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夕方のカラス

 詩人の中村雨紅は「夕焼け小焼け」の作詞をし、その中で「カラスもいっしょにかえりましょう」と記した。この詩が示すように、かつてカラスといえば夕方に見かける鳥であった。
 
 都内で幼少時代を過ごした私は、カラスの鳴き声が帰宅の合図でもあった。そして私が住んでいたところは帰宅時間になると防災無線から「夕焼け小焼け」が流れて、同じ時間帯には豆腐屋さんがあのラッパを吹きながら自転車をこいでいた。カラスが舞う空の色といい、カラスの鳴き声やラッパの音といい、きれいな昭和の思い出だった。
 
 今年の夏に近所で豆腐屋さんのラッパを久しぶりに聞いた。といっても、昔の自転車に箱を積んだものではなく、自転車でリアカーを引っ張っているのだ。その荷台には青いプラスティック製の箱が何個か積まれていた。ラッパと同時にセールストークもついている。それによれば、豆腐単体のみならず、豆腐ハンバーグや練り物なども売っているようである。
 
 ラッパは久しぶりに聞けたが、カラスの鳴き声を夕方に聞くことはほとんどなくなった。それどころか近年は、早朝にゴミを荒らす悪いイメージが定着してしまった。初夏の繁殖期になると人に向かって飛んできて「威嚇」するのも脅威である。
 
 私はゴミ集積所でカラスと”仁義なき戦い”を経験しただけにカラスは憎たらしい。何が憎たらしいかというと、頭がいいからである。壊れた黒色の折りたたみ傘をぶら下げておく。その日は”仲間がやられた”と警戒して近寄らないが、次の日にはそれがニセモノだとばれる。電線に無数に列をなしているカラスに届かないのがもどかしかった。
 
 東京都は数年前にカラスの駆除を徹底的に行ったようだが、恐らくその効果が出ているのではないかと思う。少し前の夏に比べると、カラスは減っているように思える。
 
 カラスはスズメなどと同様に野鳥であるため、一般的には飼育することができないが、堺市内の男性宅に住み着いたカラスが近所で人気者になっているという。万代嘉美さん(65)の自宅にいるカラスは「ポッポ」と近所の子供たちに名付けられた。ポッポは人なつっこく、自ら人間に近づいてくるのだという。
 
 ポッポは5月に堺市内の神社で見つかった。巣から落ちていたようで、右足を引きずっていたようだが、万代さんの看病ですっかり回復し、ドッグフードに魚や肉に加え、カレーライスまで食べるらしい。「憎たらしい鳥だと思っていましたが、飼ってみると、とってもかわいい」と万代さんは話す。
 
 そして間もなくポッポを野性に戻すのだという。万代さんを親のようにしたっていたポッポは頭の良さを通り越しているに違いない。人と接することを楽しみとし、万代さんもポッポを可愛がってきた。動物がいとおしいのは、言葉が直接通じないのに気持ちが通じることがあるからだ。
 野生に返すとき、ポッポがピョンピョンピョンと戻ってきたら、万代さん、お辛いでしょうね。
 
 
☆ 蝶はモグラではない。でも、そのことを残念がる蝶はいないだろう(アインシュタイン)
 
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★ 人なつこいカラスが人気 大阪の男性が親代わり「飼ってみると、とてもかわいい」(産経新聞・08/9/10)
 
 

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