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裁判員裁判の未来 その時のための心構えとは

 東京地裁で全国に先駆けて行われた裁判員裁判で、殺人罪に問われた男性被告人(72)に懲役15年が言い渡された。裁判員は職業も年齢もさまざまであり、判決後の記者会見ではさまざまな思いを述べた。
 
 ピアノ教師の女性(51)は「色々と話し合う中で、気持ちが揺れた」とし、男性会社員(43)は「多くの情報の中からどれが大切かを決め、集中してやらねばならず、仕事と違う疲れ方をした。『自分が』という気持ちが強かったが、みんなで最終の結論に持って行くんだ、と考えられるようになってからは気が楽になった」と語った。
 
 遺体の写真について、女性契約社員(38)は「見ておくべきだと思って見させてもらった」と語り、女性会社員(50)は「私は大丈夫だという時点まで見て、目を伏せた」とした。
 
 アルバイト男性(61)は判決前夜「被告には不幸な面もあり、やることがうまくいかなかった不器用な人。私も還暦を迎え、被害者や遺族のことも考えて、涙が出た」とコメントした。
 
 東京地検の谷川恒太次席検事と青沼隆之特別公判部長はそれぞれ、「準備を生かし、工夫に努めた立証活動ができた」とし、「主張の核心部分は認定された」と判決を評価。「裁判員にも『分かりやすかった』と評価してもらえた」と述べた。
 
 一方、被告人の弁護人を務めた、伊達俊二弁護士は「量刑に不満はない」とした上で、「判決では『被害者に犯行を誘発する行為があった』という背景事情が全く認められず残念。裁判員に『反省の態度が見られない』と判断されたのかもしれない」と述べた。
 
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 裁判員制度について反対する向きもある。素人が他人の人生に関わって良いものかと考えることもある。しかしこれまで我々は、そうした重責を国に一任してきた。その結果、重大犯罪の量刑に不満があれば「おかしい」と言ってきた部分もある。
 
 裁判員裁判が有益だと思うことは、民意が反映される裁判が期待できることにある。プロである職業裁判官にない素朴な視点で被告と向き合うこともあるだろう。今まで無関心だった犯罪や、その後の裁判に携わるというのは、国民が安全な日常生活を送る上での意識の高まりが期待できる。
 
 しかし裁判員の1人が語ったように、「証人が多く出てきたり、死刑が選択肢の中に出てくるような公判の場合、4日という短期間では足りないのではないか」という不安もある。今後は人が人を裁くことの難しさをより多く感じる公判廷も開かれることになるだろう。
 
 大切なことは何か。目の前にいる被告人と無罪推定の下に対峙し、殺人事件であれば被害者の声なき声に耳を傾けることである。
 
 そして、単純に犯罪だと割り切れないような案件も出てくることになる。
 
 裁判員裁判ではないが、4日に福岡地裁久留米支部で行われた裁判では、承諾殺人罪に問われたのは91歳の女性被告人だった。
 
 検察の起訴状によると、被告は08年7月30日、福岡県内の自宅で次女(61)に承諾を得て睡眠薬を飲ませ、ビニールひもで首を絞めて窒息死させた。自分も睡眠薬を飲み、ビニールをかぶったが一命を取り留めた。
 
 次女は夫を亡くし、87年から精神科に入退院を繰り返していた。07年の正月には「病院でいじめに遭ってる」と母親である被告人に訴えた。「自分が娘を治してみせる」。周りが反対をしたが08年3月に被告人は娘を自宅に引き取った。
 
 事件はその5ヶ月後に発生。「一緒に参ろうか」「ばあちゃんそうしよう」。遺書に連名で署名すると、ベッドの横に並び、手には数珠を握らせた。
 
 出廷した入院中の被告人は、押し車で体を支え入廷するとハンカチで涙をぬぐい始めた。
 「1人だけ残って苦しゅうございます。娘も苦しかったろ。すまんやった」。孫にあたる次女の息子には「たった1人のお母さんを殺してすまんかった」。息子は「祖母は本当に苦しんでいた。責めるつもりはない。何で気付いてあげられなかったのか」。法廷には被告人と遺族のすすり泣きが響いた。
 
 検察は懲役4年を求刑し、判決は10月6日に言い渡される。
 
 日本の戦後復興に身を捧げた多くのお年寄りがいる。その中の1人である91歳の被告人。裁判員はこうした被告人にも正面を見据えて耳を傾け、質問をする必要があるのだ。裁判員となるかもしれない自分たちに課せられた責務は、誰が裁くかでもなければ誰を裁くかでもなく、裁くべき事は何かを考えることにある。
 
 
 ☆ 我々の憎悪があまりに激しくなると、憎んでいる相手よりも下劣になる。(ラ・ロシュコー)
 
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★ 「裁判変わる瞬間みたい」傍聴求め2300人(朝日新聞・09/8/3
★ 「苦しゅうございます」心中承諾殺人 91歳母謝罪 病弱の娘を介護の果てに(西日本新聞・09/8/5)
 

 
 

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