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八ツ場ダム中止で失うもの、お金ともう1つ

 藤井裕久財務相は大臣就任会見時に「マニフェスト(政権公約)を守ることが一番大切」と述べていた。単純に納得したが、その単純な公約がこれまで守られず、国民が裏切られたとの思いがあるから政権は交代したのだろう。聞こえのよい公約が並ぶが、その一つが八ッ場(やんば)ダム建設中止問題である。
 
 前原国土交通相は23日、八ッ場ダム建設中止を表明してから初めて群馬県長野原町のダム建設予定地を視察した。現地には大沢正明・群馬県知事、高山欣也・長野原町長らが出向いた。前原国交相は、首長らを前に「政策の変更で、皆さんにご迷惑をかけ、素直にお詫び申し上げます」と謝罪した。住民への補償や生活再建などを実施する新法制定の考えを示したが、「中止を白紙にするつもりはない」とし、就任以来の「ダム建設中止」の姿勢を変えることはなかった。
 
 地元住民との意見交換会も予定されていたが、「建設中止ありきの話し合いには応じない」。旅館経営者などは「連休の書き入れ時に手が離せない」として誰も参加しなかった。
 
 もともと、長野原町の人たちはダム建設反対派が多数を占めていた。建設予定地では昭和27年にダム計画が持ち上がり、名勝地である吾妻渓谷の一部や、川原湯温泉が水没することから反対運動が始まったのだ。賛成派と反対派は小さな町を二分した。親戚同士がいがみ合い、隣近所同士が敵対し、町を出て行く人もいたのである。その後の昭和62年、ダム建設反対運動に疲れた住民は、国の現地調査を受け入れることにした。
 
 ダムの総事業費は4600億円。うち3210億円がすでに使われた。建設を中止すれば、残されたダム本体工事関連費620億円については削減できる。当然ダム維持費用も不要になる。
 
 しかし建設を中止した場合、水の供給を目的に事業費を拠出した下流の1都5県に対して費用を返還しなければならなくなる。石原都知事も「当然、返還請求しますよ」と公言している。その総額は1460億円。加えて地元住民に対する今年度以降の生活再建関連費770億円も必要となる。合計2230億円。
 
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 国連での演説で鳩山首相は「90年比で25%のCO2を削減する」と演説すると、会場からは拍手が起こった。サルコジ仏大統領、タンザニア環境相、パン・ギムン国連事務総長が鳩山首相の演説を賞賛した。
 
 ダムにしろ、環境問題にしろ、高速道路無料化にしろ、あまりに聞こえの良い文言が並ぶ上でどうも納得のいかないことがある。具体的な代替原資はどこから捻出するかということだ。無駄を減らせば浮くお金があるとのことだが、どうも安易に納得が出来ない。
 
 例えるならば、平置きされている「民主党マニフェスト」という名の本の帯に景気のいい文言があったがうえに、「話題の新刊」だったからつい手にしてしまった、そういうことにはならないだろうか。
 
 八ッ場ダム中止と建設のどちらが無駄になるのか。いずれにせよ、お金以外でもう1つ、すでに無駄になっているのが「時間」である。長野原町民は57年間もこの問題と対峙してきた。旅館を経営する人は古くなった建物を改築したいが、ダムの有無により移転するのかしないのかを決めなくてはならない。それが未だに決められないでいる。「何でいまさら」「国の都合で」という声が聞こえてくる。造る、造らないで翻弄されてきた町民のかたがたの時間は1秒1秒、今も時を刻んでいる。建設予定地には無駄になっている時間が蓄積されている気がする。
 
 政府が大切にすべきは国民であり、国を動かすのに必要な税金をいかに効率よく使うかにかかっている。そして、時間や空間・環境といった無形の財産にも目を向けるのが政治がすべき”イニシアチブ”である。民主党の皆さん、自己満足のためのマニフェストなら今すぐやめてください。
 
 
☆ この世の大きな脅威は、何でも変えたがる人々…あるいは何も変えようとしない人々である。(Nancy Astor)
 
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★ 【八ッ場ダム】前原国交相が視察 地元の中止白紙撤回に「戻すつもりはない」(産経新聞・09/9/23)★ 鳩山首相が国連で「温室効果ガス25%削減」を表明(産経新聞・09/9/22)
 
 

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