯行の態様が悪質であれば、被害者の人数や負傷の程度を加害者の量刑のために判断すべきなのかは疑問の生じるところである。刑事裁判というのは、あくまでも被告人に対する刑事罰のみを裁く場であり、被害者の受けた屈辱や恐怖をくみ取るとは言い難い場所であるところを改めて思い知らされた。
 
 被害者は、たまたま被告たちの前を通り過ぎるはずの存在であっただけである。亡くなった人に対して、赤の他人は味方になることができないのであろうか。
 
 人を死に至らしめる行為というのは沢山ある。車の運転を誤って事故で他人を死なせる、業務上過失致死、危険運転致死罪。「しつけ」と称して殺すつもりはなかったが、結果として子供を死なせてしまった傷害致死罪。直接的な殺人行為ではないものの、人に対して「じゃれあい」と称して暴力行為を働いて、自殺に至らせる虐待行為。
 
 何ら落ち度のなかった、こうした人たちにこの声は届くであろうか。
 
 亡くなった後でしか味方になれなくて申し訳なく思う。同情も後から、悪漢たちを非難するのも後から。身をもって教えてくれた皆さんの声なき声を、届く声として発言して行動しなくてはならない。空に向かってみなさんを想うことがこれから私たちに与えられた使命である。
 
 この事件の被害者となった女性のご冥福を改めてお祈りいたします。
 
 
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★ 名古屋闇サイト殺人 堀被告の無期確定へ(日テレNEWS24・12/7/13)
★ 堀被告の無期懲役確定へ 名古屋闇サイト事件(産経新聞・12/7/13)
 
★ 闇サイト殺人、3被告に死刑求刑 名古屋(本ブログ・09/1/20) 
★ 広島女児殺害事件 被告に無期判決(06/7/5)
 
 

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道仁会と住民を対峙させ、報復の恐れを認めない裁判所 福岡地裁久留米支部(2012.4.22)

 福岡県久留米市を本拠地とする指定暴力団、道仁会旧本部事務所立ち退き訴訟で、福岡地裁久留米支部(有吉一郎裁判長)が、道仁会関係者が傍聴に訪れる可能性があるにもかかわらず、住民側に被害状況を陳述させる事態になっている。住民側は報復を恐れ、対面しない形での陳述を求めたが同支部が認めなかった。
 
 住民側弁護団によると、抗争に巻き込まれる可能性があるとして、住民側の本陣尋問は必要ないと主張したが、裁判長がどのように生活に支障を来しているかを求めた。別室から陳述する「ビデオリンク方式」や、証言台につい立てを置くように求めたが、裁判長は理由を説明せずに認めなかった。今回出廷する住民は「怖いがやるしかない」と話し、弁護団は「今度同種訴訟の影響を考えても住民を法廷に立たせたくなかった」と話す。
 
 福岡県は今、暴力団による事件が頻発している。北九州市では福岡県警で暴力団捜査をしていた元警部が銃撃されて重傷を負う事件が起きたばかり。また、建設会社役員は射殺されている。官民挙げて暴力団追放の気運を高めなくてはならない時に、この裁判長の判断は正しいものか。万一、この意見陳述がきっかけで住民に危害が及んだ時に裁判所はどう責任を取るつもりか。
 
 暴力団対策は警察による捜査もさることながら、地域が一体となって締め出しにかからなければ成功しない。法曹関係者が反社会性力である指定暴力団に有利になるような判断をしてはならないのである。
 
 元警部狙撃事件では、事件発生前に容疑者と思われる男が、近くにいた男性に暴行を加える事件が起きていたことが分かった。この事件に対して、国家公安委員長が現場に視察に訪れたことも異例のことだ。昨年には警察庁長官も現地を訪れて捜査員を激励した。
 
 元警部狙撃事件の早期解決が求められるが、それと同時に住民が被害に遭わないように必要な措置を講ずるのは警察だけの仕事ではないはずである。
 
 
 
★ 報復恐れる住民を組幹部と直面させる裁判所(読売新聞・12/4/22)
★ 元警部宅付近、工藤会組員を数回職務質問 小倉の銃撃(朝日新聞・12/4/20)
★ 松原国家公安委員長が現場視察 北九州の元警官銃撃事件(朝日新聞・12/4/21)
 

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