喫煙者は居酒屋に行くと、「とりあえずビール」という前に、とりあえずタバコに火をつける。起きたら一服、そして食前、食後、出かける前、最寄り駅の近くで、職場に着いたら、などなど節目節目で吸いたくなるのが喫煙者である。いずれの一服もおいしいのだ。
しかし昨今の喫煙者を取り巻く環境は厳しい。路上を禁煙にしている自治体は多いうえ、屋内施設でも飲食店でも分煙・禁煙がなされている。タクシーでも吸えないとは。喫煙者が見知らぬ土地に電車などで行った場合、最初に探すのが喫煙場所である。ファーストフードでも喫茶店でも何でも構わない。これを探すのだけでも面倒だが、意地でも探すのが喫煙者の心理。
そんな私も同様のことをしてきた1人だが、このたび「アレン・カー・ジャパン」の禁煙セラピーを体験。長い喫煙生活に終止符を打つこととなった。これまでもこっそり禁煙に挑戦したことはあるが、我慢しても我慢しても結局たばこ屋さんに走ってしまうことの連続。禁煙などはできないと諦めていた。
1日1箱(20本)のセブンスターを吸っていた。喫煙者のかたならセブンスターがどれだけきつい(うまい)タバコがご存じかと思う。そんな私が禁煙ではなく「卒煙」できた。「そつえん」なんていう言葉、幼稚園を卒業したとき以来だ。きっかけは昨年夏の毎日新聞で、記者さんがこのセラピーの”卒煙体験”を記事にしていたことだった。記者さんが体験して書いているのだからウソはない。
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都内のマンション一室に行くと、セラピストの女性に名前を確認される。「まだ時間があるので、喫煙コーナーで吸ってきていいですよ」というと、私を含めた男性3人が直行。顔を見合わせて、ガハハと笑う。「本当にやめられるんですかね」「半信半疑ですよね」。そんな会話がなされ、男性3人、女性4人の受講者がそろったところでセッション(講義)が始まる。
喫煙者は「体に悪いからやめなさい」とか「他人に迷惑がかかるんだから!」などと言われることが一番辛いことである。なぜならそんなことは百も承知で吸っているからである。セッションでは、そうしたような頭ごなしに喫煙行為を批判するようなことはしない。ちなみにセラピストの女性も元喫煙者であり、1日30本吸っていたという人である。そのかたもこのセッションを受けて「卒煙」し、今は禁煙セラピストとして活動している。
セッションは50分ごとに1度中断して「タバコ休憩」がある。みんな迷わず喫煙コーナーに直行する。そしてお茶やコーヒーを飲んでリラックス。タバコ休憩がわざわざあるのが嬉しい。
全部で5時間ほどのセッションが終わると、「最後の一本の儀式」というのがある。自分の持ってきたタバコの最後一本を吸うのである。これでタバコとはお別れのはずである。しかし個人的にはこの儀式よりも、受講者全員で「タバコの墓」に持ってきているタバコやライターを投げ捨てる儀式のほうが印象的だった。
そして最後に催眠療法がある。よく誤解があるわけだが、テレビの催眠術ショーなどの影響もあって、「体が操られるのでは」、「気絶するのでは」などという心配があるかもしれないが、それは100%ないことを断言する。あれはテレビ用の催眠術。
催眠療法というのは、深層心理に訴えかける方法論で、例えば眠れない子供に本を読んであげたら寝てしまった、ということがあるが、その程度のことである。この場合、子供は母親に本を読んでもらって本の内容を理解することが目的ではない。本を読んでもらうことで眠ろうと自分の中で無意識に考えているのである。
つまりここでの催眠療法も同じである。半信半疑な受講者も、自分の潜在意識にある「タバコを止めたい」という部分に話しかけられるので、セラピストの言葉を自然に受け入れるのである。目をつぶって集中してセラピストの言葉に耳を傾けていればいいだけで、ちゃんと自分の意識はあるし、危険な目にあったりすることはないので、不安な方はご安心を。
本当にタバコをやめられるのだろうか、そんな疑問があるわけだが、少なくともこの会場まで足をわざわざ運んだ時点で7割ほどは卒煙に向けての準備が整っている。そしてセラピストさんが残りの3割の部分を手助けしてくれるのだ。
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こうして長丁場となった禁煙セラピーで、無事「卒煙」できた。不思議でならないのだが、「今ここで吸えばうまいだろうな」ということは分かっていても、わざわざタバコを買いに行こうとまでは思わない。タバコの自販機の前も通ったが”食指”が動かなかったし、ファミレスの喫煙席の隣にある禁煙席に1時間以上座っていたがやっぱり自販機まで走ることはなかった。たったの半日でタバコを止められるとは思わなかった。
年間10万円近く払っていたタバコ代も不要となり、ライター代も不要となる。さらにタバコを吸いたいがために入っていた飲食店代もかからない。浮いたお金で何をしようか。そして増えるのはお金だけではなく時間も同じ。1本吸うのに5分かかるとして、5分×20本=1時間40分を1日に使ってきた。実際は何かをしながら吸うときもあるので、少なくとも1日1時間くらいはタバコの時間としてきたということになる。空いた時間で何をしようか。
卒煙した私だが、周りにいる喫煙者の友人知人に卒煙を勧める気もないし、今までさんざん吸ってきたのだから喫煙者を攻撃する気も毛頭無い。みなさん私の前では遠慮せず吸ってください。平気ですから。「Nonoはタバコを吸わなければいいやつなのに」と何度か言われたことがある。友人らにタバコを止めたと言ったらきっと驚くに違いない。
これから受けようと思っているかた、不運にも失敗してしまったかたにアドバイスを1つ。セラピストさんの言う内容を十分理解してください。決して難しいことを言われるわけではないので、納得しながら講義に臨んでください。
一緒にセッションに参加したかた、空手の男性、ピッチャーの男性、ヘビースモーカーだった旦那さんに勧められてきた女性などなど。皆さんちゃんと止められたかな。みんなでタバコを捨てた儀式、忘れないでいましょう。そしてセラピストさん、本当にありがとうございました。
☆ 大事なのは今までのあなたではなく、これからのあなた。(エラ・フィッツジェラルド)
★ 禁煙セラピーのアレン・カー・ジャパン