イギリス警察が銃を抜くときと抜かないとき イギリス暴動
ロンドン市内のみならず、イギリス各地に飛び火した暴動はようやく沈静化の兆しを見せている。暴動の発端は黒人男性が警察官に射殺されたことによるものであるが、その事件の詳細がはっきりしない。暴動そのものは警察に抗議するための行動というよりも、単なる略奪や破壊行為で終始しており、長期にわたる失業率の高さや福祉サービス削減の影響で「火がついた」といわれている。
事の発端であった「黒人男性射殺」の詳細が気になる。というのも、イギリスの警察官は基本的に銃を所持しない。携帯している武器は唯一「警棒」だけである。銃を所持することによって相手を刺激しないためである。
かつて久米宏さんのニュース番組「ニュースステーション」ではイギリス警察を紹介。久米さんは「イギリスの警察官は銃を持たなくても治安を保てる。日本も真似するべきだ」という主旨の発言をしたことがある。これに呼応するかのごとく、ある写真週刊誌は、「日本では銃を持っている警察官に鉄パイプなどで襲いかかる公務執行妨害事件が頻発している。久米さん、これでも銃は要らないといいますか?」と書いていた。
確かにその当時、日本国内では公務執行妨害事件が多発していた。その後も現在に至るまで、警察官に向かって車を発進させるなどの凶暴な手段に出る被疑者が減らない。抑止力でもあり、市民や警察官自らの身を守るためにも銃の携帯は欠かせない。
それでもイギリス警察は銃を所持しない。銃を所持しないといっても、事件の容疑者などが凶悪犯の場合は特別に狙撃部隊が組織されるイギリス警察である。今回射殺された黒人男性が一般市民ではなく、事件の容疑者だという報道もされている。射殺したのは相応の理由があったからなのだろうか。
各地で起きた暴動では、警察官が近くにいるにもかかわらず、その横で略奪行為が行われていた。警察官の存在がその意味を失っていたのだ。
多くの国で警察官が銃の携帯が許されているにもかかわらず、イギリス警察は警官が銃を持たないことで確かに一定の治安が確保されていたのかもしれない。規範意識という空気が街を支配している時は安全だが、暴動で怖いのはその空気が無くなってしまった時である。武装しない警察官は暴動を前に無力になってしまう。
多くの建物や車が破壊されて放火された。その上に強盗事件も発生し、警察の対応は完全に後手に回った。不穏な空気になる前に封じ込めることができなかったイギリス警察は反省をしなくてはならない。
暴れるかもしれない群衆を鎮めた例を見たことがある。かつて東京の国立競技場でサッカーの試合が行われた。日本が勝ったのだが、会場の出口付近にいた警視庁の機動隊員がマイクを通じ、「日本が勝ちました。おめでとうございます。バンザイ、バンザイ、バンザイ!」と、サポーターと一緒に万歳三唱までしたのである。サポーターは試合に勝っても負けても興奮して器物損壊行為に出ることもある。警察としては早く集団を立ち去らせたいのが心理だ。機動隊員は最後に「それではお気をつけてお帰り下さい」と締めくくった。
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