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「男はつらいよ お帰り 寅さん」 レビュー

 冒頭は、小説家となった満男(吉岡秀隆)が夢を見て目覚めるところから始まる。おなじみのオープニングの歌は桑田佳祐が歌う。
 
 妻の七回忌が実家である柴又で行われる。母のさくら(倍賞千恵子)、父の博(前田吟)ら近所の人たちも集まる。そんなおり、昔の恋人である泉(後藤久美子)が偶然現れることになる。
 
 満男やその家族は折に触れて寅次郎(渥美清)を思い出すのである。
 
 
満男 「おじさん、人間はなんのために生きてるのかな」
 
寅 「お前、難しいこと聞くなぁ。うーん、なんていうかな。生まれてきてよかったなってことがなんべんかあるじゃない。そのために人間生きてんじゃないのか?」
 
 
 生きるとはなんぞや、という問いがあるが、生きていくことは生まれてきてよかったと感じるために生きることなのだろう。生きることはそのために喜び、悲しみ、怒り、を探すために前に進むこと。ただ存在することではなく、止まらないこと。
 
 若さというのは経験しておくべきである。その思い出を語るにはあまりに微笑ましく、自分のことですら羨ましくなるからだ。
 
 そしていつしか、誰かが各々の記憶に振り向いたとき、寅さんみたいな存在を思い出せるような。
 
 「お帰り、寅さん」という小説が書かれたとしたら、終わりなき恋愛が何編も続きそうである。終わりそうで終わらない、寅さんの希望ではなく読み手の希望が続きそうである。
 
 

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