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相棒Season17#4「バクハン」の感想

 
 今回の「相棒」は特命係と組織犯罪対策部内の2つの課が対立することになる。組織犯罪対策4課長の源馬(中野英雄)の情報提供者との黒い関係に杉下右京(水谷豊)が異議を唱えた。そんなやり方はおかしい、必要悪など存在しない、と。
 
 常に法秩序に則って正義を貫こうとする杉下右京と、「俺たちがどんなやつを相手にしているのか分かってるのか」と激怒する角田課長。人はそれぞれの立場で物を言わなくてはならないのでそれまで培ってきた信頼関係が衝突することがある。これは辛いことである。
 
 本編後半には副総監(杉本哲太)が「警察官は誰もがそれぞれの立場で正義を貫く。警察官はその覚悟を持っている」という。だから辛いのである。杉下右京は正しい。そして源馬4課長も角田5課長も正しいのである。
 
 この話の最後のほうに出てくる「シャブ山シャブ子」が話題になった。薬物依存の患者に対する偏見を助長するという抗議が医療関係者や支援団体などからあった。本編で出てくる危険な人間の描写は患者にはありえないという主張である。人を襲ったりするのは薬物ではなく精神疾患がもたらすものである、そういう事実である。
 
 今、薬物問題は過度期に置かれている。かつては薬物犯罪に手を染めた者に対して我々は白い目で見るだけであった。あとは警察や刑務所に任せておけばよいだけであった。しかし今ではそれは薬物依存という病気であること、患者を見捨てずにいる医療関係者や支援団体が存在することがかつて薬物犯罪が置かれていた状況と異なるのである。
 
 ではなぜ「シャブ山」が視聴者に受け入れられる部分があったのか。理由は、前述したように、視聴者それぞれに正義感があるからである。一般の人というのは薬物は犯罪であり「ダメ!ゼッタイ!」という感覚で考えている。薬物依存よりも以前に、犯罪に手を染めたことに対する罪への憎しみがあるからだ。つまり、一般の視聴者は正しい。そして医療関係者も支援団体も正しいのである。
  
 ところで「必要悪」というのは存在するのであろうか。杉下右京の言うように「必要な悪など存在しないと思いますがねぇ」ということなのか。必要悪というのは必要とされる悪のことであり、存在しなくてはならないものだと考える。なぜならば、歪んだ悪の存在を忘れてしまっては、整然とした正義の存在もまた忘れてしまうからである。必要であろうとなかろうと、悪と対峙する気持ちを忘れてはならない。 
 
 薬物依存の治療をされている方たちが社会復帰できることを心よりお祈りいたします。
 
 
★ 相棒(テレビ朝日)

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