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ペコの脱走

 むかし車で宮城県・松島に行ったときのこと。ペット宿泊可の旅館で我が家のペコ(ミニチュアシュナウザー)がベランダから脱走したことがあった。
 
 夏でもあり、窓を開けて寝ていた我が家。遠くの方で「わんわん!」と犬の鳴き声が聞こえていた。薄暗い部屋で、ふと近くにいるイヌに声をかける。「ナナなの?」どうやらしっぽを振っており、ナナである。あれ、ペコがいない。
 
 部屋の電気を付けて家族をたたき起こす。「外で鳴いているのはペコじゃないの?」鳴き声を頼りに、非常階段を降りて下まで行くと、ペコがちょこんと座っていた。どうやらベランダの下の隙間から隣の部屋を一気に通過し、非常階段で下まで降りたようだ。しかし降りたのはいいが、周囲は真っ暗なところで進むことも戻ることもできずに鳴いていた。
 
 ペコは腕白だけれども甘えん坊でもあった。寝ているところをちょっかい出すと、うーっとうなるが、喉を触ってあげると気持ちよさそうな顔をする。どこからともなく現れて、体をぴったりくっつけてため息をついて横になる。
 
 先月、母親から「ペコが危ない」と連絡があった。
 
 今月上旬に早速ペコに会いに行く。するとお腹をぷくぷく膨らませてしぼませて、とても苦しそうだった。とりあえず入院させることとなった。
 
 1日経過してから引き取りにいった。病院の外で散歩させると、用を足し、いつもの元気なペコに戻っていたようだった。
 
 帰京し、17日の午前中に母から泣きながら電話があった。
 
 
 ペコは耳の中を、耳の外側からマッサージしてやると、とても気持ちよさそうに頭を寄せてくる。その時の甘えた表情は覚えている。ソファーで横になっていたら、珍しく私の横にのってきたことも覚えている。小さかったころ、階段を降りることがうまくできずに、何とも笑ってしまう体勢で降りていたことも覚えている。じいじのことが大好きだった事も覚えている。
 
 人間でいうと64歳だと言いますが、僕たち家族にとっては、楽しい時間を提供してくれたペコの12年間でした。
 ペコちゃん、掃除機が怖くて、小さな隙間に立って入っていったのも覚えているよ。
 
 
 peko_back
(平成26年5月5日に撮影)
 
 
  
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