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通訳案内士悲鳴、外国人1万人無料招待が幻に 財務省が予算認めず

 東京電力福島第一原発事故の影響はさまざまなところに波及している。昨年12月5日、通訳案内士(通訳ガイド)の資格を持つ15人が、約2700万円の賠償を東京電力に求めた。日本政府観光局によると、昨年1月〜10月に来日した外国人客は509万人で、昨年比30.5%減少。国の審査会は中間指針で「5月末までのキャンセルによる減収分」が賠償されるとしたが、案内士側は「5月以降もキャンセルされた旅行は多く、限定するのは不適切」と主張する。
 
 フランス語通訳案内士の男性(57)は、11月までにツアーなどの仕事が107日分もキャンセルになった。別のアルバイトも始めた。「日本の安全神話が崩れ、『放射能に汚染された国』に成り下がってしまった。通訳ガイドの存在は風前の灯火だ」と語る。
 
 通訳案内士は国家資格で、日本国内の歴史や地理、産業などの知識を持ち、外国語としては、英語、仏語、スペイン語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語となっている。2011年4月1日現在で15.371人が都道府県に登録している。
 
 そうした専門性が求められることで、ほかの通訳や翻訳とは知識を表に出す方向性が若干異なる。新しい文化や流行にも精通する必要があり、日々知識の習得は欠かせない。こうしたことから外国人観光客があっての仕事であり、今回の事故風評被害は死活問題になっている。
 
 観光庁が「外国人1万人無料招待」を企画したが、2012年度予算で却下された。観光庁は「1万人が国内に滞在する経済効果は13.1億円、経済波及効果は31億円」としたが、財務省は「本当に外国人客が増えるのか疑問」「予算のばらまきになる」として予算を認めなかった。アメリカのウォールストリートジャーナル日本語版は「よだれが出そうな提案に想像をふくらませた人の多さ、そして、10月の発表以降ジャパン・リアル・タイムに対して毎週追加情報を求める声が寄せられていることから察するに、かなりの数の潜在観光客が落胆した」と伝えた。
 
 外国人観光客が来なければ成り立たない通訳案内士という仕事。この仕事にかかわらず、観光業に打撃となっている現状を打破しなければ、国内の人的産業が萎縮することになりかねない。日本が世界から注目を浴びているのは文化の側面だけではない。日本人そのものが賞賛された311の事故後のことを忘れたくない。人という財産の持ち腐れとなってしまってはいけない。
 
 
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★ 通訳案内士、東電に賠償求め仲介申し立て 事故で収入源(朝日新聞・11/12/05
★ 外国人1万人無料招待、幻に 官公庁企画、予算通らず(朝日新聞・12/1/6)
★ 外国人1万人の無料招待、予算認められず(WSJ日本語版・11/12/28)
★ 日本政府観光局 通訳案内士試験概要
 
 

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