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漢検前理事長ら背任容疑 京都地検捜査

 公益法人であるにもかかわらず「儲けすぎ」との批判を受けており、多額の金がファミリー企業に流れていた、財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区)の問題で、京都地検は一連の取引が協会に損害を与え、関係4社から前理事長(73)に多額の利益が流れた疑いがあるとして、背任容疑で捜査を始めた。
 
 関係者によると、前理事長と長男の前副理事長(45)及びその家族計5人が、関連企業4社から昨年度までの3年間に5億3000万円の報酬を得ていた。前理事長は、代表を務める出版会社「オーク」と広告会社「メディアボックス」から年間約7000万円の収入を得ていた。
 
 前副理事長や役員を務める家族3人も、4社から年間3980万〜7110万円の報酬を得ており、08年度までの3年間に一族が得ていた総額は5億2985万円になるという。4社の売上の8割以上が協会との取引によるもので、協会の調査委員会はこうした取引に「合理性がない」「重大な任務違背で責任は重い」とした。
 
 92年以降、協会から関連4社に対して、250億円にのぼる資金が流れており、京都地検はこのうちの一部が刑法の背任罪に当たる可能性もあると見て捜査している。
 
 公益法人である漢検協会は、法人税が非課税であることから必要以上の利益を出してはならないとされている。しかし「儲けすぎ」を文部科学省から指摘されても改善されなかったことから、文科省の立ち入り調査を受けていた。ファミリー企業である「メディアボックス」「文章工学研究所」「オーク」「日本統計事務センター」に流れた金を14億円であると文科省には申告していた。
 問題発覚後3ヶ月経ってからの記者会見では、「関係各位、多くの皆様にご心配をかけて申し訳ございません」と、冒頭で陳謝するも「英検があるなら漢検があっていい」と75年に設立した同協会について、「漢字の普及に社会的貢献をした」と胸を張った。私的流用や私物化についても「そうは思っていない」とした。
 理事長を辞するとしたが、「新理事長をサポートするという気持ちに代わりはない」と影響力の維持を示唆した。記者から「今の気持ちを漢字一文字で言うと?」と聞かれると、前理事長は笑みを浮かべながら「一言というのは難しいんですよ。急に言われても出てきませんな」と述べた。
 
 5年前、京都市左京区に”資料館”の名目で購入した豪邸は6億7000万円。しかし登録上は「住宅用」のままとなっている。資料館に飾られたレーシングカーについて、前副理事長は「くるまへんの漢字は数多く、その普及のため」と言うと記者からは失笑が漏れた。ちなみに「くるまへん」を使う漢字は54字、同じ7画の「ごんべん」を使う漢字は162字である。
 
 92年に財団法人化してから受験者は急増。思えばこの年、「文部省認定」(※)となった第1回の漢検を受験するため、東京・市ヶ谷の法政大学に行った。当時はテレビカメラも取材に来ており、新しい検定試験の注目度の高さがうかがえた。しかしあのときの検定料も、一族の私腹を肥やすためになっていたかと思うと腹立たしい。
 
 年末に清水寺で行われる同協会主催の「今年の漢字」は行われるのであろうか。漢検が漢字の普及に貢献したことは間違いがない。しかし背任となれば、法人としての協会のみならず、英検をしのぐ250万人の受験者の期待にも背くことになるだろう。
 
 
※ 現在は漢検や英検など、文科省の認定制度は廃止されている。
  
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★ 財団法人 日本漢字能力検定協会 
★ 漢検前理事長ら背任の疑い、関連4社と不適切取引 地検捜査(読売新聞・09/4/17)
★ 【漢検】”蓄財”依然40億円超 ファミリー企業所有の本部ビル買い取りへ(産経新聞・09/4/15)
 
 

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