さよなら、タイガーマスク Sayonara, Tiger Mask, Misawa Mitsuharu, RIP.

 試合を観戦していた広島市内の男性(27)は「これまで三沢選手に何度も勇気づけられた。まさかこんなことになるなんて」。福岡県遠賀町に住む会社員の女性(39)は「三沢さんの試合を楽しみにしていたのに。タイガーマスクを見てプロレスファンになった。三沢さんは私の原点。ありがとうといいたい」と大粒の涙を流した。
 
 プロレスが全盛期だった昭和の時代は、ゴールデンタイムにプロレス番組は編成されていた。子供だった私にとってもルールは分かりやすく、強いレスラーが勝つ、屈強そうな相手を倒したあとのスリーカウントに興奮した。覆面レスラーが登場すると、どんな技を見せてくれるのだろうと期待に胸を膨らませた。
 
 1984年(昭和59年)に登場した2代目タイガーマスクは、1代目を受け継いだ。それゆえにプレッシャーがあったかもしれないが、相手が出さないような華麗な技、それは空中戦であったり、まさにトラのごとく相手に忍び寄り強い蹴りを見せてくれて、大いに興奮させてくれた。タイガーマスクが負けるはずがない。
 
 プロレスというのはいかに自身を強く鍛え、相手を攻撃するのかに重点が置かれているものだと思っていた。大きな体の外国人選手の張り手だけでも、一般人が食らったらひとたまりもないような勢いだ。それにも耐えうる肉体を作り上げることに重点が置かれていると思っていた。
 
 もちろん、相手を攻撃するための力を維持していかなくてはいけないが、プロレスというのは受け身のスポーツであるということを初めて知った。プロレスに造詣が深い友人に聞いてみると「バックドロップは投げられる側の両手が自由なので、柔道のような『頭が落ちる前に手をクッションにする』受け身が可能。だから投げる側は結構危険な角度で投げてしまうことが多い。だから何らかの理由で受け身がとれないと極めて危険だ」「投げる側と投げられる側の『あうん』の呼吸がある」とのことだった。
 
 三沢光晴も「相手がかける技をどうやって上手くかけられるか。これって凄い技術がいるんです。いろいろなケースを設定して体を鍛えておかなければなりません。僕らの体の鍛え方は半端じゃないですよ」と産経新聞の記者に話している。
 
 13日夜、185センチ、118キロという大きな体。受け身が上手いレスラーと言われていた大きな男がバックドロップで崩れ落ちた。不自然な「く」の字になり、動かなくなった。異変に気付いたレフリーが試合を止め、選手たちや関係者がリングに駆けつけて周りを取り囲む。心肺停止の可能性が高かったことから、医師やトレーナーが人工呼吸や心臓マッサージを施す。
 
 心臓マッサージが始まると、異常事態に気付いた2300人の観客から「三沢!」の声が乱れ飛ぶ。男性の観客が「三沢!」と叫べば、「三沢さん!」と女性ファンの声も混じる。三沢は全く動かない。関係者なのか観客なのか「AEDを持ってこい!」という怒号も飛ぶ。顔をハンカチで覆い隠す女性ファンの姿もみられる。
 
 通報で約6分後に駆けつけた、広島市消防局の救急隊員がAED(自動体外式除細動器)による蘇生措置を行う。そのまま広島大病院に搬送される。
 
 翌14日の朝の番組で、プロレスの実況の経験もある徳光和夫さん(68)が神妙な面持ちで言っていたのは「彼は受け身の名人でした。その受け身で三沢光晴がこういうことになったのは無念でならない」と、言葉が感情に遮られながら話していた。

 同日夜の「バンキシャ!」では、三沢光晴時代にプロレスの実況をしていた、番組司会者の福澤朗キャスター(45)がコメントした。「昨夜のことなんですが、衝撃的なニュースが飛び込んでまいりました」。その発言の語尾に、力はなかった。「誠実な人柄で、実に多方面から人望の厚い方でした。私も公私にわたり大変にお世話になりました。無念であります」。
 
 13日午後10時10分、三沢光晴さんは搬送先で死亡が確認された。46歳だった。広島中央署によると、頸椎損傷にともなう頸髄離断(けいずい・りだん)が死因であった。

 三沢さん、26年の選手生活、お疲れさまでした。寄らば大樹の陰と慕ってきたのはレスラーの皆さんたちだけではありません。冒頭のファンの人たちのように、強い三沢さんを心の支えにしていたかたも大勢います。三沢さんはこれまでファンのためにたくさんの汗を流してきました。今度はファンが涙を流す番になりました。
 
 悲しいですね。タイガーマスク、さよなら。
  
 
★ プロレスの三沢光晴さん、リングで頭強打し死亡(読売新聞・09/6/14)
★ 三沢光晴さん死す:受け身とれず、体が「く」の字に(毎日新聞・09/6/14)
 
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