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父と1人のホームレス

 2月14日バレンタインデーは東京でも大粒の雪が舞った。大通りは積もらずに濡れていた路面も一歩裏通りに入るとわずかながらの積雪を見ることができた。
 
 その夜、父は近くに住む妹の家に行っていた。そしてさんざん飲んだあと、酔っぱらいながら帰る途中に、座っていた一人の男性ホームレスと出会った。「いつもなら通り過ぎる」ところであったが、その時は話しかけた。
 
 「ちょっとあんた、震えちゃってだいじょうぶかい?」
 ホームレスは父を見上げると、
 「少し寒くて・・」
 父は彼にご飯を買ってくるという約束をして近くのコンビニまで行った。
 大粒の雪がまだ降り続いている都内の夜。
 
 「ほら、あんた。これ食べて元気だしなよ」
というと、おにぎり2個とカレーライス、お茶と酒を差し出した。さらにタバコを吸うのかと尋ねて持っていたタバコと100円ライターを男性に渡した。父は男性に質問する。
 
 「あんたどこの生まれなんだい?」
 「四国なんです」
 「じゃあ家族がいるんだろ。連絡すればいいのに」
 「兄がいますが、私が電話しても出てくれないんです。旦那さんは何をされているんですか?」
 「俺はヤクザもんよ(笑)」(注:ヤクザではありません)
 「まさか、そんな(笑)」
 「本当は毛布くらい持ってきてあげたいところだけどそれはできないからがんばってな」
 「はい、そんなことしていただかなくてもこれで十分です。ありがとうございました」
 
 この一連の話を聞いた妹は怒り出した。妹が怒るのも無理はない。父は泥酔状態で帰ると転んだりひっくり返ったりしてけがをすることが多かったのだ。だから降雪の日にわざわざホームレスなど相手にせずにさっさと家に帰れ、というわけである。
 
 父はしゃがんでホームレス男性と話していたとき、同じ昭和17年生まれだということを知ったという。それでおにぎりやらカレーライスを買いに行ったらしい。父は「人助けじゃないけれども、何となくな」と言っていた。
 
 
 雪のバレンタインデーとなった今年とは違って、おととしのバレンタインデーは暖かかった。いや、暑かったといった方が良いであろう。東京都心で23.9度、静岡市では26.8度の夏日を記録した。横浜の屋外スケートリンクは営業を中止したほどである。
 
 雪のバレンタインデーとなった今年の東京だったが、ホームレス男性にしてみればそんな日であったことも知らなかったかもしれない。ひたすら寒く、大粒の雪が降っているところに一人の酔っぱらい男が話しかけてきた。しかも食べ物を渡された。
 
 男性がなぜホームレスになったかは分からない。ただ東京でホームレスをしていれば、雨風を防ぐ場所はある、食べ物は残り物を見つけられる、そんなところなのだろう。そしていつか再起できることを期待しているのかもしれない。
 
 父がなぜ酔っぱらいながらマザーテレサのような真似をしたのかは分からない。ただ東京に住んでいれば、雨風を防ぐ家はある、食べ物は余るくらい食べることができる。そんな両極にある2人がたまたま同じ歳であったことで共感するものがあったのかもしれない。
 
 雪が降ると犯罪や事故が減るというニュース記事を読んだ。加えることができるならば、少しだけ優しい人が増える事を祈って。
 
 豪雪地帯の皆さま、除雪作業でけがなどされませんよう。
 
 
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