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「相棒」にみるドラマの表現

 ネットで検索すれば「放送中止」になった番組がたくさん出てくる。興味のあるかたは検索をして戴きたい。
 
 ドラマとはいえ、作り手のモラルが問われることがある。刑事ドラマの「相棒」のシリーズ3の第7話「夢を喰う女」では、「相棒」の二人(杉下・亀山)が図書館司書から利用者の貸し出し履歴情報を見せてもらうシーンがある。これに日本図書館協会から抗議があった。個人情報を令状なしに刑事に見せることはない、ということだ。このためこの話は欠番となり、再放送もされずDVDにも収録されていないという。(参考:Wikipedia「相棒」)
 
 次に、抗議があったわけではないが、犯罪になりそうな事を咎めるシーンは作り手の慎重さを感じる。以下はすべて「相棒」の話である。
 
・ 制服警察官が道ばたの花をちぎって、人が倒れていた状況を再現したが、花をちぎる行為に対して杉下が、「おやおや、いけませんねぇ」という。
 
・ 聞き込みをしていた杉下に、町内の人が「刑事さん、こっちですよ!」と自転車の後ろに乗せようとする。杉下は後ろに乗ろうとするが、「ああ、二人乗りはいけません」と言って歩き出す。
 
・ 小野田公顕(岸部一徳)の孫の男児が「おしっこしたい」というので公園の雑木林へ連れて行く。そこで立ち小便をさせる際、「じいじ、(警視監という)立場上まずんだよな。でも、今回は緊急避難ということで」と独り言を言う。
 
・ 賭将棋士に事情を聞いていた相棒の二人。その男が対戦相手から勝って得た金を取って立ち去る。賭博の現行犯ということになり、亀山が「ちょっと、おいおい」と言うが、杉下が亀山を抑える。男に対しては別の事件の聴取で来ていたので、それ以外の追求はしたくないためである。
 
 テレビというのは基本的にスイッチを入れれば無料で見ることのできるものだ。それゆえに、その影響力は大きい。ドラマが基本的にフィクションであるとはいえ、作り手が内容に現実性の付与にこだわるように、視聴者もその話の中に没頭することになる。つまり、感情移入する。それゆえに、作り手側には見る側に対しての背信行為がないように留意すべきである。
 
 「相棒」のある話の最後で犯人が杉下・亀山に対して犯行を告白するシーンがある。通常であればそこで任意同行ということになるが、亀山が「右京さん、自首にしませんか?自首でいいでしょ?」とお願いする。杉下は言う。「いつも君がそばにいてくれて助かります。僕には、君のようなしなやかさが欠けています」。
 
 実際の警察が逃走するかもしれない犯人を目前にし、自首をさせるということは無いに違いない。しかしきっと、この場面では制作者側が視聴者の感情移入に助け船を出し、感情を共有することにしたことだろう。「半沢直樹」がそうであったように、真摯に制作すれば番組というのは素直に受け入れられる余地がたくさん有る。作り手にも受け手にも「しなやかさ」が必要だ。
 
 

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