見える歌、聞こえる踊り
ピンクレディーの人気が凄かったことは当時を知る人であればよく分かるところである。二人のルックスもさることながら、歌そのものの魅力と学校で必ず真似する子供がいた振り付けは社会現象となった。
Wikipediaによれば、「当時は忙しすぎてTBS系の歌番組『ザ・ベストテン』の番組出演は覚えているが、司会の久米宏さんと黒柳徹子さんに会ったことを覚えていない」というのだからすごい。さらにはプロマイドの売上も順調であったが、「忙しすぎてちゃんとしたスタジオで撮影できなかったので移動中の局の階段などで撮った」という。
インターネットも携帯電話もなかった時代。さらにいえば固定電話があっても、基本的に留守番電話もなかった時代である。忙殺された中でのスケジュール調整は簡単なものではなかったに違いない。自分たちがどう思われているか知る由もなかったはずだ。
そんなピンクレディーが「レコード大賞」で昨年に続いて歌っていた。ミーちゃんもケーちゃんも昔のままである。生放送も昔のまま、生演奏も当然、生歌であるのもいつもどおりだ。
一曲目の「UFO」での振り付けで足を横に大きく投げ出す部分があるが、今でもあんなに上がるのかと驚いた。「SOS」と「渚のシンドバッド」では衣装替えをして後方に移動、スタンドマイクで歌を披露した。その後の「サウスポー」ではまた前に出てワイヤレスマイクで臨んだ。
DA PUMPの「U.S.A.」を初めて聴いた。ISSAが「自分が想像していた以上にいろんなかたに聴いてもらえて感謝の一年になりました」と笑顔で語る。続いてマイクを向けられたケンゾウは、「USAという楽曲で僕たち、、、本当に夢みたいな時間を過ごさせてもらっています」と感涙するにこちらもつられてしまった。きっと、辛いこともたくさん経験されたのだろう。
この「U.S.A.」という曲はイタリア人歌手のカバーなのだという。電子音冴えるユーロビート楽曲が懐かしいが、これをオーケストラ演奏アレンジで歌って踊ってみせた彼らがすごい。タキシードを着てかっこいい。
カバー曲のヒットというと、「Y.M.C.A.」はビレッジピープルが1978年に出した曲で、これを「ヤングマン(Y.M.C.A.)」として西城秀樹がカバーして大ヒットとなった。
この「YMCA」の振り付けを、DA PUMPがレコ大で披露したのである。自分たちの「U.S.A.」の楽曲最後のほうでISSAが、そしてメンバー全員が頭の上で「Y」「M」「C」「A」をやってみせた。「USA」も「ヤングマン」も同じカバー曲である。今年亡くなった西城秀樹への追悼のメッセージであり、当時のレコ大で「カバー曲であるYMCAは大賞を取れない」という話を踏まえて、カバー曲を歌ったDA PUMPのメンバーが皮肉ったとも考えられている。DA PUMPは大賞を逃している。
ダサかっこいいという噂の「USA」であったが、とてもかっこいいものであった。サビの部分で片足で移動するが、練習する場所と実際のステージでは滑り具合が異なる。どんな舞台に立っても歌いながら踊れるのはとても素晴らしかった。
上を見ればピンクレディのような巨匠が歌って踊り、振り返ればDA PUMPのような中年域に突入したメンバーが踊っている。時代を飛び跳ねて愛される曲を引っさげてステージに登場する彼ら。彼らにしてみれば、ただやりこなしている日常かもしれないが、それがどれだけ一般の人びとの胸を熱くさせているのかということを、忙しい彼らは知らない。
★ 【日本レコード大賞】DA PUMPが大賞を逃し不満の声も YMCAで西城秀樹さん偲び話題(ニフティニュース・2018.12.31)